27・ここはどこ
目が覚めると、薄暗い木の小屋にいた。
顔と両手が、じくじくと痛む。
手足は縛られていなかったので、床から這うように立ち上がり、水を探す。
喉が恐ろしく乾いていた。
月明かりが差し込んでいるので、今は夜なのだろう。
ほんのりと明るい中で、私は古ぼけた魔道具のランプを見つけ灯りをともす。
水はないようだ。
痛む顔がどうなっているのか不安で、窓ガラスを覗き込む。
そこには悪豚よりも醜い女が映っていた・・・・。
ううっとうめく。
顔に両手を当てて泣きたいが、両手の皮まで焼けただれているのでそれもできない。
癒しの魔法が使えればいいのに。
やけどをしてすぐになら、きっと治せるはずだ。
でも、時間がたったら跡が残る。私が美容魔法で奇麗にしてあげた人々のように。
癒しの術は希少魔法なので、教会本部にしか使える者がいない。
服も焼けこげ、汚い床に転がされていたのでほこりまみれだ。
顔は醜い。左半分がすごく痛い。右半分は無事だといいけど。
窓ガラスに映った顔は、ショックが激しくて、よく見ていない。
体もあちこち痛むけど、ここに何もしないでいたら死んでしまう。
ノロノロと歩き、ギーっと音のなるドアを開けて外にでる。
ありがたい。近くに井戸があった。
水が枯れていなければいいけど。
水は枯れていなかった、ロープのついた桶を井戸の底に投げ込む。
両掌が皮まで焼けただれているので、それだけでも痛みが走る。
少しだけでいいから水が欲しい。
桶の三分の一ほど水を汲みことができた。
桶に直接顔を付けて水を飲む。口の端から水が零れてしまうけど仕方ない。
桶に汲んだ水を全部飲むと、少し気持ちが落ち着いた。
体の三分の一くらいのやけどなら死なない。
前世の知識が役に立つ。
でも、体中が痛い。
外で寝るわけにはいかない、もしかして魔物が出るかもしれない。
領地と王都しか知らないので、魔物なんて見たことがないがいるらしい。
領地も王都から近かったので、魔物が出たのは、話でしか知らない。でも、怖い。
痛むからだと心を引きずって、小屋に戻る。
小屋に入ったところで、力尽きた。
♢
朝日で目を覚ます。
顔が痛い。
汚い小屋の中だ。
昨日の出来事は夢ではなかったのだと思う。
夢なら良かったのに。
喉が渇いて、お腹もすいている。
頑張って小屋の外に出て、井戸から水を汲む。
乾いてきた手の平の皮が、ずるりと剥けて知ったしまった。痛い。
水を飲む。
手を治さなければ、何もできない。
大丈夫、大丈夫、私には美容魔法があるんだから。
気を取りなおして手の平に魔力をこめる。
指先から、皮膚の凸凹が消えて滑らかになっていく。
でも、皮膚の色は赤黒くまだらのままだ。やけどが酷すぎたのだろう。
お腹もすいていたので、小屋の周りをみてまわる。
ついてる、赤や青のベリーがたくさんなっていた。
熟しておいしそうな実をひとつ食べてみる、赤い実だ。うん、甘くておいしい。たぶん食べていいやつだ。
青い実も食べてみるブルーベリーみたいな味がする。おいしい。
私は夢中で食べた。
お腹は八分目くらいに落ち着いた。
水と食べ物があれば、しばらくは生きていける。
明るい光の中で小屋の周りを見渡しても、近くに人の気配はない。
あたり一面木ばかりで、ここは森のようだ。
痛くてたまらないので、手探りで顔に美容魔法をかける。
額と目の周りの皮膚が滑らかになっていく。
続けて頬と顎もきれいにしていく。
鼻は無事だったようだ。良かった。
桶に水を汲み、水鏡にしてみてみる。
顔の左半分が、醜く変色している。
治らなかったらどうしよう・・・・。
体中から血が引いていく。
貧血を起こしたのかもしれない。
手足と頭が冷たくなって、しばらく動けなかった。
その場でうずくまり、じっと回復するのを待つ。
大丈夫、大丈夫、私には美容魔法があるじゃない。
豚の鼻でも治せたんだから大丈夫。
気を取りなおして、小屋に何か使えるものがないか探してみる。
木のコップにお皿、スプーン、穴の開いた鍋、大小。錆びたナイフと木のまな板。運よくポットもあった。
粗末なテーブルに、背もたれのない木の椅子。暖炉。古びたベッドと毛布が何枚か。
ほこりをかぶった戸棚の中には、いくつかのツボがあり、開けてみたら塩らしきものが入っていた。
少しだけなめてみたら、塩だった。残念ながら、砂糖はない。戸棚には、大人の男性用のシャツとズボンもあった。
今着ている制服は、焼け焦げてボロボロだ。
毛布とシャツとズボンをもって外にでる。
毛布はよーーーく埃を払って干す。シャツとズボンも埃をはらい。洗おうかとおもったけど、浄化魔法が使えるのを思い出し、浄化魔法をかける。生地が傷んでいたので、美容魔法もかけて普通の古着くらいにはきれいにする。
毛布にも浄化魔法をかける。これで今夜はきれいな毛布で眠れる。
とりあえずボロボロの制服は、見苦しいしスカートで動きずらいので、シャツとズボンに着替えた。
身長百五十センチの私にはかなり大きいので、ズボンのすそを思いきり巻き上げ、袖も腕まくりする。
うん、動きやすい。
食器と鍋も洗って干す。
穴の開いた鍋は、二つとも魔法で穴を塞いだ。
大きいほうの鍋に、井戸から汲んだ水を入れる。半分以上入れると重くて零しそうなので、半分だけ水を入れて小屋に持ち込む。これで、小屋で、水が飲める。
小屋は埃まみれだけど、浄化魔法を使うと魔力切れをおこしそうなので、自力で掃除することにする。
窓を開けて、棚の上、台所、テーブル、椅子の上を拭く。
これだけでお昼ご飯時を過ぎてしまう。
暗くなる前に、眠れるようにしないと。
やけどを負った体はだるいくて、疲れやすい。
休みながらやる。
腕のやけどもそのままだと痛いし、体力を削っていくので、すべて治した。色はまだらで醜い。
とりあえず見た目は悪いけど、ケガがなくなったので少し動きやすくなる。
お昼ご飯にベリーをまた食べる。
気合を入れなおして、ベットの埃を払い拭く。
床は箒をみつけたので、それで丁寧に掃いていく。
集めたごみはドアから、そのまま掃き出す。
干していた毛布のうち二枚をマットのかわりにする。
一枚は掛け布団だ。
夜ごはんと明日の朝ごはん用にベリーを小さいほうの鍋に摘み、小屋に持ち帰る。
そこでもう限界になり、ベリーを食べ、汲んでおいた水を飲んで。
きちんとセットされたベットで眠った。
ありがとうございます。




