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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

願わくば、次は、神様を殺せる世界に生まれますように

作者: あめふる

息抜きに書いてみた小説です。短いですが、投稿してみる事にしました。

バッドエンドになりますので、バッドエンドが嫌いな方はお気をつけください。

 世界から、人が消えるという事件。

 発端は、10年前。生放送のテレビに映っていた人が、突然消えた。最初はトリックだと思われた現象だが、そこから次々に人々が消え、人類という栄華は、終わりを告げた。

 ボクが住んでいる町は、人の消滅が少なかった。しかしながら、必ず消えないという訳ではない。昨日も、一人暮らしのおじいさんが消えてしまったし、一昨日は近所の7歳の少年が消えてしまい、少年の親は、今日、首を吊って自殺した。

 消える原因は、分からない。まだ、人が多いうちに、頭の良い科学者達が、仮説などをたてて研究したが、全く分からなかった。その科学者達も、今となってはもういない。


「悠樹君。私、探検隊に志願したの」


 そんな、終わりを迎えた世界で、同級生の少女がそう言った。彼女は、ボクの幼馴染。ボクにとって、大切で、特別な存在。ショートカットで、目はくりくりとしていて、可愛らしい。昔はボクより背が高かったが、今ではボクの方が高くて、身体の凹凸がハッキリとし、女の子っぽくなった。

 ちなみに悠樹とは、ボクの名前だ。


「ダメだ、そんなの!危ないよ!」


 この町の外は、危険だ。今まで、何人も、町の外へ行ったきり、帰ってこなかった。だから、ボク達は、この町から出ないようにしている。でも、たまに、閉じこもることに我慢できなくなった人が、外部との接触や、物資の調達を目的とし、町の外を探検しにいく。


「大丈夫。絶対に帰ってくるから。約束ね」


 そう言って、彼女はボクの小指を、自らの小指と結び、指切りをする。

 その小指には、ボクが少し前に上げた、指輪がつけられている。それは、指輪と呼べるような、大した物ではない。ダイヤモンドの代わりに、ちょっとしたガラス細工が付けられているだけの、玩具のような指輪だ。たまたま、ショッピングモールの中の、廃れたアクセサリショップで見つけたので、彼女にあげた。それを喜んで、小指につけてくれている。

 この時、ボクは何故、一緒に行くと言わなかったのだろう。コレが、彼女との最後の会話になり、彼女は二度と、帰ってこなかった。


 数年後、ボクは身支度を整え、早朝に家を出た。大きな鞄の中には、水と食料。それから、地図やサイバイバル道具が入っている。

 少し大人になったボクは、町を出た。歩いて、町から町を転々と回り、人を探して歩く。そして、見つけた人には、ボクの町の存在を教える。少しでも、多くの人を、町へと集めるためだ。でも、人を探すのは苦労する。中にはあまり、友好的でない人もいて、殺されかけた事もあった。

 それでも、町の外に、まだこれだけの人がいる事に、驚きを隠せない。世界は、まだ終わっていなかった。

 町を出てから、1ヶ月程が経過した。ボクは、そろそろ町へ帰る事にした。

 その途中で、大きなミスを犯した。道は、老朽化が進み、荒れ放題で、注意して進むべきだった。それを怠ったことにより、足場が崩れ、ボクは崖を滑り落ちるハメになってしまう。

 怪我は、大したことはない。ただ、リュックが破れて、荷物を落としてしまった。落ちた荷物を拾っても、リュックが破れていては、運びようがない。物資を失うのは痛いが、仕方なく、諦める事にした。

 道に戻るのは難しそうなので、獣道を歩くことにした。荷物を失ったことにより、身体は軽い。

 道をしばらく進むと、リュックが落ちていた。多くは運べないが、十分な大きさのリュック。ボロいが、まだ使えるかもしれない。そう期待をこめたが、ダメだ。腐食していて、簡単に破れてしまう。

 落胆するボクだが、ふと、そのリュックに、見覚えがある事に気がつく。それは、彼女が……数年前に、町を出て行った切り、帰ってこなかった、彼女が使っていたリュックと同じだった。あの日も彼女は、このリュックを背負って、町を出て行っている。

 ボクは、狂ったように、その周辺を探索した。雨が降ってきてもおかまいなしに、ずぶぬれになり、走り回る。

 すると、地面に横たわる、一体の骸骨を発見する事ができた。ボロボロだが、衣服を着たまま、そこに、静かに横たわる骸骨。初めて見る骸骨に、ボクは恐る恐る手を伸ばす。

 その右手の小指には、見覚えのある、ガラス細工の指輪がつけられていた。

 ボクは、涙を流し、叫んだ。声が枯れるまで、叫び、泣く。

 こんな、残酷な事があっていいのか。こんな、理不尽な事があっていいのか。あんまりだ。彼女は、消えたのではなく、怪我をして、ここで野垂れ死んでしまったのだ。ただ、消えただけなら、まだ我慢できる。しかし、これはあんまりだ。酷すぎる。

 神様。どうして、ボク達にこんな仕打ちをするのですか。彼女が、何をしたと言うのですか。答えてください。

 やがてボクは声も出なくなり、気づけば雨があがっていた。

 ふと気がつくと、ここは、元いた場所ではない。真っ白な、世界だ。

 ああ、神様。ボクの番なのですね。ボクが、世界から消えて、どこかへ連れられていく。


 ボクは。ボクや皆を、こんな目に合わせた神様を、絶対に許さない。


 願わくば、次は、神様を殺せる世界に生まれますように──。


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