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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
王都騒乱編
68/159

58 迷宮の扉と世界の決まり事

再三言うが、ブラストゴーレムはかなり高レベル帯の魔物であり、本来ならばもっと魔力濃度の高い地域に精製される魔物だ。

迷宮(ダンジョン)の奥にガーディアンとして配置されていることはあるかもしれないが、野良でそこら辺にいる様な魔物ではない。

そもそもゴーレム系統の魔物が自然発生する場合は、周辺魔力が濃密な場所でその魔力が魔石として結晶化し、それを核魔石(コア)として発生するもので、周辺魔力が並以下である街場で自然発生することは考え難い。

一体なら迷宮(ダンジョン)の奥で発生した個体が迷い出てきたという可能性もあるだろうが、二体三体となると偶然とはとてもじゃないが思えない。


「やはり裏に何かある。」


もともと考えていたことだ。

一応、事故の可能性も無いわけではなかった。

迷宮(ダンジョン)では奥に行けば行くほど魔力濃度が高く、多くの魔物が生まれる。

生まれた魔物の中には生殖能力や分裂能力を持つものもいるから、更に多くの魔物が生まれる。

それらの魔物が増えすぎ、迷宮(ダンジョン)の許容限界を超えると迷宮の暴走ダンジョンスタンピードと呼ばれる現象が起こることが稀にあるからだ。

迷宮の暴走ダンジョンスタンピードは要は溢れた魔物が、大量に迷宮(ダンジョン)の外に出てくる現象のことだ。

もともと迷宮(ダンジョン)からは魔物が迷い出てくるものなのだが、これが大量に、となると一大事だ。

そうならないように、迷宮(ダンジョン)を抱える国や街は冒険者を募り、迷宮(ダンジョン)を開放して定期的に魔物の討伐を行なっている。

だが、こんな同時多発的に、しかも強力な魔物が王国の主要部を襲うなど、事故や偶然では済まされないだろう。


「確かに、裏で糸を引く何かはいるだろう。だが、差し当たっての問題はゴーレム(アレ)をどうするかだな。」


それもそうだ。

けど、正直手に余る。

再三言うが、ブラストゴーレムはわたしと相性最悪の魔物だ。

その理由であり、名称の由来でもある反撃スキル【ブラストアキュミレーション】はただ受けた攻撃を反射するスキルではない。

受けた攻撃を蓄積し、しかも増幅して返す。

その上、本体は耐性スキル盛り盛りで受けるダメージの上限が高い。

追加のゴーレムのステータスは覗いていないが、先に倒したものと同様だとすれば、相当にタフだ。

やはりHPを削り倒すやり方はできないだろう。

だが、一々外装を剥いで核魔石(コア)を狙うやり方も二体もいると困難だと言わざるを得ない。

核魔石(コア)狙いだと手間が掛かるし、一体目は上手くいったが二体目三体目もそうだとは限らない。


「ヤバいな……軽く詰んでるぞ? これ。」


あとは問答無用の大火力で吹き飛ばすしか……。

いやいや、この迷宮(ダンジョン)の造りが判らない以上、下手に吹き飛ばすと入口広げてより多くの魔物を呼び込むことになる可能性もある。

今はまだ一大事で済ませられることが、大惨事に発展しては目も当てられない。

……ん? まてよ。

迷宮(ダンジョン)か……。


「どうした? イルミナ?」

「殿下、この先……迷宮(ダンジョン)の入口ってどうなってます?」

「どうってな。普通に門があって、扉があるが……」

「あるんですね! 扉が!」


それならば、手はある。

迷宮(ダンジョン)の扉というものは、概念的な結界装置なのだ。

それを閉めることにより、空間を断つことが出来る。

どんなに強力な魔物も、閉めた門を自力で開けて外に溢れることは無いとされる。

ただ、全ての門を閉じ、外界と完全隔離した迷宮(ダンジョン)は確実に魔物が増え続けるため、次に開けた瞬間迷宮の暴走ダンジョンスタンピードを引き起こす。

迷宮(ダンジョン)は魔物の素材という、生産物を採取する格好の場でもあるので、迷宮(ダンジョン)を抱える国や街は門を閉ざすことはまず無いのだけれど……。


「そんな話は聞いたことがないぞ。迷宮(ダンジョン)の門扉なぞあのゴーレムども(あやつら)なら容易く破壊できるのではないのか?」

「物理的にはそうでしょうが、魔物は決して扉を壊しません。これは世界の決まり事なので。」

「世界の決まり事?」

「ええ、世界の創造主が決めた、不変の掟ですよ。本来ならこの世界に生きる者は疑問にすら思わない事なんですが。」

「おかしいではないか。其方の言う世界の決まり事が本当にあるなら、私はあんな薄い門扉でも、それを閉じることで魔物の侵入を防ぐことに違和感を感じることはないだろう。」

「それは間にわたしがいるからでしょう。そもそも殿下は門を閉じることで迷宮(ダンジョン)を塞ぐことができるなんて知らなかったでしょう?」

「それは……そうだな。」

「わたしというイレギュラーが間にいるので、間接的に決まり事に対する疑問が湧いてきたのでしょう。言うなればわたしというフィルターを掛けることで、創造主(かみ)に対して疑問を持つことができているわけですね。」

「なっ!」


本来なら世界の住人は世界に対し疑問を持つこともしない。

これがこういうものだ、という命題すら浮かんでこないだろうね。

これを不自然に感じるのはわたしが【神域到達者】であるからに他ならない。

わたしは神化自体は固辞したが、神域に至った者はその精神性がちょっと一般の人とは逸脱してしまうものらしい。

つまりは、創造主への疑問だ。


「まぁ、今はそんなことはどうでもいいです。なんとかしてあのゴーレム供を迷宮(ダンジョン)まで押し戻し、扉を閉めましょう。そうすればこの貴族院に於いては一先ずカタが付きます。」

「ええい、今は仕方ないが……後から色々聞かせてもらうからな、イルミナ。」

「しょうがないですね、聞かれたことには答えましょう。」


なんにしろ、方針は決まった。

わたしはアルトリウスに壁になってもらい、先ずはゴーレムを押し戻すところから始める。

わたしも【魔力鋼糸】を使い、なるべくダメージを与えない様にゴーレムを通路の先へと押し戻す。

その間、隙間から漏れ出る小型の魔物の対処をカタリナ、ザークさん、エルディラン殿下にお願いする。


「アルト、もう少しだから頑張って!」

「任せろ。と、言いたいとこだが、かなりきついぞこれ。こっからだとよく見えねえんだが、あとどんくらいだ?」


アルトリウスは二体のブラストゴーレムの真正面に立っているから、その巨体が邪魔になって見えていないが、既にわたしからはゴールが見えている。

あと15メートルといったところか。

……あれが迷宮(ダンジョン)の門か。

両開きの扉が全開に開いている。

通路の幅が10メートルくらいなので、扉も片方幅5メートルはある大きなものだ。


「門を閉じるって、どうやんだ?」

「別におかしな魔法がかかっているわけじゃないから、普通に閉めるよ。」

「えーっ、あの大きさの扉をか!?」

「いや、力づくで閉めるわけないでしょ。閉門の魔法がある。」

「そっか、そうだよなー。」


いやまぁ、強化魔法で腕力強化して物理的に閉めてもいいのだけど。

その場合はやっぱりアルトリウスにお任せすることになるわけだけど。

流石に酷使しすぎだからやめておこう。

噂のペンギン・ハイウェイ見てきました。

正直めっちゃ面白かった。

で、なんであの内容で女性蔑視がどうこうって感想が出てくるのでしょうか?

少年の淡い恋心の話だと思うんですけどね。

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