31 プロローグ
どうしてこうなった……
「今日は効果的な魔法スキルの取得についてやります。」
わたしは教壇に立っていた。
場所は王立貴族院、魔法科の大講堂。
講堂の教卓はわたしには高すぎるので、踏み台を置いて高さを稼いである。
「魔法スキルに限らず、一部の例外を除いて殆どのスキルには派生元と派生先の関係を持ち……」
わたしは魔法使いだ。
職業的な意味ではなく、種族的な意味でだ。
魔法使いという種族は人族から派生する転化先のひとつで、基本的な肉体スペックの上昇、魔法スキルに於ける補正、不老不死などの恩恵があり、見た目には一切成長しなくなる。
「これをスキルツリーと呼び、このスキルツリーの解明が魔法スキルを取得する上で最も重要な……」
かつて世界最強と謳われた大賢者、フィオレンティーナがアルテマスキル【魔導の極み】に至り、神へと昇華する過程で神化を辞退し、人として第二の人生をやり直す羽目になった。
それがわたし、イルミナだ。
「ランズロウト先生、質問です!」
「はいそこ、グロッグ君。何かな? あとわたしのことは家名では呼ばないように。イルミナ先生と呼びなさい。」
第二の命を得たわたしだが、その身体は生来病弱な10歳弱の女の子の身体だった。
魔法使いとしての特徴を受け継いで転生してしまったため、その幼女の姿のまま容姿が固定されてしまったのだ。
【不老不死(魔法使い)】のスキルのお陰で以降病気になることはないが、成長が固定されているのでひ弱な体が治ることもない、日常生活に常に気を配らなければならないダメ魔法使いの誕生だ。
「すみませんイルミナ先生。俺が【ショックブラスト】を取得するために必要な【ショックボルト】の魔法はすでに取ってあります。何故派生しないんですか?」
わたしが受肉したイルミナの肉体は暴魔熱に耐えられずに一度その生命活動を停止した存在だ。
転生前のわたしも幼少時は暴魔熱に侵されてはいたが、それを乗り越え生き伸び、魔導師として大成したわけだから、そこから根本的に違うということだ。
イルミナの身体はフィオレンティーナよりも弱い。
今のわたしは常に強化魔法で身体能力を底上げして生活している。
そうしないといつぶっ倒れてもおかしくないからだ。
まぁ、この生活も数年経てば慣れたもんではあるけど。
「それには二つ理由が考えられる。まずは単純に古代語魔法そのもののレベルが足りてない可能性、もう一つは【ショックボルト】のスキルレベルが足りてないか。このどちらかね。」
「スキル……レベルですか?」
「ああ、その概念も無いのか。これはちょっと講義の内容を変更した方が良いわね。」
で、なんで現在わたしが貴族院の講堂で教壇に立っているかというと……
……カタリナに、嵌められた。
まったく、どうしてこうなった……
いつも読んでいただきありがとうございます。
本日より第2部「王都騒乱編」開始致します。
更新につきましては、暫くは月水金に更新しようと思ってます。
状況に応じて更新が滞ったりするかもしれませんが、どうか長い目で見てください。
それでは今後ともよろしくお願いします。