プロローグ「夢」
……。
…………。
……………寒い。
布団はどこだ。
子供のころからの寝相悪さで
いつもいつも、寝てる間に布団がどこかいってしまってしまう。暖房器具は数年前に壊れたまま放置。
そのせいで、寒さを感じる度に起きてしまっては、
布団を探しての繰り返し。。
毎度めんどくさい。
目を閉じたまま、手探りだけで布団を探していく。
だが、布団の感触はしなく代わりに地面から生えた
何か湿ったく雑草の様なものを感じとった。
なんだこれ。
よしベッドの周りを今一度確認しよう!
まず、ベッドの周りにあるのは、目覚まし時計…
あれれ……雑草、雑草、雑草。
ていうよりも、小さい頃ころから使っているベッドの感触すら感じない。なにか固い感触…。
まさかね、、。
と思いつつも、普通の人なら目を開けるところを気にしてないかのように、いまだ目は閉じたままでいる。
いや、あえて閉じているのだ。
背中に嫌な汗が流れていくのを感じた。
さらにそこに、家の中では感じることのない、
とても、優しくて暖かさのある風も追い打ちかのように吹いてきた。
今は寝たいのだ。まだ考えなくていい、この気持ち良い感じでいたい。
心地が良い、まだ寝たいという理由だけで、彼は”ここはどこ”という思考を捨て、眠りにまたつこうとする。
彼にとって考えることは、あまり好きではなく、睡眠こそがどんな時間よりも貴重な時間だった。
少年は今、辺り一帯に広がる草原のど真ん中に
1人大の字をかいて、全身パジャマ姿で白昼堂々と
寝っ転がっていた。
太陽はほのぼのとしていて、花がさき、蝶などの
虫や鳥たちが郡をなして、飛びまわっている。
んぅー、、、!
数十分経ったころやっと少年は動きだし
両手を頭の方へのばして、伸びをする。
鼻の先端に止まった蝶を放置しながら、先に目を開ける。
視界の中には、綺麗な柄の羽をもった蝶がいた。
黒い柄、金色に似た色、アゲハ蝶だろうか。
その後ろには、明るく晴れた空が映っていた。
雑草を触った時点で少しは考えていたのだが
やはり問題なのは、、、、、、、、
「はぁ。。やっぱりだ、、、」
少年がおかしく思うのは、そのはず
少年の記憶は、最後自分のベッドの上で寝たところで
終わっている。今さっき
家に無いもの…草を触ったこと、風を感じたことで家に自分がいないことを、ひっそりと確信していた。
「いくら寝相がわるいからってそれはないでしょ」
と愚痴をぼそっともらす。
いやいや、ていうよりもいくら寝相が悪いからって
さすがに外までいったことないし
そもそも家があるところは、集合住宅街の一角だ。って
ん?あれ?
え、、、ここほんとどこ?
思考が根本的な違和感に気づき、やっとそこに
たどり着いた。
腰から上。鼻の上でくつろぐ蝶を無視して上半身を勢いのまま起こして、周りを見渡した。
キョロキョロと首を動かし右から左と見て、後ろを向くと、そこには赤いワンピース?のような長い丈をした
服で視界がいきなり埋まった。
それが人と認識したと同時に、驚きのあまり
四つん這いになり、地面をはいで距離を遠ざけた。
「やっと起きた?」
声のする方向は当然、赤いワンピースからだった。
さっきまで気配がなかったのがびっくりだ。
いつからいたんだ。と慌てる。
その少女は、小学生ぐらいの幼い歳をしていて、
金髪の髪に外国人のような、ほりの深い顔つきをしている。
後ろに手を組み、こちらに笑みを浮かべている。
「私の名前は、エミ。カオルくん?であってるよね?」
と、エミと名乗るその少女は、初対面のはずなのに
自分の名前を言い当ててきた。名前を当たられ背中がゾッとするが、その少女の笑顔からは
なにか、懐かしいような温かさを感じる。
なんだろう。この感じは。初めてじゃないような。
「カオルくんついてきて、欲しいところがあるの!」
エミは、起こしてくれるのか手を伸ばしてきて、そう言った。
どこに行くんだ?俺は早く自分の家に戻って寝たいんだが。
はやく!はやく!と急かすエミに反射的にその手をとり起き上がった。
「きてきて!」
とそれだけ言うと、エミは小走りに東のほうへと歩き始める。
東のほう向いても、草原しか続いていない。
今の位置からでは、草原の緑しか見ることができない。
きっと、この奥に何かがあるんだろう。
なにがあるんだろう。と少し好奇心からか
勝手にいいものと錯覚して期待でふくらんでいた。
それからどれくらい歩いただろうか。
足がかなり、疲れるぐらいに歩いた。
目的地に着く前に、正直もうヘトヘトである
山を登ったり、川を渡ったりと、
「あれだよ!」
木々を抜けたとたんに、前方へと指を指して言った。
その方向をみると、そこには街?らしきものがあり
沢山の建物がずらっと並んでいた。
近くになるにつえて、あることに気づいた。
「ここってもう使われてないの?」
「今年で15年目だった気がする」
エミは前を向いたまま答えた。
遠くからは気づかなかったが、ここすべて廃墟のようだった。建物は腐食が進んでいて、劣化し崩れていて、もう人がすんでいるようには見えなかった。
入口には、遊園地や商店街にみる名前の書いてあるゲートをしていて、この場所の名前が書いてあったが
字ももうかすんでいて、読めやしなかった。
「ここに何をしにきたの?」
「カオルくんにここを見せたかったんだ」
エミは、後ろに手を組み、こちらに顔を向けていった。
”この場所”を?
全く身に覚えがないところだ。
と?しか思い浮かばない頭の中でかんがえながら
入口にあるゲートの下を踏み込んだ。
「えっ、、、。」
突拍子のない声がでると同時に、次の瞬間
踏み込んだ足から黒い霧がでてきて、円形状に
広がっていった。
「全部黒くなった…なにこれ。」
ついつい、ぼそっとその光景を口に漏らしてしまった。
黒い霧で覆われたとこから、ありとあらゆるものが
黒くなったからだ。
まるで世界が変わったかのように、建物はそのままで色だけが白黒へと順次変わっていった。
「カオルくんはやっぱまだ早すぎたんだね、奥に見せたいものがあるんだ!そのまんまついてきて」
と、意味わからないことをつぶやくエミ。
早すぎた?どゆことだ。
俺はこの景色を知らないし、記憶にもない。
エミが見せたいものとは、なんだろうだろう。
見ちゃいけない気がする。
そう思いつつもカオルはエミの後ろをそのままついて行った。
ある程度、建物が並んだ大通りらしきところを
歩いていくと、その先をでて建物で円形状に囲まれた
広場らしきとこにへとでた。
周りの建物も当然劣化が進み、崩れていた。
「昔は、ここも賑やかだったんだよ。」
たしかに、周りを見渡せば、色んな食材を売っていたであろう店や、飲食店だったり、風船売りだって
あった。見るに当時は凄くの賑わいだったんだろうとうかがえてた。
まるで、賑やかだった街から突然と人だけがいなくなったような感じだ。
白黒の景色が、何か寂しさを強調させる。
え、、、、ちょっとまって
何か見落としてる感じがする。
エミって今何歳だろうか、、。
見た目的に、小学生後半のような見た目だが
この街が廃墟になったのが15年前。。。
小学生とは思えない、会話や仕草。お金もちの
家庭の子だからかなっておもっていたけど。
さっきの寂しそうな言い方的に何か違う気がする。
「エミって何歳なの?」
と恐る恐る聞くカオルに、あっ!っと少し目を見開き
驚いた表情をするが
口元に人差し指をたて、「さあ何歳なんでしょうね」
と隠そうともされず誤魔化されてしまった。
「ここを見せたかったんだ!」
エミはある所に着いたようで、カオルのいる後ろへと振り返り言った。
そこだけ、地面のタイルが剥がれていて、土がむき出しのところに、1つの木製の長い板が刺さっていた。
「え、なんで、、、、、。」
板には字が書いてあって、それを読んでつい
口にしてしまった。
どうして、あれがここにあるんだ。。。
一体ここはどこなんだ。
「…………。」
いきなりと声が出せなくなった。
なんで、、、こ、声がだせない。
エミに聞きたいのに、声だけが出せない。
驚きの連発で、カオルの思考は追いついて行けてなかった。
「別れの時間がきたんだね。」
声が出せなくて、口だけを開き驚いてるカオルに
エミは、悲しそうにそう言った。
別れ?俺はここにいるじゃないか。
ドクンッと次の瞬間、心臓の鼓動が1つ聞こえると
突然激しいめまいが襲ってきた。
カオルは言葉を発せないまま、ひざを地面につき
エミへと視線をおくる。
「最後にここに来れて良かったよ、私は信じて待ってるからね!カオルくん」
わけの分からないことを言うエミに、思考が追いつかないまま、助けをよんで手を差し伸べるが、エミはそれに掴まらず、カオルは無抵抗のまま、意識がとぎれ
不意にも倒れ込んでしまった。
どうしてなんだ。体が言うことをきかない。
まだエミには聞きたいことがあったのに
ここで終わりおわっちゃうのか。
この場所のことや、連れてきた本当の訳や理由。
なんにしても、やっぱり
1番は、”羽野カオル”と名前が書かれた、お墓があそこにあった頭が追いつかない。
聞けないで終われない。いや終わっちゃったのか。
そこで、カオルの思考も止まり、意識が消えた。