弐
壱の続き
ただ、歩いてただけ。
川の近くにある、歩道を。ただただ、何も考えずに歩いてただけなんだ。
なのに、気づいたら、赤ん坊になってる。しかも、前世の記憶持ち。事故った記憶も、通り魔に遭遇した記憶も、倒れた記憶も、ない。
どういうコトですかぁ?
ーーー
前世の記憶持ちだから、赤ちゃんの役を演じるのって、大変ね。ミルク、飲まないといけない。唯一の栄養源。ゲップしないと、吐いちゃう。おしめも、されるがまま。慣れた手つき。
使用人?侍女?みたいな人や、母親っぽい女性が会話するのを黙って聞いてたら、どうやら、自分はこの家の長女。爵位持ち。結構なご身分。
長男は、部屋に引きこもり。ヒキニートですって。庭を駆け回って、つまずいて、すっ転んじゃって。大泣き。転ぶのって、痛いよね。治癒魔法かけて、治して、なだめて、寝かしつけて。その翌日、性格も言動も変わっちゃったらしい。要は、すっ転んだから、前世を思い出したってやつ?性格も言動も変わってしまったか。、親からも、使用人?侍女?からも、腫れ物扱い。薄気味悪いんだってさ。赤ちゃんからで良かった。長男みたく、途中で、性格も言動も変わってしまったら。兄妹揃って、捨てられちゃう。
長男は、勇者?英雄?パターンかな?もし、チートな勇者だとしたら、同時に魔王復活だね。魔王と勇者は、どちらか一方が現れたら、どちらか一方が復活または誕生する因縁の間柄。英雄もしかり。チートでなくても、家を継ぐ気はない。男の子だもの。冒険者か英雄にでもなって、王族に関わって、貴族に囲われて。頭お花畑な優しさで、女の子だけ助けて、ハーレムの出来上がり。
キモい。絶対、関わりたくない。
母親は、病弱な婦人。心臓辺りに、黒っぽい靄が漂ってる。心臓病じゃなくて、心の病みたい。未だ会ってない父親は、ワーカホリックっぽい。女性にモテモテで愛人がいるってさ。あと、魔法も使えるみたい。チートな魔法を使える人って、大概うっかり屋さん。いきなり、オリジナルの魔法を作るんじゃ面白くない。神童扱いされたら、自由度が減る。基本をしっかり学ばないとね。
生後0ヶ月だと、だいだい、空腹の時だけ泣く。それ以外は、寝る。生後1ヶ月だと、手足がバタバタ動かせる。で、声が聞こえると向いちゃうし見ちゃう。好奇心の芽生え、ね。今は、あ行しか喋れない。だとすると、生後2ヶ月目ってコトか。
長男との年齢差がどれぐらいかなぁ。その長男のコトで、母親の心に暗い靄が出来た?それとも、他にも原因がある?
自分の事、良く知りたい。ゲーム用語とか分からないけど、確か何かあったはず。サポ?。。。違うなぁ、何だっけ?あ。ステータスだ!
目をつぶって、頭の中で、思い描いてみよう。目を開けてみたら、目の前に出て来たには薄くて透明な板。そこに書かれてあるのは、名前と生い立ちと色々。スキル、発見。魔法項目もある。
これ、あたしのか!?ちょ、多くない?
名前:月宮 紗々(つきみや さしゃ)
様態:生後2ヶ月目 双子として、生まれる。
生まれ:ローズ国
住まい:ダリア国
両親(過去):ローズ国国王、王妃
両親(現在):月宮 正一、月宮 紗絵
長男(月宮豪)は、転生者としての記憶を思い出した為、月宮の血族と認識しない。
転生者として、生きますか?はい・いいえ
ローズ国では、双子は悪しきモノとされる。ダリア国月宮家の伯爵夫人は、長女を死産。ローズ国の王妃が生んだ双子の片割れは、王妃の命令で乳母に託す。乳母(現在の様態:病死)は、ダリア国月宮正一(過去の様態:平民。現在の様態:伯爵)の遊び相手。自分との子供だから引き取って欲しいと押し付ける。月宮正一は、紗絵と結婚して貴族になれた後、紗々が死産した事実を有耶無耶にしたく、紗絵の実子と届けを出す。死産した子供は、庭の一角に埋葬。
現状:月宮正一は内縁の妻の四宮姓を名乗っている。
乙女ゲーム、決定っ。あたしは悪役令嬢で、内縁の子がヒロインかっ?!そして、実は王族。自由度が減る。パスだ、パス。
誤字脱字に、気をつけます。