2・ダイエットしなければ
川に落ちて、目が覚めたら別人になっていた。
これはいわゆる小説によくある異世界転生だろうか?
銀色の髪なんて前の世界には無かったし。
生まれ変わりたいと願いながら死んでしまったから、生まれ変われたのか?
異世界転生小説愛好家だったので、今の状況に抵抗はないけれど・・・なんで転生しても不細工なんだ。
神様ひどい。
転生物のお約束は、美少女に転生だよね?
それにチート能力必要だよね?
なんて冷静に考えていると、クルクル目が回ってきた。
頭の中に渦を巻くように色んな記憶が流れ込んでくる。
これは私の記憶ではなく、銀色の髪の女の子の記憶。
彼女は、カレン・グレイランド、伯爵家長女、12歳、子煩悩な両親と意地悪な兄と姉(美人)の5人家族。
勉強は出来るが、太っていて不細工なので娘可愛さに目が曇っている両親以外にはデブデブ、ブスブス言われている。
小さいころからデブで虐められていたので、気が弱く引きこもり勝ち。
ストレスを食べて解消するタイプなので、太り続けている。
この世界には魔法があるらしく、カレンも魔法が使える。
しかし、魔力は人並、使える魔法は・・・・錬金術に属する物質加工??
木に模様を刻んだり、布地をつるつるにしたりささやかなことが出来るらしい。
かなりマイナーな魔法のようだ。ちなみ他の魔法は生活魔法くらいしか使えない。
うん、地味だね。
ちょっとまって。
この名前はどこかで見たことあるわ!
じゃなくて、前世で知っているわ!
これは私がやりこんでいた乙女ゲーム「ときめき魔法学園~素敵な恋はここから始まる~」の悪豚令嬢じゃないの。
見た目も同じだわ・・・・・・
ものすごく太っていて、鼻の穴が丸見えの顔。
なんでせめて悪役令嬢じゃないの?
なんでよりによって悪豚令嬢なの?
「ときめき魔法学園~素敵な恋はここから始まる~」はテンプレの乙女ゲーム。
ヒロイン(主人公)が攻略対象と愛をはぐくみ、悪役令嬢に虐められながらも最後は一人と結ばれる難易度低めの恋愛ゲームだ。
私が転生したのは、ヒロインでもなく、悪役令嬢でもなくさらにモブでもない。
不細工だから悪役令嬢に虐められ、ヒロインに嫌がらせをする実行犯をさせられる最低の役。
汚れ役もいいところだ。
悪いことばかりするデブなので、ゲーム仲間たちの間では「悪豚令嬢」、略して悪豚と呼ばれ笑われていた・・・・。
やっぱり神様酷いです。
こんなに不細工で
こんなに太っていて
前世よりも見苦しい。
おまけにやりたくもない意地悪をさせられて、ハッピーエンドになったら悪役令嬢といっしょに断罪されて
修道院に一生幽閉だ。
・・・どうしよう。
このまま行ったら、悪役令嬢に無理やりヒロインに嫌がらせをさせられる。
拒否したら、殴るけるの暴行をうけ続けるだろう。
ヒロインと違って私には守ってくれる、攻略対象なんていない!
なんの恨みもない人に、意地悪なんてしたくない。
ー美しくならなければー
デブで不細工だから、悪役令嬢に目を付けられ馬鹿にされ手下にされるのだ。
せめて痩せれば、少しは何とかなるかもしれない。
髪はきれいな銀色だし、瞳も美しい碧なのだから(肉に隠れて、少ししかみえないけど。ゲームでは目が細すぎてわからなかったのね)。
とりあえずの私の目標は
痩せることに決まった。
でも、痩せてもこの鼻じゃ美人にはなれないけどさ。
私がショックからなんとか立ち直り、これからのことをゆっくり考えようとベットに戻った時。
コンコンとノックの音がして人が入ってきた。
「カレン」
お父様とお母様が入ってきた。
お父様は茶色い髪に茶色い瞳、大きな体で森のくまさんが笑ったみたいなお顔だ。つまり目が細い。
お母様は銀の髪に碧い瞳に、細身&グラマラスとても素敵なスタイルで、大変な美人だ。
私は色味以外は父親に似てしまったようだ。
二人は起きている私をみて、安心したように笑った。
「良かったわ。意識が戻ったのね。 二日も眠っていたから心配したのよ」
「庭の池に落ちるなんてなあ。 危ないからあの池は埋めてしまおうか」
そうか、私は池に落ちたのね。
「お父様、お母様。 心配をかけてごめんなさい」
二日も寝ていたなら、少しは痩せたかしらとか思いながら
心配をかけたこと謝る。
「お前が、元気になったのならそれでいい」
「何か食べないとね、元気になれないわ」
後ろからついてきて、控えていたメイドがとりあえず、お水をお飲みくださいと
水を入れたグラスを渡してくれる。
コクリと飲むと、冷たくておいしい。
「何か食べたいものはございますか? すぐにお食事できるように色々ご用意してまいりました」
いつの間にかワゴンが持ち込まれていてたくさんの料理がいいにおいをさせている。 」
パンにサラダにスープ、クッキー、チョコレート、タルト・・・・肉料理が何品も、魚料理もある・・・。
水に落ちて意識なかった人にそろえる料理ではないと思うが、これがカレンにふさわしい気遣いなのだろう。
「ありがとう。
ちょっとお腹が空いていたの。
スープをいただくわ」
「ああ、カレン。 スープだけなの? それでは元気になれないわ」
お母様は食べさせたがりのようだ。
ここでビシッと決めなければ、私は痩せられない。
「お母様、私、体が重くて池に落ちてしまったの。
これからは頑張って痩せることにするわ。
今日から、私の食事の量を減らしてください。
夜も肉料理は一種類でいいわ。
サラダを多めで
デザートは減らしてね。
私、痩せたいの」
記憶がよみがえって思い出したが、私が池に落ちたのは、お姉様に突き飛ばされたからだ。
私の顔をみて、汚れているわ、洗わなくちゃ!と。
汚れているのではありません。そばかすです。
お母様が大きく目を見開く。
「まああ、カレン。いきなりどうしたの?
あなたはポッチャリしていても可愛らしいわよ」
うん、私がデブなのはお母様が甘いのもあるようね。
「私もお母様のように美しくなりたいのです。
あと三年で学園にも入学しますし」
「そうなのね、私みたいになんて嬉しいわ。
つらくなったら、すぐに止めて欲しいけど
痩せたカレンも可愛いでしょうね」
良かった、娘を太らせたがる親じゃなくて。
こうして私は痩せる宣言をして
ダイエット生活&修道院送り回避生活を始めたのだった。
よろしくお願いします。
ブックマーク、10くらいつくといいなぁ。