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「…へ?」
(うわ~~ん!ナナリー元気だった~?!)
ペチョリと私の頬に擦り付き、小さな身体で
飛び跳ねている目の前のイルカはどうやらノアルらしい
突然の事に驚いているとノアルが頭の上に乗った
(精霊を傍に居させてたんだけど全然呼ばないし
どうしようかと悩んでたんだよ~?
1年間ずーーーーっと待ってたんだから!)
頭をペちペちと叩き、頬を膨らませて
むくれるノアルに心で呼びかける
(そんな事言われても…どうやればいいかしっかりと
教えてくれなかったじゃないですか…)
「名前呼んでって言ったよ~?」
(召喚魔法とは聞いてないですよ…)
「む~~…」
むくれた顔で此方を覗きこみ、ノアルが頭からベッドへ降りた
するとノアルが目の前に水色の魔法陣を出し、
そこから手のひらサイズの小さな子供が飛び出してくる
(おおお…すごーい!!)
「これが精霊だよ、ほらご挨拶して~」
ポワンポワンポワンとどんどん出てくる精霊に
目を開き、いつの間にか部屋中が精霊だらけになっていた
精霊達は喋れるのか、ザワザワとした音が響き渡る
「整列!」
パチンとノアルが音を鳴らせば、サッと私の前に整列して
1人の精霊が前に出てきた
〈我ら、ノアル様に使えし精霊なり!
貴女が主君と契約されしお方、ナナリー様ですね!
お逢い出来て光栄です!〉
(契約…?てなんの事かわからないけど
ナナリーなのは確かです……………ノアルさん?)
契約とは何か?とノアルを見るとバツが悪そうに目を逸らされてしまった
これは裏があると悟った私は、ノアルに近づきじっと見つめる
(なんの事でしょうか、ノアルさん?)
「べ、別に~…記憶が戻ったらするんだから
今しちゃってもいいかなって~…」
〈ノアル様…まさか、合意ではないんですか?!〉
まだザワザワと騒ぎ出す精霊にノアルは
そっぽを向き、口笛でも吹くんじゃないかって
くらいに唇を尖らせている
〈精霊との契約は両方の合意がないとダメなんですよ!〉
(全く聞いてませんが…)
「だってナナリーは元々仲間なんだなら契約って言っても、
以前の契約を元に戻しただけだし~……ダメ?」
〈〈〈ダメです!!!〉〉〉
小さな精霊に叱られる精霊王にニヤニヤしてしまう
どうすると悩んでいる精霊とノアルだが
私は別に構いませんと伝えた
(私は大丈夫ですけど、問題なの?)
〈うーん…貴女がいいなら、契約の解除は
しなくていいですけど…そもそも精霊王との契約は
簡単に出来る事じゃないんです…〉
事によると、精霊王との契約は必要な素材を集め
合成しSSRの宝石を献上しなくてはならないらしい
そんなこと何にも聞いてないよノアルさん
素材だけでもLv50の地下へ行くというヘビー級の
クエストを攻略しなくてはならないし
ボスも倒さなくてはいけないらしい
〈それを簡単にやっちゃダメですよノアルさん!〉
「ナナリーは別かなって~…思ったんだもん」
〈確かにナナリー様は此方側ですが、
今は元に戻らない限り村人と一緒です!!〉
(此方側とか今は戻らないとか…
やっぱり生まれ変わってもまだ違うんですね)
そう言うと精霊達は此方に向き、うるうると
瞳に涙を貯めだした
1人の精霊が私の手を取り、すりすりと擦り寄る
〈ナナリー様は今は、準備中なのです…
早く素晴らしいお姿になって我々にマナを
分け与えて下さいませ…
出ないと自然界が危ぶまれております〉
「コラ、ナナリーはまだそれも知らないんだから!
それに勝手に触っちゃダメ~!!全く~!!
隙あらば触ろうとするんだから!!」
ノアルが私と精霊を引き離し、ムスッとしている
精霊達は残念そうにして少し笑っていた
どうやらこの姿からまた違う者になるらしいが
よくわからない…
今は気長に待つしかないみたい
〈とりあえず、ノアル様は以後気をつけて下さいね〉
「ナナリーとしか契約ないも~ん…」
〈またそんなこと言って!人魚族に怒られますよ!〉
喧嘩をする精霊達とノアルだが、足音が聞こえ
パタリとやめた
すると瞬時に大きな魔法陣が現れ、一斉に入っていく
「ナナリー、明日また呼んでね?」
(ンなこと言われても…)
「用がなくても良いから~!お願い~!!」
〈ノアル様!もう行かなくては!!〉
(………じゃあ夜にでも)
そう言うとにぱっと笑顔になり、チュッと私の
頬に口付けをしてノアルは魔法陣へと入っていった
それと同時にドアが開き、アナさんとメリダさんが
部屋に入ってきた
「ナナリー様、昼食をお持ちしましたよ」
「今日も美味しそうね」
いい香りが漂う、今日は魚料理らしい
魚料理といえば鯛のカルパッチョが食べたい
こちらの魚の種類は分からないが、
鮭に似たものや太刀魚、マグロに味が
似たものもある
果物や米といったものもあるみたいだ
この家の腕の良い調理師はメリダさんの実家から
派遣されているらしい
因みにメリダさんの実家は
『ヨハン・ネル・マスト』レストランという
超有名な高級レストランを経営
これだけではなく国の90%の飲食店を経営する
親会社であり、知らない人はいないらしい
ヨハンという名の人は私のお爺様にあたるらしく
今度の休みにいらっしゃると話していた
「よく食べますわ、ナナリー様は常に完食ですね」
「いっぱい動いてるからかしら?」
「ごっ、ちょうちゃま!」
ペロリと昼食を食べ終え、私は一眠りするべく
ベットに横にされた
ウトウトと瞼が落ちてくる感覚にとろけつつ、
ゆっくりと眠りへ落ちた