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暗い部屋

作者: 駒沢

1分で読めるショートショートです。

目が覚めると、枕元の時計は午前10時を指していた。


「あちゃー」


昨夜はかなり飲んだせいか、不覚にも寝坊してしまったらしい。

というか、昨夜の記憶がほとんどない。上司の悪口をサカナに同僚と飲んだところまでは覚えているのだが、その後の記憶が曖昧だ。よくまあ無事に帰れたものだと思う。


「酒もほどほどにしないとな」


と、声に出してつぶやく。


そういえば駅からフラフラと戻る途中で、うっかり芋虫を踏んづけたんだっけ。足元でいきなりブチュッと嫌な音がしたものだから、一瞬酔が吹き飛んだ。

靴底にべったりとついた、緑色の粘液。思い出しただけでも背筋に寒気が走る。


「もったいないけど、あの靴は処分しよう」


そのとき、おかしなことに気がついた。部屋の中が暗いのだ。午前10時だというのに、まったく光が入らない。


「雨でも降ってるのか?」


カーテンを開けるが、窓の向こうは暗いまま。


いや、よく見ると窓ガラスの向こう側に何かが貼りついている。

蛾だ。


翅を広げてべったりと貼りついた無数の蛾。何百か何千か。とにかく、窓一面にびっしりと蛾の大群が貼り付いている。しかも何匹も重なりあって、すきまひとつ見えない。

体長10cmはあろうかという蛾の大群が、わずかに触覚を動かしつつ、白っぽい複眼で一斉に私を見たように感じた。



あれから3時間。もう午後だというのに、相変わらず窓は暗いまま。家を出るには玄関のドアを開けなければいけないのだが……さて、どうしたものか。


というのも、ドアの覗き窓も暗いからだ。

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駒沢的怪異譚
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