24・転生者
今日の去り際にヒロインがつぶやいていた言葉。
「悪豚じゃないの?なんで美少女?バグ?」
悪豚なんて言葉はこちらにない。
バグなんて言葉はもっとない。
まさかのヒロインも転生者ですか!
悩んでいても仕方がないけど、少しは考えないといけない。
ヒロインが転生者なら、話せばなんとかなるんじゃないかしら。
誰も処罰されない結末を、ヒロインが避ければできるはずだ。
一番近い出会いイベント潰したら、話をしてみよう。
そう心に決めてその晩は、眠りについた。
♢
あれから、ローズマリーと話をしようと思っていたのだが、なかなか話をする機会がないまま、最初の出会いイベントの日が来た。
宰相の息子アレクシス様とのイベントだ。
人気のない図書館で、二人が同時に同じ本に手を伸ばし、手と手がふれあい運命の出会いが始まる。
アレクシス様は魔法オタクなので、同じ魔法の本に興味を持つ美少女に心ひかれるのだ。
う~~ん、乙女ゲームらしいべたな出会いですね。
本の題名は「希少魔法辞典」。
だがしかし、二人が同じ本を手に取ることはない。
私が先に、借りてしまっているからね!
イベントは起こらないと思うが、念のために放課後の図書館に向かう。
二人から見えない位置にこっそり隠れる。
しばらく待っていると、ローズマリーがやってきた。
すぐにアレクシス様もくる。
二人とも同じ本棚に向かう。
「あれっ?」
ローズマリーの声が聞こえてきた。
やっぱり転生者でビンゴのようだ。
そこにあるはずの本がないから、驚いたのだろう。
アレクシス様はただ、本棚を見ている。
気を取り直したらしいローズマリーがアレクシス様に声をかける。
「あの、ここに 希少魔法辞典 という本があったと思ったのですが、ご存じないですか?」
と聞いている。
やばい、それでもイベントと同じ効果があるかもしれない。
「すまないが、記憶にない」
そうだよねー通い始めたばかりの学校の図書館の本なんて、まだ把握していないよねー。
良かった。
そっと出ていこうとしたら、カツと小さな靴音がなってしまった。
「カレン。君も本を借りにきたのか」
アレクシス様に声をかけられてしまう。
「いえ、返却です。それではまた!」
胸に抱えている本は当然「希少魔法辞典」ヒロインに見られたくない。
「ふ~ん、君もこんな本を読むのだね、まあ、希少な魔法使いである君が読むにはふさわしいか」
アレクシス様はいつの間にかそばに来ていて、私の持っている本を手にしていた。
やばい、ヒロインが睨んでいる。
希少とか魔法とかアレクシス様の言葉で、私が何の本を持っているのか気が付いたはずだ。
私が転生者だとバレバレだ。
「やっぱり君も魔法に興味があったのだな。
希少魔法に関心があるものは少ない。
今度、うちに遊びに来た時には、私のところも訪ねて欲しい」
にっこりとほほ笑むアレクシス様。
美形攻略対象様の笑顔、いただきました。
ヒロイン様の睨み、いただきました。
主人公に成り替わろうしているわけじゃないんです。
でも、説得力がないですね。
アレクシス様が図書室から出ていく。
私も一緒に出ようとしたのだが・・・・。
「カレン様。お話があるのですが」
逃げたいです。
が丁度よいのでしょうか。
ありがとうございます。




