初依頼2
ギルドへと向かっている途中、街行く人のほぼ全員に自分をジロジロと見られた。
いや、正確には僕の上に浮かんでいる薬草の山だが。
どうやら、僕が取ってきた薬草の量は非常識だったらしい。まぁ、確かにこの量はな。
そうだな…見えなくなれば問題ないか?
結界に周りから見えなくなれ!と、念じたら完全に見えなくなった。そしたらまた周りがざわついた。
何なんだよ。全く訳が分からん。釈然としないまま僕はギルドへと向かった。
ギルドについた僕はそのまま受付まで向かう。リアリスは僕に気づいたのか笑顔で迎えてくれる。
そうだな。折角だし突然見せて驚かせるか。
「薬草を持ってきました。鑑定をお願いします。」
「分かりました。それで、薬草はどこに持っているんですか?」
薬草を持っていないリーバァを見てリアリスは不思議そうにしている。
よし、今だ!指をパチンと弾いて結界の隠蔽を解く。突然現れた薬草の山にリアリスは口を大きく開いて驚いていた。
ついでに、他の冒険者達も。驚かせるのは成功だな。
「どうですか?結構頑張ったんですよ。」
「………………………」
「あの?リアリスさん?」
「はっ!す、凄いですね!これだけの量を一度に取ってくる冒険者は初めて見ましたよ。とりあえず薬草を…そうですね、奥の部屋までそのまま持ってきてくれますか?」
「あ、分かりました。」
僕はギルドの奥にある鑑定部屋へと案内され、そこで採集した薬草を提出した。
そのあとは鑑定に時間がかかるとかでギルド内で待つことになった。幾らになるか想像しながら待っていると
「リーバァさん!すぐにギルド長の部屋まで来てください!」
呼び出しされた。
何か悪いことしただろうか。心当たりがないんだが。
案内されるままにギルド長の部屋に行くと、そこでは40代に見える筋骨隆々の男が椅子に座って待っていた。
「よく来たねリーバァ君。私はこの街ライナスのギルド長をしているヴァルガだ。ちょっと君に聞きたいことがあって呼び出しさせてもらったよ。」
この街の名前ってライナスだったのか。初めて知った。
「聞きたいこととは何ですか?」
「君が今回大量に持ち込んできた薬草なのだがね」
薬草?薬草がどうかしたのか?
「その全てが浄化され、更に聖属性が付与されて聖なる霊薬草になっていたんだよ。」
「あ、そうですか。」
「あ、そうですかって君ね!これがどれだけのことか分かってるのかね!」
いや、分かんねぇから困ってるんだが…
「えっと…僕が持ってきた薬草が聖なる霊薬草になっていると何があるんですか?」
「まさか本当に分からないのか?」
「そうですけど、というか聖なる霊薬草なんて初めて聞きましたよ。もしかして依頼が未達成になるとか?」
「いや、依頼は達成という形になる。」
じゃあ、何なんだ。依頼達成なら早く金だけ寄越してくんないかな。
「いいか、聖なる霊薬草はな、瀕死の人間を完全に回復することができるというエリクサーや全ての状態異常を治すことができる万能ポーションを作ることができる代物なんだぞ!しかも、聖なる霊薬草を手に入れるには高品質以上の薬草を上級神官の浄化スキルで完全に浄化し、その後聖属性付与を行う必要があるんだ。」
ダメだ。イマイチどれくらい凄いのか分からん。取ってきた薬草が聖なる霊薬草に変化していたのは神聖結界を使って薬草を取ったからそうなったのか?
まぁ、今はそんなことよりも早く金を手に入れねば
「へぇー凄いですね。それで僕はいつ金を貰えるんですか?」
「金の話をしている場合か!」
「いや、今金が何も無いので早く金を下さい。」
「その前にだ!どうやってこれを手に入れたのか説明してもらおうか。」
「街の外の森で手に入れました。」
「そんなわけあるか!」
「いや、本当にそうなんですって。」
「何?」
ヴァルガはリーバァに疑うような視線を向けてくる。
全然信じてくれねぇー。なんかめんどくさくなってきたな…
「何か特殊なスキルを使用していたのでは?その結果ただの薬草が聖なる霊薬草に変化した可能性があると思います。」
今までずっと黙っていた他の職員がそう指摘する
「そうだな、お前どうやって薬草を採集したんだ?一から細かく説明しろ。」
説明しないと話が長くなりそうだったので、採集していた間のことを全て話した。
「信じられん。固有スキルをそんな風に。」
「あのー、もう全部話したので金貰って帰っていいですか?」
「そうだな。リーバァ君、最後に君のステータスを鑑定させてはくれないか?」
「ギルド長!」
なぜ僕のステータスを見たがるんだ?
「もしかしたら君のスキルは特殊かもしれない。その結果、今回のことが起きたのかギルド長として確認しておきたいんだ。」
まぁ、そういうことならいいのか?ステータスなんて見せても今のところ困るようなことはないしな。
「どうしても嫌というなら断念するが」
「いや、構いませんよ。」
「本当か!」
「はい。」
僕がそう答えるとギルド長は机の中をあさり、水晶のようなものを取り出し、リーバァに向けて差し出してくる。
「この魔道具の上に手を置いてくれ。この魔道具は手をかざした対象者を自動的に鑑定し、周囲の人間に見えるようにすることができるんだよ。」
言われた通りに手をかざすと僕のステータスが現れた。
ステータス
名 リーバァ
レベル6
ジョブ 結界師
体力473/473
魔力158/158
物攻158
魔攻158
耐物158
耐魔158
知力158
素早さ158
スキル
・神聖結界lv4(固有スキル)
・上級結界術lv1
・並列思考lv1
・魔力操作lv4
・地図化lv4
・空間認識lv4
・逃走lv2
補正
・全ステータス補正小(+5%)
・結界系スキル習得熟練速度補正特大
・自己強化結界(身体能力を2倍)
何だこれは…知らないうちにレベルが上がってるぞ。しかも知らないうちに自己強化結界なんていうのが発動してる。
それにスキルが変化し過ぎて何がどうなってるか分からん。
「一体どうなっているんだ…このレベルでこのステータス。君は一体…」
どうするんだよ…余計に帰るのが遅くなりそうじゃないか。
その後、ギルド長の質問責めにあい、終わる頃にはすっかり日が暮れてしまった。
ギルド長が長時間拘束したことに対するお詫びだとかでギルドが推薦している宿を食費込みで3日分支払うと言わなければ暴れるところだった。
依頼達成料や聖なる霊薬草の値段が大きくなるからまた明日来てくれと言われたのでそのまま宿に向かった。
宿につくと美味しそうな匂いがしたのでチェックインしてすぐに食堂へ行き、いつも食べる量より多く注文した。
これでギルド長が少しでも苦しめば嬉しいな。
部屋に戻ってベッドに腰かけた僕は今日のことを思い返していた。
神聖結界を使ってみたが一体どこまでできるのか全く想像がつかない。
望めば無意識であろうと勝手に対応し、身体能力すらも強化できる。
明日からはこのスキルの使い道を探って行こう。
思考を止めた僕はベッドの中に潜り込んだ。今日は沢山のことが同時に起こって疲れていたのか目を閉じるのとほとんど同時に眠ってしまった。