13・マーシャル商会
孤児院訪問三回目。
今日はメイドのお掃除部隊を連れてきている。
体をきれいにする魔法の浄化を使える人もいるので、子供たちは見違えるようにきれいになるだろう。
私も使えるのだけど、それより美容魔法に魔力を消費したいから、孤児院では使えなかった。
いつもついてきてくれてたエイミーは、平民メイドなので魔力が少ない。
今日は貴族メイドについてきてもらったからOKだ。
今回の差し入れは、いつものお菓子とメイドたちが頑張って縫ってくれた洋服の洗い替え。
とても喜んでもらえました。
残っていた、まだ美容魔法をかけてあげていない子供達に魔法をかける。
全員きれいな服を着て、整った顔になったので
見ているととても気持ちがいいです。
メイドたちに浄化魔法をかけてもらい、全身清潔のピカピカです。
お掃除もメイドたちが張り切ってくれたので、部屋もきれいに。
楽しくなった私が、子供たちをよしよしと頭をなでていると・・・・。
あれ、小さなハゲがある。
これは・・・・治せるのか?
指先に魔力を集めて、フサフサの髪の毛をイメージしながら無毛の部分をなでていく。
指先にプツプツとかすかな感触があり、手を離すとフサッと一
センチほどの髪の毛が生えていた。
男の子は気が付いていなかったみたいで、今一つ反応は薄いけど。
私としては満足だ。
キレイになった子供達と部屋とハゲが消えた頭に満足していると、外に馬車が止まる音がした。
コンコンとドアがノックされ、失礼しますとドアが開き、執事らしき人が入ってくる。
その後ろから、身なりの良い女性が転がるように走り寄ってきた。
「グレイスランド伯爵令嬢様!失礼とは存じますが、ご挨拶させてください。
わたくし、ロクサンテ・マーシャルと申します。夫はマーシャル商会を経営しております。
どうかお嬢様に、わが娘を救っていただきたくまかりまいりました。
どうかお嬢様のお力をお貸しください!」
金髪にグリーンの瞳のきれいな女性は、マーシャル商会という大きな商会の奥方で
娘が一人と息子が一人いるのだが、娘は生まれつき顔に大きな痣があるそうで。
孤児院の少女のケロイドが消えたという噂を調べ、私にたどり着いたそうだ。
裕福な大商人とはいえ、伯爵家を訪問することはできず、孤児院を見張っていたところ私がやってきたので、急いでお願いにきたということらしい。
男でも女でもね、顔に大きな痣があるのはかわいそうだ。
もちろん私は承諾して、マーシャルさんの家に向かった。
マーシャル商会はかなり儲かっているらしい。
家というより屋敷という自宅に案内された。
趣味の良い、お金のかかった応接室に通され、お茶とお菓子をいただく。
お菓子はちょっとだけにするけどね。
「いきなりお呼びだてして、大変申し訳ございません。
ですがもう、娘を治す方法はグレイスランド伯爵令嬢様しかいらっしゃらないのです。
娘は生まれた時から目の上に大きな痣がありました、あちこちのお医者様に診ていただきましたが痣は消えるどころか広がるばかりで・・・。今では、額や頬にまで広がっているのです。
娘は12歳と年頃、人に会うどころか、家族にさえ顔を見せずに閉じこもって過ごしております。
お嬢様のお力で、痣を消していただけないでしょうか」
娘が心配でたまらないのだろう、奥様は少しやつれているが、美人はやつれても美人だ。
娘さんの部屋に案内してもらう。
ノックをして
「お母さんよ、入るわね」
と声をかけて部屋に入る。
「いや!こっちにこないで!」
娘さんは、話の通り、家族に会うのも嫌なようだ。
醜い顔は見られたくないよね。
私はすっと進み出る。
キレイにしてあげたい。
単刀直入に言うのが、一番早い。
「あなたの顔の痣、私なら消せるわよ」
「嘘よ、今まで誰も消せなかったわ」
「私は何人もの人の痣を消してきたわ。
一度くらい私を信じても、損はないと思うわよ」
ちょっと説得すると、娘さんは顔に触らせてくれた。
聞いていた通り、広い範囲の痣だった。
もちろん、私には痣が消せた。
美容魔法をかけ、白く光った娘さんに鏡を渡す。
ゆっくりと恐る恐る鏡を見る。
しばらく無言で息を止めた娘さんは、ううっと声をあげて泣き出した。
ああ、うっ、ヒックと泣きじゃくる。
「あ、あ、ありがとう・・・・ありがとうっ・・・
あ、痣が、こんなにきれいに消えるなんて・・・・・。
あ、ありがとう」
「あああ!アンリエッタの痣が!消えている・・・こんな、こんなに跡形もなく・・・。
ありがとうございます。ありがとうございます。
心から感謝いたします。
お嬢様は我が家の恩人です。
御用があればいつでもなんなりとお申し付けください。
ああ、アンリ、アンリエッタ・・・・良かったわね。
本当に良かったわね」
マーシャル夫人も涙ぐんでいる。
そこに、マーシャル商会会長がやってきた。
娘のアンリエッタの顔をみて、目を潤ませ。私に言った。
そして胸に手を当て深く頭を下げた。
「グレイスランド伯爵令嬢、ありがとうございます。
この御恩は一生忘れません」
会長と一緒に応接室に戻る。
「この度は、本当にありがとうございました。
どんなに感謝しても、感謝したりません。
ぜひなにかお礼をいたしたいのですが。
お嬢様のしてくださったことにふさわしいお礼がみつかりません。
なので失礼とは存じますが、こちらをお納めください」
と小さな美しい宝石箱を差し出してきた。
「開けても?」
「はい」
宝石箱を開けるとそこには小さな宝石箱にいっぱいの金貨が収まっていた。
二十枚くらいはあるだろうか?ざっと二百万円くらいである。
「こんなにいただけませんわ」
そっとテーブルに置く。
「いえ、少なすぎて申し訳ないくらいです。宝飾品をとも考えたのですが、お嬢様にふさわしい品を用意する時間もなく、このようなぶしつけなもので申し訳ございません」
「では、金貨を一枚いただきます。
あ、この宝石箱もいただいていいかしら。とても可愛らしいわ」
私のお金儲け第二弾である。
美容魔法を使って、お金儲けをしようと思っていたのだ。
万が一修道院に入れられても、逃げ出してどこかで暮らす資金調達をしたかったから。
孤児院にもお金がかかるしね。
「それでは少なすぎます」
「孤児達には無償で、平民には銀貨一枚で(一万円くらい)、裕福な方には金貨一枚で美容魔法を使う予定でしたので、これで十分なのです」
ちなみに貴族は相手によって変える予定だ。公爵様なんかが金貨一枚では恰好つかないだろうし。
「いいえなにとぞ、お受け取りください。金貨一枚しかお礼を差し上げなかったなんて、マーシャル家の恥でございます。ほかにもささいなことですが、お嬢様のお力になれることがありましたら、何なりとお申し付けください。
全力でお嬢様のご希望を叶えさせてください」
会長はなにか色々言っているけど、金貨一枚でいいのになぁ。これは貴族対応か・・・・・・
つらつら考えているけど、顔から血の気が引いていく。
やばい、これは魔力切れ・・・・・・。
朝から孤児院で魔力を使いそのあと
娘さんの痣を消すのに力を使いすぎ、魔力切れで倒れました。
気が付いたら、自室のベットで目覚めました。
サイドテーブルには、金貨の詰まった宝石箱がおいてあり結局大金を受け取ってしまい・・・。
まあ、いいか。
お金はいくらあっても困らないし。
なにより
国で一二を争う大商会の後ろ盾を手に入れたことは大きいです。
よろしくお願いします。




