4・美しくなりたい
もう限界っていうところまで歩いて。
部屋に戻る。
エイミーが気を効かせて、入浴の準備をしてくれていた。
気の利くメイドだ。
「エイミーありがとう。
ちょうどお風呂に入りたかったの」
「頑張って歩いてらっしゃいましたものね!」
「あと、体重計をもってきてくれる?
これから毎日体重を計りたいの。
私は絶対に痩せるわ!」
「はい! 私もできる限りお手伝いさせていただきます」
朝に着替えた、素敵なワンピースは汗まみれでもう着れない。
次は水色のワンピース。これも素敵だ。
そして・・・・体重測定!
体重計にそっと乗る。
つい、つま先に体重を乗せてしまうのは、前世の影響か。
体重は
69.5キロ。
身長140センチでこの体重はかなりの太り具合だ。
いや、見た目だけでもわかっていたけどね?
数字としてみるとあらためて実感するのです。
そしてまたこりもせずに鏡の前に座る。
前世でも下の上くらいの素材の見た目を、努力で中の下くらいには上げられたのだ。
眉毛とか整えたら、ちょっとはましになるかもしれない。
鼻も成長したら、少しは変わるかもしれない、ぞばかすも減るかもしれない。
見たくないけど鏡をじっと見る。
なんてすごいそばかすでしょう。
おでこから顎にまであるそばかすなんて、あるの?
マッサージとかしたら消えないかな?
何気なく、鼻の頭のそばかすを撫でる。
消えろ~消えろ~と念じながら撫でる。
・・・・・・・。
・・・・・・。
あれ、気のせいかな
薄くなった???
鼻の頭のそばかすが薄くなった気がする。
そういえば私の魔法は、物質加工。
もしかして体も物質?
木に模様を刻んだ感覚を思い出し、指先に魔力をこめてみる。
鼻の頭をなでなで。
気合を入れてなでなで。
消えた。
そばかすが消えた。
私は夢中になって、頬や額、あごなど顔中を撫でまわしてそばかすを消していく。
一度撫でたら薄くなり、二度撫でたらさらに薄くなり、三度なでたら消えていく。
なんて素晴らしいのかしら!!!!!
一心不乱にそばかすを消していたら
ぐるりと目が回り、意識がブラックアウトした。
「カレン、カレン!」
「カレンお嬢様!」
目が覚めると、お母様とエイミーが心配そうに、私の顔を覗き込んでいた。
私は倒れていたらしく、またベッドにいる。
「あなたは魔力切れを起こしていたのよ。
まだ起き上がらないで、お休みなさい」
お母様に声を掛けられる。
「昨日池におちたばかりなのに、無理をしたの?
心配だから、ゆっくり休んでちょうだい。
魔力切れを馬鹿にしてはだめよ。
死ぬことはめったにないとは言え、衰弱してしまうわ。
魔術師がなんで細い人が多いか知っている?
魔法を使うにも体力が必要だからよ!」
なに。
魔法を使うと体重減るくらいの運動になるの?
それっておいしい。
顔中のそばかすを消すって、かなり魔力を使ったのかしら。
私の魔力は貴族としては、平均より少しすくない程度だ。
使い道がないと思っていた魔法しか使えなかったから、気にもしたことなかったけど。
もしかして、私の魔法ってすごいんじゃない???
「カレンお嬢様、お顔の感じ少し変わっていませんか?」
そばかすが消えたのは、夢じゃなかったのかしら。
「エイミー、鏡をとってくれる?」
そばかすが本当にきえたのか確認したくて、お願いする。
渡された鏡を見る。
「そういわれてみればそうね、なんかスッキリしたような」
「お嬢様! そばかすが無くなっているような気がいたします!」
「あら・・・・。 ほんとね。
昨日まではそばかすあったわよね」
ちょっとわざとらしいかしら。
そばかすが消えている・・・・・・。
ついでにほくろも消えている。
汚くない肌。
私はまた、泣いていた。
このどうしようもない顔に、明るい未来があるかもしれない。
私のこの手は
整形手術できる手かもしれない。
よろしくお願いします。