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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
王都騒乱編
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36 ステータス講義

結局、ツァクール教団が大規模なペテン集団だという事実は伏せることとなった。

この事実を公表した際の混乱が想像できない規模になるというのが理由だが、わたしとしては魔法を含むスキル技術の低下の原因の一端がこの宗教にある気がするので、そのまま放置する気はさらさらない。

だが、カタリナに半泣きで「頼むからやめてくれ」と懇願されてしまい、仕方なしにこの件は棚に上げておいた。

まぁ、教団は孤児院なども経営しているし、神聖魔法による治療院みたいなのも経営してるらしいから、社会的に問題になるからね。

仕方ないか。


そもそも、この宗教の謳う神とやらと、あのポンコツとではかなり認識に乖離があるんだがなぁ。

たしかに世界は神が創った。

それは間違いないんだけど、ツァクール教のいう唯一神とやらは人々の祈りを聞き届けて、奇跡を起こす有難い存在らしいじゃない。

実際に奇跡とやらがあったのかはさておいても、その在り方はより高尚なものに思える。

翻って、わたしの知るあのポンコツは神というよりは、もっと下賎な何かだ。

便宜上「神」と呼称してたけど、改めて考えるとあれは確かに世界を創った存在ではあるが、「神」と呼ぶには少々俗なところがある。

言うなれば創造主とか造物主とか、そう言った呼称のほうがまだしっくりくる。

まぁ、わたしはこれからもアレのことはポンコツと呼ぶんだけどね。



さて、わたしがエルヴェレストの家に迎えられてから、貴族院の入学まで数ヶ月あったのだが、その間何をしていたかというと、割と忙しく動き回っていた。

まず、当初の目的であるカタリナの家庭教師。

最初はカタリナだけに講釈すればいいや、くらいに考えていたんだけど、カタリナを含めたエルヴェレストの家人ほとんどに講義する羽目になった。

とは言っても深くは教えない。

というか教えても仕方ないと言うか。

火種や浄水などの、簡単な生活魔法が使えるようになればいいとお爺様に要請されて、必要なことだけを抽出して教えることになった。

もちろん、カタリナに対してはガッツリ指導するが、その際に護衛隊の面々もいっしょに教える羽目になった。

護衛隊の隊長、ギュンターから「俺たちでも魔法が使えるなら教えてくれ」と頼まれ、どうせなら皆で机を並べて教えることにした。

魔法スキルに限らないんだけど、スキルは取得したいスキルを得るためにその前段階のスキルを取得し、その練度を上げる必要がある。

しかも条件がひとつではなく、◯◯スキルのスキルレベルいくつ、××スキルのスキルレベルいくつまで上げたら初めて△△スキルが取得できる、というような複数の条件が重なっているものもある。

さらに魔法スキルに限っては、その系統の魔法スキルそのもののレベルを上げないとスキル取得条件が揃っても取得できないという、根本的な問題もある。

つまり、【ショックボルト】は古代語魔法レベル2のスキルなので、古代語魔法のスキルレベルは2まで上げておかないと、そもそも取得できないわけだ。

そして、もう一つ難点を挙げるならば、この時代はステータスの概念自体理解されてないということだ。


「のうイルミナ、ステータスとはなんじゃ?」


これである。

この世界はあのポンコツが創った箱庭で、そこにはステータスシステムとスキルシステムが存在するわけだが、この世界のこの時代に生きる、少なくとも人族領域に於いてはステータスの概念が理解されてないのだ。

パルマス王国は人族領域では最もスキル技術が進んでる国らしいのだが、その国の公爵家の人間ですらこれだからね。

他の人族国家も推して知るべし。


「ステータスは個々の能力を数値で表したものですよ。大まかな技量が一目で確認できる便利なシステムです。もっとも特定のスキルが無いと見ることもできませんが。」


必要なスキルは言わずもがな、【能力鑑定】だ。

この時代の人々はこの【能力鑑定】を取得している者が皆無といっていい。

少なくともわたしが知る限りではわたしが教えたフレッドくらいだ。

スキル【能力鑑定】は取得するにはセンスが必要なので覚えられない人は永久に覚えられないとは思うが、それでもかつての大賢者であった時代には三人に一人は【能力鑑定】を使える者がいた。

冒険者で3~5人でパーティを組んでいれば、一人や二人は鑑定持ちがいたものだ。

この時代の冒険者とか、碌に魔物の情報も分からずによくまぁ素材狩りとかしてると思うよ。


「すると、妾や其方もその能力を数値化して確認できるのか?」

「そうなりますね。これは世界がそういう風に創られているので、我々人族だけでなく他のヒト種、魔物や動物、植物に至るまで全ての生き物を数値化することができますよ。もっともステータスの数値だけで優劣が決まるわけではないんですけどね。」


ステータスはあくまで平常時の基準数値みたいなもので、例えば気合いを入れて攻撃したり、集中して魔法を使ったりすれば一時的にステータスは変化する。

基準のステータスだけ見て、彼我の能力差を決めつけるのはあまりよろしくない。

それでも圧倒的に差がある相手とは戦わないほうが賢明なので、鑑定スキルは使えるに越したことはないけどね。


「それで、【能力鑑定】はどうすれば得られるスキルなのじゃ?」


そうだよね、そこ気になるよね。

言ってしまえば、【能力鑑定】を得るには一度【能力鑑定】を使うしかない。

持ってないスキルを使う、という矛盾。

それを可能にするのが魔導具の存在だ。

つまり【能力鑑定】のスキル効果が付与された魔導具を使えば、素養がある者なら、労せずに【能力鑑定】レベル1を取得できる。

できる、のだが……


「【能力鑑定】が使える魔導具を作るのに必要な触媒が手元にありません。」


そうなのだ。

一般的な【能力鑑定】アイテム、【ピーピンググラス】は【ガラウスの水晶】という特殊な鉱石を用いて作る。

そして【ガラウスの水晶】はガラウスタートルという亀型の魔物の甲羅が原材料なんだけど……


「どこにおるのじゃ、その亀は。」

「どこにいるんでしょうねぇ。」

「なんじゃ、知らんのか。」

「そりゃ知りませんよ。わたしが転生してからこっち、出身の村とランズロウトの領都とこの王都くらいしか行ったことないですから。」


ガラウスタートルは甲羅の他にもいろんな魔導具の素材になるので、わたし個人がかつて狩場にしていた場所があるにはあるが、現状では行く手段が無い。

【空間扉】は行ったことのある場所にしか跳べないし、かつて言ったことがある場所でも脳内にあるイメージとかけ離れると発動しなくなる。

試してみたらもちろん跳べなかった。

カルナに乗って行くのもありだが、そもそもの場所がわからない。

万事休す。

材料があれば付与魔法どころか、その上位スキルの錬成魔法も使えるわたしに作れない魔導具は多分ない。

もちろんレシピは必要だが、技量という点では全く問題ないし、ピーピンググラスなら片手間でも作れるだろう。

材料さえあれば、である。


「昔は露店とかで大量に売ってたんですがねぇ。あーゆーのどこにいったんだろう。」


わたしの工房なら腐る程あるはずなんだがなぁ、ガラウスタートルの甲羅。

いや実際はあれは鉱石で有機物じゃ無いから腐りはしないけども、ね。

いつも読んでいただきありがとうございます。


ちょっと仕事が忙しくなってしまい、書き溜めがやばい状況なので更新頻度を月水金の三回からから月木の二回に減らさせてもらいます。

ごめんなさい。


仕事のペースが一段落したら元に戻します。

その時はまた告知させていただきますね。

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