表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/35

初依頼

 ジョブ登録が終わり晴れて冒険者となった僕は早速依頼を一つ受けてみることにした。

 というかそもそも一文無しなので受けないという選択肢はない。

 ただ、登録したばかりなので僕はG級。受けられる依頼は非常に少ない。


 ・薬草採集

 ・引越しの手伝い

 ・排水管のどぶさらい


 この3つだけだ。なんだこれ。ほとんど雑用じゃないか。

 ていうか討伐の依頼はないのかよ…なら、村にいた頃はよく山に遊びに行って薬草とかも知ってるし薬草採集をやるか。


 掲示板から依頼書を引き剥がした僕は受付に持っていく。はじめての依頼ってなんかワクワクするな。


「この依頼を受けます。」

「薬草採集ですね。それでは気をつけていってらっしゃい。」


 呆気ない…なんかもっとないのか。まぁ、そこまで気にする必要もないか。

 あ、一つ忘れてたことがあったな。


「お姉さんの名前を教えてください。」

「私の名前はリアリスです。これからよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。」


 これから世話になる人の名前だけは覚えておくか。さて、もうすることもないし森に行くか?いや、その前に


 グゥゥ〜


 治療院を飛び出してから何も食ってないから流石に腹が減ったな。

 何か食わないと身体が保たないぞ。でも、金がないしな。仕方ない教会に行くか。


 教会


 教会の前では孤児やホームレスのために毎日昼に一回炊き出しが行われていた。

 最低限の栄養を得るために作られているからお世辞にも美味しいとは言えないが食えるだけマシだろう。

 食事を食べている最中、教会の前で神父たちが慌ただしく騒いでいるのが気になったが僕には関係ないことだ。

 そこまで気にする必要もないか。


 美味しくない食事を無心で食べ、腹が膨れた僕は今度こそ街の外の森へ向かた。


 街の外の森


 街の門からしばらく歩いた距離にある森の中では多くの植物が生い茂り、生えた沢山の木が太陽の光を遮り全体的に薄暗くなっていた。

 森についた僕は薬草採集、ではなくスキルの確認を始めた。


 固有スキルの神聖結界。名前からしてなんか凄い結界を張れるんだろう。

 スキルの効果は分からないが。


 そう考えていた僕の前に神聖結界の文字とスキルの効果が表示された。


 ・神聖結界


 ・自身を中心とし半径百メートル圏内に聖属性を付与した結界を張る。聖属性が付与されているため結界内の魔物や魔物を生み出す魔素を浄化する。浄化したものに応じて使用者に経験値が還元され魔物を浄化した場合魔物討伐の経験値も加わる。基本的に1分間で魔力を1消費するが、結界に制限を掛けたり、異なる効果を加える場合消費魔力が変動する。結界系スキルの習得・熟練速度の大幅な上昇。


 なるほど、これはなかなかに便利なスキルじゃないか。これなら魔物を殺すのに使えそうだ。

 ちなみにどれくらいの魔物なら結界で殺せるんだ?


 ・現在D〜F級の魔物は浄化可能(階級が上がる毎に浄化に時間がかかります)

 ・現在C級以上の魔物は未知数


 凄まじいな…もし、このスキルがあの時にあったらな…いや、もしなんて考えるのはやめよう。

 過去は変わらない。それよりもまずはスキルを発動してみるか。


 スキルの使い方は分からないはずなのに僕は自身の身体の一部かのように自然とスキルを発動していた。


「神聖結界」


 スキル発動と同時に自分を中心として周囲に結界が張られたのが感覚的に分かった。


 さっきの説明文には様々な効果を付与できるとあったが、この結界には他にどんな効果を付与できるんだ?

 薬草を探す効果も付与できるのか?それだったら地形も一緒に表示できたらいいんだがな。


 どこまでも自分に都合のいいスキルの使い方を考えていた僕の頭に、付近の薬草の分布が平面状ではなく立体的に、形まで正確に浮かんできた。


 本当にできた。しかも形まで分かるとか固有スキルってこんな便利なんだな。

 そりゃ誰もが神の恩恵だと言って崇めるわけだ。それだったら薬草を結界で囲んで運べるんじゃないか?


 脳内に浮かんでいるマップに従って自分から離れた場所にある薬草を結界で囲んで自分のところまで運ぶ。

 この動作は先ほどよりも難しかったのか薬草を上手く囲むことができなかったり、運ぶ途中で結界が解けてしまうことがあった。

 だが、徐々に上達していき一度成功したあとは一回も失敗せず、更に複数同時に採集することもできるようになった。


 脳内上のマップから薬草があらかたなくなるまで取り尽くした僕の周りには薬草の山が積み上がっていた。

 ちなみに他のものを指定してもできるのか確認するため、食べられるものを指定したが駄目だった。

 おそらく範囲が広すぎるか、僕の知識にないものは指定しても無駄なんだろう。


 それにしても、ついつい取り過ぎてしまった。手で持って帰ろうにもこの量じゃなぁ…仕方ない。

 ここはまた神聖結界でどうにかしよう。全部を纏めて囲めば問題ないだろ。

 今日は依頼があっという間に終わった上に一気に稼げたな。

 しかも魔力じたいがほとんど減ってない。


 そもそもが半径百メートルで1分間に1しか消費しない結界を薬草を囲むために使ったのだ。

 消費魔力などたかが知れているというもの。結界に薬草の探索と地形図を加えたが1分間の魔力消費量は3にすら届かなかった。

 そのため時間経過による魔力回復でほとんどが補われていた。


 流石に多すぎる気もするがこれなら一気にランクアップもあるんじゃないか?

 それにこれだけあれば充分な金も手に入っていい宿にも泊まれるだろう。早く帰ろ。


 結界で囲んだ薬草を頭の上に浮かせながらギルドに向かって急ぎ足で僕は歩き出した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ