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20・宰相様

ありがとうございます。



そんな王宮にて、王女様訪問のある日の帰り道。




廊下の反対側から、宰相様が歩いてくる。


艶やかな黒髪に、薄茶色の瞳。

四十代のダンディなイケ叔父だ。



姿勢よく歩いているが、その時事故が起こった。



ステーーーンと宰相様が転んだのだ。


バナナの皮を踏んづけたかのような見事な転びっぷり。

だけなら良かったのだが・・・・。


スルーーーーンと頭から何かが飛び去った。


黒い毛の塊だ。



宰相様の頭は、見事にてっぺんだけが剥げていた・・・・・。




運悪く、私は一部始終みてしまい、宰相様と目が合ってしまった。



「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」



気まずい。

非常に気まずい。



宰相様は慌てて立ち上がり、毛の塊を頭にのせた。


「そこのお嬢さん。

 見苦しいものを見せてしまったかな?」


宰相様が私に声をかけてくる。



「いえ、特に見苦しいものなど、みておりませんが」



「なら良かった。それでは!」



と慌てて、でもできる限り普通の速さで通り過ぎようとする。



そこを私はハシッと捕まえた。

失礼極まりない行為だがしかたない、私にはできることがあるのだから。


私は宰相様に近づき、小声で話しかける。



「宰相様に大切なお話がありますので、どこか部屋を借りられないでしょうか?」







宰相様が用意してくれた、応接室のような部屋で二人きり。

気まずい沈黙が流れるが、そのままではいられない。



「あー、私に話とは何かな。

 できれば手短にお願いしたい。

 忙しいのでな」



ずれていたカツラは、もとに戻っている。

素早いなぁ。



「私は宰相様のお力になれます。

 あの、私は髪を生やすことが出来ると思うのです」


なんといってよいかわからず、変な言い方になってしまったけど、内容は正しい。



「あー、君は癒しの魔法を使えるのかな?

 それだとしても失われた髪は戻ってこないのだよ。

 ありがたい申し出だが、それでは」


そんなに慌てて去っていかないで

少し話を聞いて欲しい。



「癒しの魔法は、大変貴重な魔法。

 そんなだいそれたものは使えませんが、髪は生やせます」


「そんな魔法は、聞いたことがない。

 お嬢さん、ふざけないでいただきたいな」



少し怒っているようだ。

痛いところを探られたら、人は起こるものだからね。

本気で怒られる前に、実践してしまおう。



「五分、いえ三分でいいので宰相様のお時間をください。

 それと頭に触れることをお許しください。

 そしたら、どんなお叱りでも受けますし、すぐに立ち去りますので」


早口でいっきにしゃべり、素早く

ソファに座る宰相様のもとに近づき、カツラを取って、頭に手を触れる。


「なにをする!」



やっぱり怒られたけど、頭に触れてしまえばこちらのものだ、髪を生やしたことならあるのだ。



私の指が触れたところがふわりと白く輝く。

孤児院の子供の髪を生やしたときのように、指先にプツプツとした感触が伝わり、そしてフサッと髪の手触り。


光った頭に驚き、宰相様が頭に手を触れる。



ほんの一部だけ生えた髪の毛の感触に気が付いたようだ、私を振りほどこうとしていた動きがとまり、自分の頭を撫でている。


「え?」


慌てて立ち上がり、鏡の前に行く。


「これは・・・・・」



「お嬢さん、これを全部にやっていただけるか?」


一部だけ生えた毛に、気が付いたようだ。


「はい、もちろん!」



私は笑顔で答えて、残りの部分に施術する。

そんなに広い範囲ではない、河童より二回りくらい狭い範囲なのですぐに終わる。

私の魔力も日々増えているので、魔力切れの心配はもうない。


すべての髪を三センチくらい生やし、できましたと声をかける。


髪の毛は三センチ伸ばすのが精いっぱいなのだ。



宰相様は自分の頭に手を触れる。

なでなで、くしゃくしゃ、わしゃわしゃと髪があることを確かめている。


突然、大きな声がした。



「うおーーーーーーーーーー!!!!!」


吠えるイケ叔父。

走り回っているイケ叔父。

怖い。



「髪がーーーー!私の髪がーーーーー!!」


冷静な宰相様のイメージ壊れた。




「君、君、素晴らしいよ!

 私の髪が生えている」


「はい、良かったですね」


再びにっこりとほほ笑む。



「これは、引っ張っても抜けないのかい?」


「はい。髪を洗っても大丈夫です」

私のまつ毛も、抜けないからね。

毎日洗っても大丈夫だし。



「今日一日で効き目が切れてしまうということも?」


「大丈夫です。他の場所の髪の毛が抜けてしまっても、追加で生やすこともできます」


「いや、こんな素晴らしい魔法をいままで知らなかったなんて!」


髪の毛を撫でつけながら、宰相様が喜んでいる。



「ありがとう。

 えーと。

 私はマルコス・シュタイン、この国の宰相を務めている。

 ご令嬢のお名前を伺いたい」


「私はカレン・グレスランドと申します。父は伯爵位を賜っております」



「グレイスランド伯爵令嬢、いやカレン嬢とよばせて欲しい。

 私のこともマルコスと呼んでくれてかまわない。

 この度のことは、心から感謝する。

 いや、髪は魔法ではどうにもならないと思っていた。

 癒しの魔法も、実はひそかに試していたのだが駄目だった。

 ありがとう!


 なにかお礼をしたいのだが、なにか希望のものはあるだろうか?

 ご兄弟がいるなら、就職の口利きなどもできる。

 ドレスや宝石などがよいだろうか?


 なんなら、良い縁談でも世話を出来るが、希望の男性などいるだろうか。

 王家は難しいが、それ以外なら見合いくらいはすぐに設定てきるぞ。

 私の息子のアレクシスの嫁でも歓迎するぞ」



就職の斡旋は職権乱用ではないだろうか?

好きな男を選ぶなんて、人身売買のようだ・・・・。



え、アレクシス?

そういえば攻略対象の一人、アレクシス様は宰相の息子設定だった。



「身に余るお言葉、ありがとうございます。

 お礼でしたら、私の慈善事業に寄付をしていただけたら嬉しいです。

 孤児院や学校などに力をいれておりますの」



美容魔法でお金を稼ぐのは順調なのだが、貴族の令嬢が金儲けというのは、今一つ外聞が悪い。

なので最近は慈善事業に寄付をしてもらう形にしていたのだ。

やりたいことはたくさんあるので。



「うむ、慈善事業とは立派な心掛けだな。

 のちほど寄付をさせていただこう。


 それとカレン嬢の素晴らしい魔法は、その、他の者に紹介してもよいのかな?

 私と同じ悩みを抱えているものは、たくさんいるのだが・・・・。

 いや、カレン嬢の負担にならない範囲でお願いしたい」


「喜んで、お力にならせていただきます」



お金儲けできますね。


宰相様の派閥拡大にも利用できるのかな?



「何か困ったことがあったら、いつでも相談してほしい、出来る限り力になろう」


「ありがとうございます」



宰相様はニコニコと、まだ髪を撫でつけている。






宰相様の後ろ盾を手に入れた。



ヒロインと悪役令嬢に対抗するのにも役立つだろう。



今日はいい日だ。







何日後かに、宰相様から贈り物が届いた。

立派なお花に、美しい布地、大き目の宝石箱。



宝石箱は二段になっており、上の段には見事なサファイアの耳飾りとネックレス。

下の引き出しには、ぎっしりと金貨が詰まっていました。

さすが、宰相様。




それからぽつぽつと、宰相様の紹介で育毛をしてたくさんのお礼の品をいただきました。

身分の高い男性は、お礼の金額が違います。

皆さん、ご当主だからでしょうね。

ただ今、懐は温かいです。



それにしても。

髪が生えると何故、男性は吠えるのでしょうか。


 

 



それから宰相様は王宮で会うと、親しく話しかけてくるようになり

たまに新しく、毛が抜けてしまったところの増毛を頼んで来るようになりました。






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