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時刻は午後20時過ぎ…
夕食も食べ終え、遊び疲れてベットの上でゆったりとしている
アナさんはお風呂の準備をしに浴室へ行き、
メリダさんは父、フィリアスさんが帰宅するらしく
出迎えに行っている
(少し時間があるから…ノアルさんを呼べるかな…)
部屋の外に意識を寄せ、メイドや執事達がいないを注意し
ノアルを呼び寄せる為に唱える
「しょうかん、まほぅ…ノアウ」
床にパアアァと大きな魔法陣が浮き出て、
水の精霊達が待ってましたとばかりに勢いよく溢れる
すると出会った当初の姿のノアルが様子を伺いながら出てきた
「ふぅ~…よかった~呼んでくれて」
(ちょっと遅くなってしまったけど、ごめんなさい)
「ありがとう~!嬉しい~へへへ!」
ノアルはニコニコと近づき、私を抱きかかえほっぺをムチムチとさわる
周りの精霊達も髪の毛を触ったりと非常に忙しない…
(騒がしいと人が来ちゃいますよ?)
「大丈夫だよ~、見られても精霊王って言えばわかると思うし~」
だったら何で昼間に光の速さで消えたんだ…とは言えず、精霊王とかそういう問題じゃ無いんだけどなと思いつつノアルの波長が合うのか、昼間にあれだけ寝たのにまた眠りそうになり瞼が落ちてくる
「あ、ダメダメっ!寝ちゃ、ちょ、ナナリー!」
瞼が落ちて眠りそうな私をノアルは揺らし起こし、精霊達も慌てふためく中、急にバァァン!!と扉が開いた
「愛しのナナリー!!今、パパが帰ったよ!!
…………え?」
フィリアスさんが勢いよく開けた先には、抱きかかえられている娘と娘を抱く見知らぬ者と慌てふためく多くの水の精霊達というカオスな空間であった
「まあ!!!精霊様がこんなに!?」
「あ、えっと…どうも~…ハハハ」
(帰って来ちゃったのねー…いつもより早いわー…)
「一体こんなにどうしたんですか!?って、ナナリーお嬢様!?」
フィリアスさんの後ろから着いてきたメリダさんとアナさんはまだ状況が分かっていないフィリアスさんよりも先に部屋に入り、驚きを隠せないでいた
アナさんが私に駆け寄り、ノアルにアタフタしながら返してと言わんばかりの顔をしている
「え、っと…あなたは、どなたでしょうか?」
やっと正気を取り戻したフィリアスさんがノアルに近づき、警戒しながら尋ねる
ノアルは精霊達に相談し、苦笑いしながら私を見てどうしよう…と呟いた
(さっきは大丈夫ーって言ってましたよね?)
(見つからないつもりだったんだよ〜…この際言ってもいいけど…うーん…後で怒られる~…)
誰に怒られるのか知らないが、頑張れと心の中で励ましノアルは諦めたかのように溜息を吐き、キリッと表情を切り替えてフィリアスさん達へ向き直った
「我が名、ノアル・リト・リスメニア…この世界における水の精霊王である」
「なっ!!!精霊王様!!?」
「な、何故此処に…」
突然いつもの様子と切り替わったノアルが精霊王と名乗るとフィリアスさん達は跪き、突然の事に困惑していた
ノアルは跪いているアナさんに私を託すと周りを精霊達を整列させ、ふわりと微笑んだ
「我はナナリー・ルーシェ・ラスターナと契約を交わし、水の加護を与えている」
「契約?!!?!水の加護までもですか!?」
頭がついて行かんとばかりに跪きながらフラフラとなるフィリアスさんに対し、アナさんとメリダさんは凄く嬉しそうにしていた
ノアルは私の誕生など詳しくは話さなかったが、契約を交わした事で魔族に狙われるとか生活に支障が出る事はない事、何も献上しなくても契約出来たのは私自身に何か不思議な力があるという事を話していた
「なんと…誠に嬉しゅうございますわ!アナさん、明日はパーティを開かなくてわ!」
「左様でございます奥様!!旦那様も、ほら!しっかりなさって下さい!」
「む、むむ、娘はまだ!!やらん!絶対に!なのにもう嫁に出てしまったみたいだ!!!」
フィリアスさんに対し何言ってんだこの人…と言わんばかりに見てしまったが、とりあえず喜ばしい事には変わりないようだ
先程も言っていたがこの世界では精霊と契約する時は宝石を献上しなくてはいけないが、精霊と波長が合う又はその契約者のマナが優れていると自然に寄ってくるらしい
因みにマナというのは体に秘めている力で、これが無いと魔法が使えなかったり学校受験や就職、仕事に支障が出るらしい
常にあるものではなく、定期的に回復薬を飲んだり寝たら回復するらしいが、ゲームでいうMPとかの枠だと思う
「精霊王様、ナナリーに加護を下さり誠に有難うごさまいます…」
「我もナナリーにマナを分け与えられてる身、これからも彼女を大切に育てなさい」
アナさんとメリダさんが話していたが、精霊の加護を受けるというのは非常に稀であり死ぬまで恩恵を受け、家族や国までもが安泰になる
今まで加護を受けて来れたのは王位継承者達や竜族が一般的であり、人間でしかもこんな幼子は例外の例外であるらしい
(…それってやばいんじゃないのー……えー…)
「アナ、この事は絶対に外部に話してはならない。他のメイド達や執事達にも話すな、わかったな」
「かしこまりました」
「もしバレていしまったら、ナナリーは…」
〈強制的に王族へ引渡さなくてはなりません…加護を受けた者はみなそうでした。きっと国の聖女として扱われるでしょう〉
メリダさんは顔を青ざめ、私に近寄って大丈夫よ…と優しく撫でてくれる
ノアルはフィリアスさんと話し、水の精霊を1人だけ常に傍に居させると約束していた