24・イベント潰し
次の出会いイベントはダニエル様だ。
リリーが家から脱走して、街で迷子になり噴水に落ちる。
それをヒロインがびしょ濡れになりながらも助ける。
リリーを助けてもらったダニエル様は、ヒロインの優しさと大胆な行動に心惹かれるのだ。
ゲーム開始の四月は重要な出会いイベントが詰まっているのだ。
リリーの脱走は今日の三時くらい。
念のためお昼過ぎには、リリーが落ちる予定の噴水の近くでスタンバイだ。
スチルをよく思い出す。
リリーはパン屋の方からやってくるはずだ。
リリーの好きなゆでた鳥のささ身も用意してある。
一時間、二時間・・・退屈だけど油断はしない。
ダニエル様がゲーム補正で、ヒロインにメロメロになってしまうところはみたくない。
ヒロインにメロメロになったら、私にも冷たくなってしまうに違いない。ゲームの補正が強くありませんように・・・・・。
いた!リリーだ。
見慣れた太い姿が、ボテボテと歩いてくる。
あれじゃ噴水のふちに乗ったら、落ちるよね。
ローズマリーも噴水の淵に腰かけて待機している。
彼女に見つかる前に、リリーを捕獲!
広場の中ほどで、リリーに声をかける。
「リリー~。おいしいのあるよ~。こっちおいで~」
私の声に反応している。
鳥のささ身をフリフリして。
「リリー~」
「なー」
やった!リリーが振り向いてこちらにやってくる。
ローズマリーも気が付いてしまった。こちらに走ってくる。
彼女に捕まる前に、リリーをゲットしなければ。
私も前に進み、ローズマリーとタッチの差で、リリーを抱き上げる。
リリーは
「なあ~ん」と鳴きささ身をねだってくる。
座り込み膝に抱いたまま、ささ身をあげる。
間に合った、良かった。
「ちょっと!邪魔しないでって言ったでしょう!」
はいと返事はしていません。
ローズマリーがリリーを奪い取ろうとしたとき。
「カレン!」
とダニエル様に呼ばれた。
「ダニエル様!リリーがこんなところにいました」
モフりたいのを我慢して、ダニエル様に手渡す。
食べてる最中の動物は、モフってはいけないからね。
リリーは呑気に、ダニエル様の腕の中でもぐもぐしている。可愛い。
「リリーが家から抜け出すなんて初めてのことだからね。心配していたんだ。
見つけてくれてありがとう」
美しい微笑みだけで、ご褒美は十分です。
これで終わってすぐに家に帰れるはずはないのだけれど。
「ダニエル様!その猫ちゃん、ダニエル様の猫ちゃんだったのですね。
私、一人でいるのが心配で、後をつけていたんです」
可愛らしく小首をかしげて、ダニエル様に話しかける。
う~~~~ん、中身を知っているからあざといと感じるが、美少女は美少女だ。
周りの男性は、ニコニコしてみている。
「心配してくれてありがとう。
じゃ、カレン帰ろうか」
ダニエル様は優しいが、女性には基本、素っ気ない。
私はペット枠だから優しくされているけれど。
「あ、あの私、同じクラスのローズマリー・モルガンと申します。
私も猫ちゃん大好きなんです。よければ抱っこさせていただけませんか?」
ああ、ヒロインと攻略対象が出会ってしまった・・・・・。
「悪いけど、リリーは人見知りなんだ」
「でもカレンには抱かれていたじゃないですか。私も、猫には好かれる方なんですよ~」
にっこり微笑む。うん、男ならいちころの微笑みだね。
「そうなのかい。でも、リリーは今日は疲れているだろうから、早く休ませてあげたいんだ」
「そうですか・・・残念ですが諦めます。いつかお家に招待していただけたら嬉しいです。
リリーちゃんと遊びたくて・・・・」
それってかなりずうずうしいお願いだよ。
公爵様の家に遊びにいきたいなんて、同じクラスなだけなのに。
それに答えず、微笑むだけでダニエル様は話を終わらせる。
「じゃあ、カレンうちに帰ろう。馬車はどこでまっているの?」
「今日はお忍びだったので、歩いてきました」
「そういえば、町娘の姿だね。似合ってる、可愛いよ」
ああ、この微笑みを失わなくて良かったよーー。
一人だったら、泣いているかも。
「それなら、僕の家によって帰ろうね」
ダニエル様は片手にリリー、片手に私を抱き寄せて馬車に向かった。
明日の学園が怖いです。
ありがとうございます。




