表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ねえ知ってる?

作者: 蛹繭

私の母は掃除をしない。

いや、自称綺麗好きの彼女。

掃除らしき行動はする。


物を積み上げ、山を作る。

例えば。

食器のタワー。

服のエベレスト。


母は積み上げる天才だった。

ただし触れると容易く崩れるのが難点だ。


まだ武勇伝は続く。

母が資格取得をするんだ!と勇んで買われた書籍ら。

彼らはいま私の寝床に鎮座している。


加えて、彼女は収集のプロでもある。

骨董店の店主など目ではない。

捨てられている物が欲しければなんでも拾ってくる。

皿から鏡、よくわからない壺まで。


そして母は慈悲深い。

主に彼女の問題と私以外に関してだ。

尽きることを知らない愛情を、

求めぬモノに振り撒くのだ。


神をも凌ぐその姿勢に幾度と私は涙した。

何せあらゆるモノから見向きもされない。

私は幾度と彼らと崩れ落ちたことか。

私は不勉強だから彼女の行動に理解が及ばない。


そんな母だからか。

自然と部屋の埃は増し、

山にデコレーションをしている。


白と黒のコントラストは哀愁を誘う。

女手ひとつで育ててくれたのだ。

これは仕方ないと割り切るべきか。


思案すると母は問うてくる。

ねえ、なんであなたが生まれてきたか知ってる?

それはねお金を貯めてマンションを一棟買うの。


思案すると母は問うてくる。

ねえ、なんであなたが生まれてきたか知ってる?

それはね私の老後の面倒をみるのよ。


思案すると母は問うてくる。

ねえ、なんであなたが生まれてきたか知ってる?

思案すると母は問うてくる。

ねえ、なんであなたが生まれてきたか知ってる?


あなたは私のために生きるのよ。


思案すると母は問うてくる。

ねえ、なんであなたが生まれてきたか知ってる?

ええ、既にわかっています。

私は生まれてきた意味を見出しているんです。


あなたは母を愛せますか。

あなたは親を愛せますか。


私は安らかに眠ってほしいと思っています。

なるべく早くにね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ