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ダニエル様



ダニエル・バートン公爵嫡男様。


彼は攻略対象の一人であり、とても変わり者の私の幼馴染だ。



5歳の時の王家主催のお茶会で初めて会話をしてからずっと、可愛らしい令嬢達でなく私にかまってくる。



「やあ、カレン。久しぶり」



ダニエル様は今日も美しく、薄水色のジャケットとパンツが似合っている。

キラキラが眩しい。

子供にしては落ち着きのある声も、艶がある。


ゲームでは十五歳の姿で、美しさとカッコよさが印象に残っていたけど。

今はまだ、可愛らしさもある。眼福だ~。



私のように太って可愛くない者にも、優しい?




「お越しいただき、嬉しいですわ」


足が太いので、あまり優雅にカーテシーができないが。

それっぽいポーズをとってみる。


正しいカーテシーは、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたままあいさつをする。

正しくやると、私は転がる。




「今日は天気もよろしいので、サンルームでお茶にしましょう」




執事とメイドを引き連れて、ダニエル様とサンルームでお茶にする。



白い木枠に、大きなガラス。

周りをぐるっと大き目の植木鉢が囲み、小さめの温室のようにもみえるサンルームは、私のお気に入りだ。




ソファーに向き合わせに座る。



「ダニエル様、本日のご用件はなんでしょうか?」


聞かなくても、暇だから私をからかいにきたってのはわかっているけどさ。



「カレン、毎回僕の用事は同じだよ。

 カレンに会いに来たに決まっているじゃないか」


「ありがたいお話ですが、物好きだと笑われてしまいますわよ」



私は貴族達のあいだでは、グレイスランドの太った令嬢で知られている。

何なら、太った令嬢だけでも通じる。

たいして運動もせず、おいしい食事をたっぷり食べている他の令嬢達はなんであんなにスマートなのでしょう?



「カレンといるのは楽だからね。

 どこにいても一目でみつけられるし、知らない間に婚約者にされる心配もないし。

 リリーに似て、愛らしいし」


ダニエル様は目が悪いのだ、きっと。

愛猫のリリーに私が似ていて可愛いといつも言う。


さらに婚約などまだ考えたくもない彼にとって、普通の令嬢はみな同じにみえるらしい。

髪形とドレスが変わると、わからなくなるんだよねー、と言っていた。

子供たちが何人か集まる、母親と一緒のお茶会などで、唯一間違えない私に話しかけていたので、なんとなく親しくしている。



「まあ、私のような体形の令嬢は、他にいらっしゃらないですものね」



にっこり笑ったダニエルが、まじまじと見つめてきた。



「カレン、なにか雰囲気が変わった?スッキリした感じ?もしかして痩せた?顔もなんか違う感じがする」




ふふふふっ。

気が付いたのね。



「その通り、少しだけれども痩せましたの」



「ガリガリに細くなってはだめだよ。可愛くなくなるからね。

 やっぱりポッチャリしている方が可愛いよね」



ダニエル様、それは猫に限った話です。

ポッチャリ令嬢は可愛くないですから。


ダニエル様が私にかまってくれる理由で一番大きいのが、私が彼の飼い猫のリリーに似ているからだろう。



ダニエル様が愛してやまないリリー(猫)は真っ白のモフモフした毛並み。そこだけは素敵な猫だ。


しかし・・・・。


ダニエル様のお宅にお邪魔してリリーに会った時、すごーーくよくわかった。



リリーはでっぷりと肉付きが良く、貫禄満点だ。瞳は碧だけど藪にらみでどうみても目つきが悪い。

不機嫌そうな口元に、猫らしく鼻の穴が良く見えるお顔。高いところから床に降りるとき、猫としてはあまり聞かない、ドンという音がする。


つまり毛並みだけきれいな、目つきの悪い太ったブサ猫だ。


うん、私にそっくりだね。



「私は猫ではないので、痩せたいのです」



「カレン以外の令嬢達は、みな細くて似たような体形をしているから、髪形を変えられたら見分けがつかないんだよ。会ったことがあるのに名前を間違えたら面倒だからね。

お茶会なんかの時には、カレンがいてくれると助かるんだ」



私も似たような体形になりたいです。

なにげにダニエル様失礼です。

いつものことだけど。



「僕のリリーはポッチャリしているけど、優雅で可愛らしい。

カレンもリリーを目指すと良い」



重ねて失礼です。



「レディに猫にを手本にしろだなんて、おかしな話ですわ。

リリーは猫だから、ずっしりと重くても可愛いのです」



紅茶だけ飲む。お菓子は食べない。






ダニエル様が子猫のリリーを飼い始めた時に、私と初めて出会った。

その頃のリリーは目つきは悪いけど痩せていたし、私もここまで太っていなかったので、最初からリリーに似ている認定をされた。色味がそっくりだそうだ。

リリーと私は同じペースで太って行き、おかげで私はペット認定されているっぽい。



今はペット扱いだけど優しいダニエル様。


私がヒロインを虐めて断罪されるときには、あんなに冷たい蔑みの目でみられるのだろう。

そう思うと、胸がつきりと痛い。



ダニエル様と中庭を散歩し、髪の毛をフワフワといじりまわされたあと

彼は満足して帰って行った。








~ダニエルサイド~




今日は暇だったので、久ぶりにカレン会いに行った。



うんいつも通り、美しい毛並みに小さな碧い瞳。安定感のある体に、肉球の様な指。



不機嫌そうな顔。



完璧だな。



ふふふふ。






よろしくお願いします。

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