3・がんばる
朝。
パチリと目が覚める。
昨日は意識が戻った時間が夜だったので
スープだけ飲んで
すぐにフカフカの素敵ベットで眠った。
体調も悪くないようなので
今日からダイエット開始だ。
「カレンお嬢様、お目覚めでいらっしゃいますか」
私専属のメイドのエイミーが部屋に入ってくる。
茶色い髪に茶色い瞳のそばかすはあるけど、可愛らしい少女だ。
「おはよう。 エイミー
今起きたところなの」
「お疲れでしたらまだ、お休みになっていたほうがよろしいのですが。
どこか体に不調はありませんか?」
「大丈夫、気分はいいわ」
朝食がベットに運ばれてくる。
フワフワのパンにたっぷりのサラダ
スクランブルエッグに具だくさんのスープ
オレンジジュースに小さなゼリー。
完璧ね。
エイミーから料理長に、しっかり希望を伝えてもらったからね。
記憶が戻る前は、これに肉料理と山盛りベーコンとソーセージ
タルトやケーキがついていた。
いただきますといってから
モリモリ食べる。
全部食べ終わり・・・う~~~~ん。
足りない。
お腹いっぱいじゃない。
この体は、食べ過ぎ生活で胃が大きくなっているのね。しばらくつらいけど、空腹は我慢しなくては。
食後の紅茶を飲み。
朝ごはん終わり。
エイミーが持ってきたワンピースに着替える。
成人前なので、大人のドレスではなくシンプルなひざ丈のワンピースだ。
奇麗な緑色。カレンは私と趣味が似ているようで、部屋もドレスも全部落ち着く。
レースもリボンも控えめなワンピースは、動きやすそうで、運動する気満々の私にちょうどいい。
服を着替えたら、鏡の前に座る。
朝から見たい顔じゃない。
目は肉に埋もれて小さく、そばかすだらけ、あごは立派な二重顎。
体は・・・・140センチくらい?70キロくらい?
体感ではそんな感じだ。
なによりひどいのが、悪豚令嬢の特徴の鼻だ。
なにこれ、こんなすごい豚っ鼻みたことない。
正面から鼻の穴が見えている。
ぱっと見たら、太っているのと、鼻の孔しか印象に残らないだろう。
(美人になるのは、厳しいかな。)
と落ち込む。
唯一美しい、髪をきれいにとかしてもらって、後ろにリボンをつける。
銀色に輝き、クルクルと巻いている髪はとても素敵だ。
身支度を終えて、エイミーが退室する。
私はググっと背伸びして
新しい自分の顔を観察する。
・・・・だめだ。
良いところない。
眉毛も太い、唇も分厚い、顔の輪郭は肉が付きすぎていてよくわからない。
そばかすが本当に酷い。
しつこいようだが、鼻が酷い、酷すぎる。
見れば見るほど落ち込むので。
鏡から離れる。
せめて痩せよう。痩せたら大豚じゃなくて、子豚になれるかもしれない。
鼻のせいで豚はかわらないけれど。
庭に出て歩き回る。
グレイスランド家はお金持ちなのか、かなり庭が広い。
花が咲き乱れる庭を、ひたすら歩く、
走ると足を痛めてしまうくらい体が重いので、走れないからひたすら歩く。
ちょっと歩いただけでも、息切れがするので、休みながら歩く。
なんてことだ。
たいして歩いていないのに、額から汗が流れ落ちる。
流れ落ちた汗が、目に入って痛い。
涙も出てくる。
泣きながら、汗まみれになって荒い息を吐きながら歩く太った少女は、さぞかし見苦しいだろう。
ダイエットはつらいですね。