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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
王都騒乱編
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閑話 —— コレット

私の名前はコレットと申します。

パルマス王国の栄えある二大公爵家のひとつ、エルヴェレスト家に仕えるメイドでございます。

私自身は平民の出ではありますが、私は殆どこのお屋敷から外出したことはありません。

というのも、私の母もその母も、そのまた母もずっとこのエルヴェレスト家に仕えていた使用人の一族だからです。

何でも、エルヴェレストの初代様からお仕えしているとのことで、私にとってエルヴェレスト公爵家というのは人生の全てと言っても過言ではないでしょう。

そんな私ですが、今代においては更に名誉な立場に預からさせていただいております。

というのも、私の母が現エルヴェレスト公爵家当主のお孫様、カタリナお嬢様の乳母を勤めていたからです。

つまり、私はメイドでありながらカタリナお嬢様の乳姉妹であるという、非常に光栄な立場であるということです。


そのカタリナお嬢様ですが、私にとっては大変憚られる話ではありますが、自慢の妹の様に感じております。

聡明で、頭の回転も早く、様々なことに興味をお持ちで、その知識欲には限りがありません。

この国の歴史や地理にも明るく、私などには分かりかねますが領の経済などにも精通しており、まさに将来を嘱望されている逸材であると自負しております。

幼い頃は私をお姉ちゃんと呼んで後ろを付いてきてくれる姿など、とてもとても愛らしく、将来どこかの殿方に嫁がれてしまわれるかと思うと、その殿方をお恨みしてしまうかもしれません。

おっと、つい本音が漏れました。

申し訳ございません。


そんなお嬢様ですが、ひとつだけ苦手なものがあります。

それは魔法です。

これに関してだけは、私は無力なのです。

いくら貴族の社会しか知らぬとはいえ、私は平民ですので魔法は使えないのです。

これ以外のことならば、炊事、洗濯、裁縫、掃除、または宮廷作法から護衛術まで、お嬢様のためにありとあらゆる技術を努力で習得してきた私ですが、平民である以上魔法は使えないのです。

お嬢様も努力は惜しまれない方なのですが、どうにも魔法だけは苦手らしく、王都でも高名と言われる家庭教師を何人も招聘しましたが、芳しく無いようでした。

嗚呼、可哀想なお嬢様! なぜ私は平民なのでしょう! 私が貴族であれば、お嬢様に魔法を教授して差し上げられるのに!

いや、それだとお嬢様の乳姉妹にはなれませんでしたね。

今の話は無しでお願いします。


そんな中、ギュンター様からある噂が齎されました。

あ、ギュンター様はカタリナお嬢様のお父上であるカダルファ様のご友人で、今はエルヴェレスト家の護衛をしてくださっている元冒険者の方です。

正直作法が成っていない方なので、あまりお嬢様に悪影響を与えないで欲しいのですが……まぁどんなお嬢様でもそれはそれで可愛らしいのですが。

そしてその噂とは、辺境の開拓村に現れた魔女の事でした。

その魔女とは、本来魔法を使う素養のない平民に魔法を教え、村にかつてない繁栄をもたらしているとのことでした。

なんと眉唾な……平民に魔法が使えるというのなら、私にも教えてほしいものです。

私がどれだけそれを願ったか、魔女ごときに分かりますか!


……ごめんなさい。

私が間違っておりました。

使えました、魔法。

一縷の望みを賭けて辺境に赴いたお嬢様が、その魔女……いえ、イルミナ様を招聘し、ご帰宅なされました。

イルミナ様はお嬢様の魔法の講師として招かれました。

あちらで何があったかは私どもには分かりませぬが、あれ程魔法を苦手としていたお嬢様が、嬉しそうに魔法を披露する姿は微笑ましいです。

ドヤ顔可愛いですね。

おっと、また心の声が漏れました。

そして、イルミナ様は私ども使用人に対しても魔法をご教授くださいました。

魔法……私にも使えたのですね。

イルミナ様の言葉を借りれば、魔法は誰にでも使える技術なのだそうです。

もちろん技量の高低はありますが、その素養がない人というのは数万人に一人いるかいないかという話で、基本万人に魔法は使えるそう。

ただ、各々得意とする魔法大系に違いがあるそうで、お嬢様が魔法を苦手としていたのは、一般的に魔法と呼ばれている古代語魔法の素養が低いかららしいのです。

お嬢様は珍しい魔法大系の素養をお持ちのようで、神聖魔法と暗黒魔法、そして空間魔法というレアな魔法大系の素養をお持ちだとか。

流石はお嬢様です。

ちなみに私は無難に古代語魔法と精霊魔法の素養があるそうです。

殆どの方は古代語魔法と精霊魔法の素養を持っているとか。


イルミナ様が魔法の講師役を務められることになり、一緒にお屋敷に住まわれることになったのですが、イルミナ様の近侍の女性がこれまた凄い方でした。

なんと竜人族だそうです。

竜人族は伝説の種族と言われていて、深い深い森の自分たちの集落から出てくることは殆どないと言われています。

彼女……カルナヴァル様はとても美しい方で……、え? 自分も従者でしかないから様は要らない?

様付けは恥ずかしいから、ふつうに呼んでください? え……え〜っと、では失礼してカルナヴァルさんと。

カルナヴァルさんはとても美しい方で、その上、家事スキルがとても高い方でした。

炊事、洗濯、裁縫、掃除、ありとあらゆる家事スキルで私を上回る能力をお持ちです。

私もお嬢様付きのメイドとして、家事スキルにはそこそこ自信を持っていたのですが、上には上がいます。

精進あるのみです。

あ、今度一緒に新しいお料理の研究をいたしませんか?

嬉しいです。

楽しみにしていますね。


イルミナ様にはもうお一方、お連れがいらっしゃいます。

シエラ様という名の、まだ五つくらいの女の子です。

妹様というわけではないようで、どういった繋がりなのかは分かりかねますね。

なんでイルミナ様をマスターと呼ぶのでしょうか?

ところで、シエラ様は幼い頃のお嬢様を思い出させますね。

そうそう、たまたまこんなところに昔のお嬢様のお召し物があるのですが……


「あの子ってさ、結構したたかだよね。」

「妾はおそらく一生コレットには勝てぬ。」


お嬢様方が何か仰っていますが、何も問題はありません。

嗚呼、お嬢様、イルミナ様、カルナヴァルさん、シエラ様、なんて素晴らしい職場なのでしょうここは!

本編でちらっとしか出てきてないコレットさん。

実はかなりイイ性格をしています。

まぁ彼女は美しいものを愛でるのが趣味なだけで一線を超えたりは決してしません。

……たぶん。

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