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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
王都騒乱編
80/159

66 迷宮核と自動人形

直径2メートルほどの半透明の柱に、少女が埋め込まれている。

ところどころ霞掛かって全体像は確認できないが、少なくとも生きているようには見えない。

まぁ、あの柱の素材が何なのかは不明だが、あんなもんに埋め込まれていたら普通生きているとは思えない。

しかし、これは……いや、そんなハズは。


「これは……いや、オレはアンタらには何もいえない。言ったらお嬢様を助けられない。」


さっきから強情な子だとは思ってたけど、どうやら何か抱えてるね、この子。

これはちょっと意思が固そうだねぇ。

こんな小さな子を拷問とかにかけるわけにもいかないし……参ったなぁ。


「な、何だこれは! メーヴィ! 何があった!」


と、そこへ知らない声が聞こえてくる。

声を方を向くと、知らない何者かが威圧的な雰囲気で高圧的に話してきた。


「何だ貴様らは。ここは貴様らの様なクソガキどもの来るところじゃねぇ。大体どうやってここまで来た!? この『制御室』はこの迷宮(ダンジョン)のリソースの殆どを使った門番(ゲートキーパー)が守っていたハズだ! さてはオマエか、メーヴィ! オマエがこいつらを引き入れたんだな! 大方あの前王の姫を助けてくれとでも頼む気だったんだろう! この迷宮(ダンジョン)の奥にまで来れるような猛者ならもしかしたらとでも思ったか? アテが外れたな! こんな年端もいかぬションベン臭えガキではな! ガーハッハッハッーッ……」

「うるさい。」


とりあえずぶん殴った。

かなり本気で【魔力刃】を纏って思いっきりぶん殴った。

とりあえずこの場で殺しても構わないくらいに力を込めてぶん殴った。

死んだところで蘇生してやるからと、とりあえず腹が立ったのでぶん殴った。


「死んだかの?」

「なんと、まだ息がありますよ。ああ、何やら魔導具が発動した様な反応がありましたから、身代わり系の魔導具か何かを持っていたのではないでしょうかね。」


突然現れて失礼なことを捲し立てた男は、わたしに殴り飛ばされ、ドームの天井にぶつかった後に数回バウンドして頭から地面に落ちてピクピクと痙攣していた。

うーん、かなりマジで殴ったんだけどなぁ。

いくら身代わり系の魔導具があってもよくまぁ生きていたもんだ。


「……あ、アンタ、スゲエな。そいつ……トクトーは魔族軍の諜報部の幹部なんだぜ……」

「トクトー? ああ、確かに禿げてるねこいつ。」

「名は体を表すじゃな。」

「いや、そう言うことじゃないんだけど……」


とりあえず痙攣して気絶してるハゲ魔族(トクトー)を拘束しておく。

そして改めてメーヴィ少年に事情を尋ねる。


「もう話してくれる?」

「ああ、トクトーがやられたんならオレが意地を張る理由はなくなった。というより、ねーちゃん達つえーんだな。門番(ゲートキーパー)倒したのも偶然じゃねーんだな!」

「最初からそう言ってるでしょ。」


いつのまにかあ「アンタ」から「ねーちゃん」になってるね。

どうやらわたしが貴族であることは一先ず置いておくらしい。


「まず、ここで何をしていたか聞こうか。あのハゲ魔族は『制御室』とか呼んでたけど。」

「ここはこの迷宮(ダンジョン)の機構を管理するトコだよ。といってもオレにもよくわかんねぇんだけどさ。」


ほほう! 迷宮(ダンジョン)の管理ですか。

これはまた、わたしの知らない技術ですな!


迷宮(ダンジョン)の構造のリノベーションとか、魔物の配置とかを意図的に弄ることができるんだ。せい……なんだっけ。」

「生体型迷宮(ダンジョン)?」

「そうそう、そのせいたいがた? 迷宮(ダンジョン)迷宮核(ダンジョンコア)に手を加えて制御できるようにしてるんだってさ。」


なんと、わたしが神界に行っていた数千年の間にそんな新技術が生み出されていたとは。

魔族の技術力、侮れない。


「まぁ、オレ達魔族が考案した技術じゃないんだけどね。なんでも何千年経ても生きてる魔導師が作ったとかってそこのトクトーが前に言ってた。


おっと、魔族の技術ではないのか。

それにしても、何千年も生きてる魔導師……ね。

さて、誰のことかな。


「で、その柱の娘が迷宮核(ダンジョンコア)ってことね。」

「流石だぜねーちゃん。これはヒトじゃないんだ。人形なんだぜ? なんでも長いことこの迷宮(ダンジョン)に居たらしくて、朽ちて動かなくなってたんだけど、魔力の……なんだっけ。」

「方向性?」

「そうそう、魔力の方向性がこの迷宮(ダンジョン)に馴染んでいたから迷宮(ダンジョン)がせいたいか、だっけ? した時にコアに変化したらしいんだ。」

「なるほど、そこでキミの出番か、【人形遣い】。」

「なんで知ってるんだよ。」


何でと問われれば、能力を覗き見したからだけど。

コアとなった人形を通して迷宮(ダンジョン)を弄っていたんだ。

この迷宮(ダンジョン)が持つ本来の階層のリソースを殆ど門番(ゲートキーパー)に注ぎ込んで、誰もこの制御室に近寄れない様にしていたんだね。

ところが、その誰も勝てるはずのない場違いな強さの門番(ゲートキーパー)を倒す者たち、つまりわたしたちがいたわけだ。

というか……この人形、さっきから気になっていたんだけど……。


「まさか、ルナリア?」


その時、柱の少女から突然魔力の鳴動が起きた。

そして、半透明の柱に亀裂が走り、中から少女の人形がうぞぞぞと這い出してくる。

その様はさながらホラーなんだけど。


「な、なななな、何が起こってんだ! ねーちゃん何かしたのか!」

「名前呼んだだけだよ。」


突然動き出した朽ちたハズの人形は、柱から抜け出すと汚れた衣服をとりあえず整え、わたしの前に畏る。


「これは……?」


カタリナたちも驚いているが、わたしだって驚いてる。

まさかこんなところで彼女に逢うとは思っていなかった。


「識別番号0003「研究所オーグル」管理端末、コード「ルナリア」、マイスター・フィオレンティーナの魔力を確認しましタ。これより、スリープモードを解除、通常行動に移行しまス。」


あああ、やっぱり迷宮(ダンジョン)【オーグル】ってわたしのかつての研究施設「オーグル」だったのか……。

確かに魔法の実験場とかなんだかんだと手広く作っちゃったから、千年単位で放っておいたら迷宮(ダンジョン)化しても不思議では無いよなぁ。

ちなみに生体化したせいで以前の面影は全く無いので、名前が同じだけの関係ない迷宮(ダンジョン)だと思い込んでました。

これは、わたしの他の研究施設ももしかしたら迷宮(ダンジョン)化している可能性があるなぁ。


「お久しぶりでス、マイスター・フィオレンティーナ。何やら随分と小さくなられましたネ。」

「久しぶり、ルナリア。あと今のわたしはイルミナって名前だから、その名前では呼ばないでね。」

「かしこまりましタ、マイスター・フィオレンティーナの記録を変更、これよりマイスター・イルミナと認識、記憶しまス。」


わたしがかつて賢者だった頃、大陸の各地にわたし専用の研究施設を作った。

魔法を研究する施設、生み出した魔法を実践する施設、魔導具を作る施設、魔導具を保管しておく施設、特殊な実験施設など、色々な用途のために作った施設だが、留守にすることも多かったためにそれぞれに管理者を置いた。

それがこの自律型生体自動人形(オートマトン)、ルミリオシリーズであり、全部で六体作成した。

ルナリアはルミリオシリーズの三番目、姉妹の中では中堅だ。

自動人形(オートマトン)はゴーレムの一種……というか派生魔物なのだが、ゴーレムは自然発生の魔物というだけでなく、付与魔法や錬成魔法で作れる魔物で、その中でも自動人形(オートマトン)は最上位のゴーレムになる。

ルミリオシリーズは素材から吟味し、長い時間を掛けて一体一体丁寧に錬成した最高級の自動人形(オートマトン)であり、ゴーレムマイスターとして、わたしの最高傑作の六体なのだ。

見た目は先ほども示した通り、14歳くらいの少女で、基本的にわたしの趣味でゴスロリを着させている。

ルナリアの基本色は青だ。

可愛らしい見た目だが、残念ながら表情に乏しい。

だが、これでなかなか精神面は豊かで、学習機能もあるので、日々変化していくスーパーゴーレムだ。


「マイスター、ワタクシの仮マスター登録がそこな少年になっておりますが、如何いたしますカ。マイスター権限でいつでも抹消可能ですガ。」


そう、ルナリアは迷宮核(ダンジョンコア)としての機能は残ったままなのだ。

なので、スリープモードにいた際の仮マスターはメーヴィのままなのである。

そこでわたしは提案をする。


「メーヴィ、もしよかったら、わたしの下に来なさい。」

「ええっ!」

いつも読んでいただきありがとうございます

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