29・フェンリルでした
『世話になったな。我は、ガロス、フェンリルだ』
なんか話し方変わった?
「私はカレン・グレスランド。フェンリルって強いんでしょう?なんで傷だらけで倒れていたの?」
『うむ、我を裏切った群れの者にやられたのだ。
もちろん、一対一で負けせぬが、相手は徒党を組み多勢に無勢で後れをとった』
「フェンリルが群れをつくるなんて知らなかったよ。そもそも神話のなかの生き物だと思っていたし」
『神獣だからな。人里にはめったに降りぬし、数も少ない。だが、我には家族がいたのだ・・・』
「そっか。家族か・・・・。なにか事情があるんだね・・・・」
ボロボロになるまで痛めつける家族ってなんだ?
下を向いたガロスに、悲しくなる。
『我は・・・・・醜いから・・・・・嫌われているのだ・・・・』
『キュ~ン』
思わず情けない鳴き声が出てしまったのだろう。
カッコつけてしゃべっても声が可愛いし。
情けない泣き方しても可愛い。
思わず、首に抱き着いてしまう。
浄化魔法もこっそりかけたので、きれいになったモフモフが気持ちいい。
吸い込むと、お日様と青い草のにおいがした。
『同情などいらぬ。我は醜くとも誇り高いフェンリルである』
さっきからひかかっていたのだけど。
「醜いってどこが?」
『みればわかるだろう。この目の周りだ。お前はフェンリルではなく、ラクーンだと言われる威厳のない見た目だ』
神獣でも見た目の差別はあるんだね。
ラクーンってアライグマだよね。この世界アライグマいるんだ。
私もパンダかタヌキと思ったし、可愛いけど威厳はないなぁ。
「ねえ、その目の周りの黒いの消してあげようか?
嫌でなければ」
『なに!消せるのか!嘘をついたらかみ殺すぞ』
失敗したら殺されるのか。言わなきゃ良かったかな。
でも・・・・見た目のコンプレックスはなくしてあげたい。
動物でも人間でも。それは私のゆるぎない信念だ。
見た目は大事。
「じゃあ、消すよ。いい?」
『うむ』
指先に魔力を集めて、目の周りの黒い毛を銀色に変えていく。
ゆっくり、ゆっくり、丁寧に。
「終わったよ」
『本当か?みてみないとわからない』
私はフェンリルのガロスと一緒に小屋の裏の池に行った。
水鏡を覗き込むガロス。
動かない。
一分、動かない。
五分、動かない。
気に入らないとか?
食べられるかな?とガロスを見ていると、体をブルブル震わせはじめた。そして。
『アオオォ~~~~~~ン!!!!』
と大きな声で吠えた。
うん、男の子だね。
『カレン。ありがとう!!!』
ダーーーーっとガロスが走り出す。
見えなくなった。
え、さみしい。と唖然としていると。
走り去った方向から、ドドドドドドドドドっと突進してくる。
そしてまたダーーーーーっと走り去る。
そしてドドドドドドドドドと戻ってくる。
何度か繰り返し、やっと私のところで止まってくれた。
『ありがとう。カレンは僕の恩人だ。だからずっと一緒にいてあげる。群れに戻りたくないし。
僕は強いからね!役に立つよ!』
私はフェンリルのガロスをゲットした。
ガロスは大型犬くらいの大きさで、フェンリルという感じではなかったが、とても美しかった。
銀色のフサフサの毛に全身覆われ。輝いているようだ。ピンと立った耳に、立派なしっぽ。鋭く澄んだ金色の瞳。
とりあえず。
モフろう。
「ガロス、触っていい?」
『もちろん!』
首に抱き着き顔を埋める。顔中が幸せだ。背中やお腹に手を突っ込み撫でまわす。耳もワシャワシャする。もちろん尻尾も忘れない。うっとりするような滑らかな体表。手を突っ込むと触れるのは、フワフワの柔らかな綿毛。
いきなり火で焼かれ、顔がぐちゃぐちゃになり、気を失い。気が付けばどこにあるかもわからないボロ小屋に置き去りにされていた。
ずっと怖くて、不安だったのだ。
緊張していた体と心がほぐれていく気がする。
「ありがとう」
『ところでカレン。お前はなんでこんなところにいるの?女の子一人じゃ森は危険だよ。
ここら辺は、フェンリルの縄張りだから魔物はでないけど』
そうか、魔物が出ないのは偶然じゃなかったんだ。
何にせよ、ここにいつまでも居たくはない。
両親も心配しているだろう。早く帰らなければ。
その日は疲れたので、腕のやけどの跡を少しだけ治して、ガロスと一緒に早めにベットで眠った。
明日からは、本気で帰る方法を考えよう。
ありがとうございます。




