その5・末路
美樹を彩子から引き取ってから1年が経過した。
とある日のこと。
「マスター、あの珍獣来ていませんが?」ボーイが美樹が出勤していないとケンに報告。
ケンはボーイに気にしなくて良い、と返した。
プライドだけは高かった美樹は珍獣呼ばわりされたりコキ使われるのに我慢の限界に達していた。
そして無断で欠勤して「飛んだ」のだ。
だが何とか支払えていたカードのリボ払いとかの支払いが出来なくなっていくのだ。
翌月になればカードは止められ、スマホも回線が止められてしまう。
これではマズイと思った美樹は出会い系でパパ活をして凌ごうとしたが見た目でことごとく全滅。
さらに追い討ちを掛けるかのようにアパートの管理会社から家賃滞納で強制退去の通知が来てしまった。
役場に家賃補助の申請でも知っていればこうなる前に対処はできていたかもしれなかった。
だが時既に遅し、管理会社の社員が地裁の執行官を引き連れて強制退去の執行をしてしまった。
ホームレスと化した美樹はとりあえずホームレス達が居そうな場所に移動する。
だがホームレスにはホームレスのシキタリというか流儀みたいなものが存在していてソレを知らない美樹はその場所から摘まみ出されてしまう。
行く宛もなく亡霊のように彷徨う美樹。
当然空腹である。
ショッピングモールの食料品売場の惣菜コーナーで売っていたおにぎりを手に取るとソレを懐の中に入れてしまった。
たまたまその様子を見ていた私服警官が後を追い、会計せずに出ようとした所を捕まえた。
見事な窃盗であり、私服警官が呼んだパトカーに乗せられて警察署へ連行されてしまったのである。