10・孤児院
もっと沢山の人をきれいにしたい。
喜んでもらいたい。
そんなふうに強く思った。
好きで不美人でいる人なんて、そんなにいないのだ。
男性でも、汚い肌なんてのは嫌だろう。美しくなれば、それだけで人に好かれやすくなり、世界が広がるのだ。
私は何か自分にできることを考えた。
もともと私は、不細工のくせにクラスで一番持てる男の子に告白するくらい、活動的な性格なのだ。
告白は・・・・今考えると、成功するはずもなく、馬鹿な事したなぁ。と思うのだが。
三日後。
私は領地の中の孤児院に慰問した。
お父様に馬車と護衛を出してもらい、差し入れに料理長にクッキーやビスケットなどのお菓子を作ってもらった。足りないものは実際に行ってみないとわからない。
実用品は、足りないものを知ってからお小遣いの範囲で寄付するつもりだ。
私は自分を飾るものを何も買わないし、毎日食べていたおやつは料理長が作ってくれていたので、お小遣いは貯まっていたからね。
ルビーとサファイアを加工してもらえる収入は、一か月ごとに渡されることになっているので、まだもらっていない。
ガラガラと馬車で到着した孤児院は、ボロかった。
教会が運営しているので、教会の横にある石造りの長屋。
壁は汚れている。窓ガラスもあちこち割れており、板で塞がれていた。
こんにちはと中に入ると、中もボロかった。
部屋はたくさんあるようだが、掃除が行き届いておらず空気が淀んでいる。
「ようこそいらっしゃいました。お嬢様。」
痩せた緑の瞳の、やさしそうなシスターが歓迎してくれる。
私は前世の知識があるから、貧困がどんなものか形だけは知っている。何も知らない貴族の令嬢がここに来たら、すぐに帰りたくなるだろう。
シスターが私にあいさつすると、子供たちも集まってきてこんにちは。と言ってくれた。
きれいなお洋服。とぼそりと誰かが言った。
そうね、普通はきれいなお嬢様なんだろうけど私はきれいじゃないからね。
お洋服はきれいだけど。
子供たちはみな、洗ってはあるけれどボロボロの服を着ていた。痩せて顔色も悪く、髪にも肌にも艶がない。
こちらへどうぞ、と院長室らしきところに案内されたが、そこも粗末な机と椅子と応接セットと本棚があるだけだった。
「こんにちは、あなたが責任者の方かしら?」
「はい。他にも神父と手伝ってくれる女性がいますが、孤児院は私が管理しております。」
「予算が少ないようね。」
入れてもらった紅茶を飲みながら話をする。
「はい、ご領主様に援助はいただいておりますが、食費ですべて使ってしまい、他の必需品は信徒の皆様の寄付で賄っています。」
「お父様に予算を増やせないか話してみるわ。他にも孤児院は何件かあるから、そうたくさんはふやせないかもしれないけど。
今日は、お土産にお菓子を持ってきたの。子供たちと食べてくださいね。」
「ありがとうございます。助かります。」
シスターは笑顔で答えてくれた。
さて、ここからが私の目的だ。
「シスター、お願いがあるの。」
私の前に、顔にやけどの跡や痣のある子供が並んでいる。
一番ひどい子の前に行く。
「あなたの顔は何故やけどしたの?」
「・・・・お母さんが、ごはんつくっている時にお湯をこぼしました。」
わざとやけどさせたとは思いたくない。そうじゃないといいな。
「やけどの跡、消したい?」
「もちろんです!」
十歳くらい女の子だ、それはそうだよね。
「なら、消すね。」
顔の右半分、おでこから頬にかけてケロイドがある。
指先に魔力を集めて、自分の顔を直したときと同じ感じでそっと触れていく。
髪の生え際、おでこ、こめかみ頬。
白く輝き、ケロイドが消えていく。
記憶がよみがえった頃なら、もう気絶していただろう、私の魔力は増えているようだ。
毎日、限界まで使っていたからかな。
顔の左側にも所々ケロイドがあったので、それも消していく。
「はい、きれいになったよ。」
女の子に鏡を渡す。
手鏡を覗き込んだ女の子はやっぱり
ポロっと泣いた。
それから、生まれつき顎に痣があった男の子の痣を消し。刃物でざっくり切られた跡のある12歳くらいの少年の傷を消し。そばかすだらけの女の子をきれいにした。
みんなぽろぽろ涙を流した。
醜さは、心に傷をつくるんだ。
心の傷も消えるといいなぁ。
他にも酷い吹き出物のある子とか、体が傷だらけの子とか治してあげたい子供がたくさんいたけど、魔力切れで限界だったのでそこまでにした。
全員きれいになるまで通おう。
魔力が余るようになったら、全員に生活魔法の浄化をかけてあげたい。
それにしても。
治してあげた子達は、そろって。
私よりもきれいな顔をしていました・・・・・。
もちろんデブじゃないし。
健康的な肉付きにしてあげたい。
そしたらもっと、可愛いだろう。
それから皆で、私の差し入れのお菓子を食べてニコニコになりました。
ケロイドの女の子は、ずっと泣いていたけど。
これで他の子と同じように、恋ができるよ。
嬉しいね。
次来るときは、新しい服を上げたいと思い。
子供対全員の身長を計り、横に性別を記入したメモをとり
私達は家路についた。
よろしくお願いします。




