6話 2回目の月曜日
いつも月曜日の朝は憂鬱になりがち。また5日間がはじまると思うと、職場への足が重くなる。前の日みたいな大胆な一騒動があったあとでさえ、私はやっぱり家の方が楽みたい。でもあの子に会えると思うと、今までの月曜日よりは気持ちが軽くなっていた。
電車に乗るとあの子はまた2人掛けの席に座っていた。あの子を見つけ、私はその席の方へ向かった。
「おはよ」
私が言うと、あの子はスマートホンから目を上げて、
「おはよ」
と返しながらスマートホンを鞄にしまった。
「週末、休めた?」
「うん」
私が答えると、あの子はなぜかほっとしたみたいに笑った。
「休みにどこか行った?」
ほっとしたように笑ったあとで、あの子は何かを心配するみたいに言った。
「今週はお父さんとお母さんが土曜日に少し出かけてたから、私はどこにも行ってないの。出かけたらすぐに疲れちゃうのもあるんだけど、日曜日はなるべく家でゆっくりしたいと思っちゃって」
私は曖昧に苦笑いした。
「お父さんとお母さん、一緒にお出かけするんだ。……いいなぁ、仲いいんだね」
言ったあの子は長い間まっすぐ前を見たままで、穏やかに微笑んでいた。
「無理してない?」
前を見つめたあとで私の方を急に振り向き、あの子は気遣わしげに私をのぞき込んできた。
「無理? してない」
首を横に振った私に、ますますあの子の顔が近づいた。
「ほんとかな~」
あの子の顔があまりに近くて、私はほんの少し身を引きながら
「ほんとに」
と、こっくり頷いた。
「ね、出かける時はどこ行くの?」
私が答えると、それ以上は深入りしないであの子は話題を変えてきた。
「図書館が多いかな」
あとは、母と食事の買い物に行くくらい。それは言わなかった。
「服とかはあんまり買いに行かないの?」
不思議そうにあの子は訊いた。
「季節に1回くらいかな」
私がそう答えると、あの子は目を丸くした。
「ね、今度の土曜、買い物行こうよ!」
あの子は最初に話した時に思ったほどリアクションの大きい子ではなかったし、この時もそれは変わらなかったけれど、この時、あの子がとても楽しそうなのはわかった。
「その日行けるかちょっと確認するから、明日まで待ってもらえる?」
あの子はうれしそうに頷いてくれた。
それからあの子は自分のスマートホンで近場のデパートを検索して私に見せた。
「こことかなら、歩未ちゃんの着そうな服あると思う」
あの子は慣れた手つきでスマートホンに指を滑らせ、次々にいろんなブランドのいろんなを服を見せてくれた。そしてそこに鞄やアクセサリーもあれば、それも一緒に紹介してくれていた。
「さらちゃんっていくつ?」
とても手際が良くて、しかも私の好みをよくわかって選んでくれていたから、思わず尋ねた。
「えっとね……」
あの子が少し考えるように黙ったその時、車内放送が流れた。
私の降りる駅に着いていたので、私は慌てて荷物を持って、
「また明日ね」
と足速に電車を降りた。