50話 2年後の秋(2)
あなたがどういう人だったのか私はあまりにも知らないわ。あの子のことも。----結局私は、見えたものを信じたいように信じただけなの。でも、だれが何と言おうとも、私はあなたとあの子のおかげでいろんなものと向き合えた。いろんなことを気づいて、考えて、感じて、追いかけた。
あの子が、どうしてあなたに私の贈ったピアスを渡したのか。あの子がほんとうはどういう存在だったのか。あなたとあの子にどういう接点があったのか。わからないことは増えるばかりだったけど、もういい。----私は、あなたたちと過ごしたあの約2か月、とても必死になれたから。----必死に追いかけられたから。
私があの子と接点を持ってから会えたのは、限られた時間。土曜日、遊びに出かけたのが2回。通勤で毎朝たった15分。そっちはぜんぶで35回。しかも最初の3回は、ほんの数秒。実際に私があの子の姿を見ることができたのも、5週目が最後。不安も、わからないことも、いっぱいだった。
でも、あの子が私の通勤定期を拾ってくれていなかったら、過ごすことのできなかった時間だし、あなたに会うこともあり得なかった。
今思えば、あの2か月はかけがえのない宝物で、あなたたちは、私に大事なものをたくさんくれた。どういうつもりだったにしても、私は、言葉では想像できないくらい思ってる。
「ありがとう」
未熟な部分が多々あったと存じます。ここまでお読みくださった皆様、ほんとうにありがとうございます。




