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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
聖女転生編
34/159

29 シエラ

「今更なんだ、マスター。」

「だってオレとか言ってたからてっきり……」

「オレがオレを何と言おうとオレの勝手だろう。」

「うーん、口が悪いなぁ。」


個体として確立を終えたシエラだが、その姿は幼女以外の何者でもない。

悪魔に性別の概念があるかどうかは甚だ疑問だが、少なくともわたしから見たシエラは可愛らしい黒髪の 女の子だった。

もちろん素っ裸なので、ちょっと困る。

いまこの場に4〜5歳の幼女が着るような服は無い。


「なんだ、この姿だと困るのか? ならコレでどうだ?」


言うや否やシエラはその姿を変化させる。

一瞬でその姿を作り変え……というか、骨格というものは無いらしい。

その姿は黒猫に変わっていた。


『これなら裸でも問題ないだろ。』


動物はヒト種とは声帯が違うので、【伝言】で話す。

ここはカルナのドラゴン形態と変わらない。

4〜5歳の少女と同じ質量の猫なので、かなり大きい猫になっている。

まぁ、もっとでかい大型の猫型魔物とかもいるし、問題はないかな。


『この存在の大元はあのヒト種の姿だが、オレ自身は一つの姿にこだわりがあるわけじゃ無い。』

「あんた何にでも変身できるの?」

『ほかに鳥とかにもなれるぞ。【変身】ってスキルがある。』


地味に便利だな。

諜報活動とかに使える。

これは思ったより拾い物かも。


「あんたのステータス見せてもらってもいい?」

『好きにしろ。アンタはオレのマスターなんだからアンタの意向にオレは逆らえない。』


そう言う言い方嫌いだな〜。

無理矢理って好きじゃないんだけど。


名前:シエラ

種族:悪魔

クラス: 従属魔(聖女/魔女)

性別:♀

年齢:不明

レベル:10

HP:109(666)

MP:712(1666)

内包魔力ランク:AAA


STR:89

INT:211

AGI:168

VIT:101

DEX:134

WIZ:191

LUK:23


スキル:

古代語魔法Lv8 暗黒魔法Lv8 強化魔法Lv8 召喚魔法Lv3

魔法耐性Lv8 物理耐性Lv9 衝撃耐性Lv7 斬撃耐性Lv7 熱変動耐性Lv5 全状態異常耐性Lv1

HP自動回復Lv3 MP自動回復Lv3

気配察知Lv3 魔力感知Lv4 威圧Lv1 隠密Lv3 悪魔の瞳Lv1 魔界の炎Lv5 サークルバーストLv3 炎纒Lv1 魔の咆哮Lv3 変身Lv3 能力鑑定Lv3

隷属の契約ex 炎魔ex


流石にあの悪魔まんまの強さではないが、これでもこの時代だと反則級の強さだね。

ステータス的にはちょっと強い魔物くらいはある。

特筆すべきはスキル。

以前とほとんど同じスキルを持ってる。

スキルレベルも殆ど同じで、使い魔とは思えない程の強さだ。


「アンタ随分強いわね。」

『イヤミか? マスター。あんたの使い魔になってアンタが如何に強いか理解したぞ。今のオレでは逆立ちしても勝てん。』

「いや、アンタよか弱かったら流石に困るわ。この時代として相対的に強いって言ってるの。」

『そうなのか? まぁオレの鑑定だとステータスくらいまでしか見れないからな。あそこで伸びてるドラゴンとか凄い強いのはわかる。』


促されて目を向けると、城壁の瓦礫に埋まって星を回してるカルナが今も伸びている。

うーん、ちょっと恥ずかしい。


「あれ、一応アンタの先輩なんだから仲良くしてよね。」

『まかせろ。オレは自分より強い奴に逆らう気は無い。』


ほんとかな。

口悪いし、真面目なカルナとソリが合わなさそうで不安だ。



一応、ランズロウト領都で起きた騒動は収束したと言える。

街の一部崩壊、城の倒壊、ドラゴンが暴れたり見たこともない魔物が暴れたり、領主の行方は知れずと、被害だけを見れば非常にまずい状況だが、嫡子であるトーガ・ランズロウトがその存在感を示した。

トーガは領都の兵士や騎士に的確に指示を出し、住民を安堵していた。

少なくない被害者は出たが、手厚い補償と早期の復興も約束、トーガは領都の住民に次期領主としての度量を示したこととなる。

また、偶然にも領都に滞在していたエルヴェレスト公爵令嬢、カタリナがランズロウトを支援することを表明し、王家に対しての介入を牽制することとなった。

結果だけ見れば、ランズロウト辺境領という一大商業圏にエルヴェレストという大貴族が新たに関係を結んだ形となった。

このことが、今後このパルマス王国にどのような影響を及ぼすのかまだわからないが、まったく風が吹かないということにはならないでしょう。

事件から数日後、ランズロウト辺境領領都の領主城の一角、新領主トーガ・ランズロウトの執務室にて、事件の関係者が一堂に会していた。

城の三割は事件の所為で崩壊してしまったが、壊れた一角はもともと前領主の生活空間が主であり、無事だった部分に領主としての執務空間がそのまま残されていたので行政的には何ら問題は無いらしい。

事件が深夜帯だったこともあり、領政を執り行う官僚は皆帰宅しており、城に残っていたのは夜番の兵士や前領主子飼いの騎士だけだった上、事件時もカタリナの従者達がいち早く避難誘導をしたために城内の人的被害はそう大したものではなかった。

前領主子飼いの騎士や側女が倒壊に巻き込まれて幾人かの被害は出たが、当直の兵士やメイドには怪我人はいたものの死人は出なかった。

事実上、前領主側のみに被害が及び、中立性を保っていた官僚や兵士に被害はなかったのだ。


「トーガ卿、まずは領主就任おめでとうございます。」


カタリナがわたしたちを代表してトーガに祝福の言葉を紡ぐ。

先ほど、王国の使者として派遣された検分官から正式にトーガを領主に認める旨を伝えられ、その認可を受けたばかりだった。

トーガは正式に伯爵に叙せられ、身分の上ではカタリナよりも上になる。

カタリナは公爵令嬢だけど、爵位を持っているわけでは無いからね。

この国では爵位を持つ貴族の尊称として卿を用いるらしい。

単純に爵位で呼んでも失礼には当たらないらしいから、まぁどちらでもよいんだろうけど。


「いや、これもカタリナ殿の助けがあればこそだ。礼をさせてもらわねば。」


実際、すんなりとはいかなかった。

最終的にトーガが門地を継いだわけだが、そこまでの道のりは険しかった。

なんせ領都という、万人規模の都市で破壊騒ぎが起きて、その元凶が領主にあるらしい、などという噂が(真実なのだが)まことしやかに囁かれ、住民や建築物に被害がおよび、挙げ句の果てにその領主が行方不明などと恥も外聞も有ったものではない。

本来ならランズロウトの門地は召し上げ、悪くすれば取り潰し、爵位は剥奪、一族の処刑もあり得たくらいの重大事だった。

事なきを得たのは、カタリナの存在が大きい。

カタリナは事件後直ぐにこの国の内務卿である祖父、現エルヴェレスト公爵に【伝言】を送った。

内容はランズロウト辺境領に於ける事件のあらましと、次期ランズロウト領主との間にパイプを得たこと、今までは内憂の種だったランズロウトとモートディラウトの間に楔を打つ契機を得たことなどだ。

このことを踏まえて、公爵は内務卿として王国の検分官に含みを持たせて派遣した。

そうした方が、新たなランズロウト領主に貸しを作ることができると踏んだのだろう。

余談だが、どちらかといえば魔法が苦手だったカタリナが、【伝言】による長距離通信をしてきたことに公爵はいたく驚いたらしい。

もちろんわたしがサポートした結果なのだが。


「妾としては、新たなランズロウト領主と友誼を結べたことの方が大きい。今後ともよしなに頼む。」


カタリナは個人的にもトーガに貸しを作ったことになる。

事実上の命の恩人であり、領主叙任の立役者でもある。

まぁ実際に動いたのはわたしなんだけど、部下の功績は上司の功績というやつだ。


「こちらこそ。カタリナ殿、いや、エルヴェレスト公爵家とは今後も良い付き合いができればと思っております。」

「ほほほほ。」

「はははは。」


うっわー、うさんくせー。

やだやだ貴族同士の腹の探り合いは。

前回バニシングアウトの説明忘れてましたね


※スキル講座

【バニシングアウト】真古代語魔法レベル10

究極大魔法のひとつ。

対象を拘束し、物理・魔法両面から打撃を与えた上で存在するという概念自体を攻撃するトンデモスキル。

肉体を持たない精神生命体にも効果がある数少ないスキルのひとつ。

効果は絶大だが、対象効果範囲が極め小さく、使うMP量も尋常では無いので、普段使いできるスキルではない。

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