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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
聖女転生編
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6 暴魔熱

暴魔熱(マギアフィーバー)と呼ばれる、単純に言えば魔力の暴走だ。

魔力とはどんな生物にもある内包魔力のことだ。この内包魔力はその個体の強さの指標ともいうべき力で、【能力鑑定】Lv5で鑑定可能になる。

この内包魔力は人間なら、幼少の頃は非常に弱い。

というより、成長に合わせて伸びていくのが普通だ。

だが、稀に生まれつき内包魔力が強く、魔力の大きさに成長が追いついてない子が産まれることがある。

これにより、肉体に過負荷がかかる。

これが暴魔熱(マギアフィーバー)だ。

暴魔熱を起こした幼児は、大半がそれを抑えきれずに死に至る。

暴魔熱は基本的に死病なのだ。

たまに暴魔熱を抑え、無事に成人するものもいる。

その場合、往々にして魔導師として大成することが多い。

実は転生前のわたしも暴魔熱持ちだった。

だから、この症状も覚えがあるのだ。

そんなことを考えてたら、ドタドタと大きな足音が聞こえてきた。

その足音はわたしのいる部屋まで近づいてきて、そして大声がした。


「イルミナが生き返っただとーっ!」


あぁ、この男性がイルミナの父親だな。

ゴツイ身体をしたおっさん、見た目はそんなに悪くない。

そんなおっさんが目に涙を湛えてわたしに抱きついてきた。

うーむ、傍目には父親が娘の生還を喜び抱きつくという微笑ましい光景なのだろうが、わたしとっては複雑だ。

なんせわたし、自身の感覚では数時間前まで成人女性だったのだ。

年齢的にはむしろおばあさんだったわけで、父親よりもはるかに歳上なのである。


「お、お父さん。痛いよ。」


うん、ここは演技だ。


「お、おう。すまないイルミナ。しかし何だ、これは奇跡じゃないか。まさか死んだと思っていた娘が生き返るなんて!」


違います。

あなたの娘は間違いなくお亡くなりになりました。

……とはいえないので、もっともな理由をでっち上げることにしよう。


「違うよ、お父さん。わたしは最初から死んでなかったんだよ。たぶん魔力が極限まで低下して仮死状態になってたんだと思うよ。」

「なんだ? はははは、バカ言っちゃいけない。俺たちみみたいな平民に魔力なんてあるわけないだろう?」


……? 今何て言った?

平民に魔力が無い、とか聞こえたような。


「お父さん、今平民に魔力が無いって言った?」

「ん? 魔力ってのは魔法を使える貴族様とかじゃなけりゃ持ってないだろう?」

「違うよお父さん。魔力は強弱の差はあれど、生きているものなら誰でも持ってる力だよ?

平民だから持ってないなんてことないよ。」

「何を言っているんだ、イルミナ?」


おかしい。

わたしの常識では魔力は生きとし生けるもの全ての生き物が持っているものだ。

魔物だけでなく、普通の動物や植物にすら魔力はある。

実際、今自分の体に魔力が循環していることは感覚として解るし、それに人の魔力も当たり前のように感じることはできるので、父や側にいる母、弟のフレッドにも大小の差こそあれ魔力があることは解る。

そもそも魔力が無ければ暴魔熱になることも無いしね。


「お父さん、ちょっと離れてて。」


わたしは父にそう促すと、今のわたしでも使える最も基本的な魔法のひとつ、古代語魔法レベル1魔法のひとつ、【光源】を使う。

【光源】は明かり取りの魔法だ。

持続時間と光量を調節できるので目潰しなんかにも使える便利スキルだ。

基礎魔法は基本的に使い勝手が良いものが多い。


《深淵を照らせ・光源》


古代語魔法は古代魔導文明の遥かな過去に成立した魔法スキルで、スキルの利便性と習得の容易さで他の追随を許さず、文明崩壊後も連綿と受け継がれてきた魔導師たちにとっての基礎魔法だ。

特に詠唱は必要ないんだけど、今回はわかりやすくするために敢えて口に出した。

内包魔力やスキルレベルの差こそあれ、これが使えない魔導師はいない。

ましてレベル1の明かり取りの魔法。

これは生活魔法として貴族だろうが市井だろうが、よほど魔力の低い変異体でも無い限り、ほとんどの人が使える基礎中の基礎だ。

もちろん、わたしの掌からは熱を持たない光の玉がふよふよと顕れる。


「おお……魔法だ……」

「イルミナ……凄い……」

「ねーちゃん、なんでこんなこと出来るんだよ!」


……?

いやまて、逆に気になる。

なんでこんな初歩中の初歩でここまで驚かれる?


「みんな出来ないの? 基礎魔法だよ?」

「バカ言え。魔法ってのは貴族様しか使えない奇跡の御業だろう?」


バカとなんだバカとは。

仮にも三千世界の魔法を得てアルテマスキルに到達した大賢者に向かって。


「違うよ。魔力は生物なら誰でも持ってるし、お父さんやフレッドだって普通に使えるよ。もちろん知識は必要だけども。」

「そう……なのか?」

「やってみる?」

「あ、あぁ、今はダメだ。村のみんなにイルミナが生きていたことを伝えてこなきゃならん。

そうだな、今夜落ち着いたら教えてくれるか?」

「うん。」


そう返事すると、父は笑顔で部屋を出て行った。

あとから母に聞いたのだが、わたしは満面の笑みをしていたらしい。

こと魔法のこととなるとわたしは上機嫌になるので、顔に出ていたようだ。

予定通り、次回更新は明日の正午です。

ブックマークありがとうございます。

これからも頑張ります。


誤字を修正しました。

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