その3・裏方のハリ姫
初陣から半年が経過した。
彩子の不安が的中し、美樹には予約が全く入らなくなった。酷いアトピー肌やサービスの下手さが災いしてしまいリピートはおろか爆サイに書き込まれてしまい、それを見たユーザーが避けてしまう有り様であった。
指名が取れない美樹はいつ切られるか判らない状態に陥り「みるく」や「舞子」のような予約でギッシリな子や固定客がついている子を憎むようになってきた。
彩子は知り合いがやっている「脱がなくて良い」ジャンルのピンクサロンに移籍させようと美樹に話をする事にした。
事務所代わりの部屋には彩子と最古参のコンパニオンが待っていたのである。
開口一番、最古参のコンパニオンは美樹に「残念だけど、指名が取れない以上ウチにはこれ以降は置いておけません。」と解雇を告げた。
美樹は覚悟はしていたがいきなり解雇通告は、と2人に反論してしまう。
「まだ話に続きがあります。指名が取れない理由としてそのアトピー肌がネックになっています。そこでママの知り合いがやっているピンサロで良ければ受け入れる用意はあるそうなのでどうかと。店内が暗い上に脱がなくても良いのでそのアトピー肌がネックになる事はウチよりかは低いと思いますが。」最古参のコンパニオンは美樹に店内が暗い上に脱ぐ必要の無いピンサロならやっていける可能性がある、と告げる。
指名が取れなくて戦力外通告を受けてしまった美樹は泣く泣くそのピンクサロンに移籍する事にしたのだった。
翌日、美樹は彩子の知り合いが経営しているピンクサロンの面接を受けた。
彩子の現役時代に雑用係として働いていたケンと言う中年の男が面接の対応をした。
ケンは美樹を見るなり少し考え込んでしまったようだ。美樹の容姿で使えるかどうか疑問に思ってしまったようだった。
しかし先輩の頼みである以上、下手に断ると後が怖いらしく美樹をまず雑用で使う事にした。
ケンは彩子に「姐さんの頼みじゃなかったら採用しませんでした」と愚痴を言ってしまう。
ケンの店「ピンクラボ」はそこそこの人気店で週末になれば店内は繁盛している。
「Empress」の「みるく」や「舞子」のような半月先まで予約で一杯な子は流石に居ないが、看板娘は居るようだ。
美樹は下働きとして店内の清掃やグラス類の洗浄、店内で提供される飲料や酒類を用意するなどの裏方の作業をボーイ達と共に行う事になった。
「先輩、あのハリセンボンみたいな面したのが新入りですか?」「どうやらEmpressに居たけど指名取れなくてクビになったみたいだ。」ボーイ達は美樹の事をハリセンボン呼ばわりしていたようだ。
流石にダイレクトにハリセンボン呼ばわりは可哀想なのか「ハリ姫」と愛称を付けてしまうボーイ達。ある意味残酷な様な気がするが格安デリヘルをクビになった美樹には容赦無しのようだ。
「ハリ姫、あそこのテーブル片付けてこい。」ボーイが美樹に客が帰った後のテーブルの後片付けを指示する。
それが終わると「ハリ姫、次はそこからお絞り出してお盆の上に載せとけ、お盆はサロ嬢が持っていくから載せとくだけで良いぞ」とあれこれ下働きをさせられていく美樹。
簡単なフードを調理しているスタッフからも「ハリ姫、これをあのテーブルに置いてくれ。」と出来上がった軽食をカウンターテーブルに置くように指示する。
テーブルの後片付け以外は店内に入れない美樹。
実はケンからの指示のようでとても客の前に姿を出せる容姿ではないと判断されてしまったので裏方に専念させるようだった。