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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
聖女転生編
33/159

28 スキルアブソーブ

【魔法スキル作成】。

転生後に手に入れた、大賢者(フィオレンティーナ)には無かったスキル。

つまり、転生したことにより手に入れた、「最強の大賢者」を超える可能性を持つスキル。

その効果は、「自らの望む魔法スキルを新たに作り出すことができる」スキル。

スキルを作るということは神が作ったこの世界のシステムに干渉することと同義といっていい。

もともとは神に至ることで手に入るスキルなのだから、当然といえば当然なんだけど。


望むのは魔力を回復させるスキル。

だが、魔法を使って魔力を回復させるなんて矛盾もいいところだ。

MPってのは魔法やスキルを使えば減るものなんだから。

ならばどこからかMPの元になるものを持ってこなくてはならない。

いくら魔法スキルが万能でも、世界の理を覆すことはできないのだから。


「……なぁんだ、いっぱいあるじゃん。魔力の源。」


わたしの周りに渦巻く【魔界の炎】。

元々は魔力の塊。

ならばこいつからMPを変換吸収してしまえばいい。

【魔法スキル作成】でスキルを新たに創造する際、必要なのはその魔法の完成形が想像できることらしい。

そして、そのスキルの内容をきちんと文章で説明できることが必要らしい。

スキルの内容は『指定空間内の攻性スキルを吸収し、自分のMPに変換する』スキル。

スキル名称は……奇をてらってもしょうがない、【スキルアブソーブ】でいいや。

完成した魔法【スキルアブソーブ】は、放出系の攻性魔法ならば、どんな魔力攻撃も吸収、MPに変換してしまう魔法だった。

なんだこれ、ぶっ壊れスキルじゃないか。

そして発動した【スキルアブソーブ】がわたしの周囲に渦巻く炎を呑み込んでいく。


「なんだ、それは。」


悪魔が呟く。


「貴様、一体何をした!」


悪魔が吠える。


「オレの炎をどこへやった!」


悪魔がわたしに問う。

だからわたしは答えてあげた。


「食べちゃった。ご馳走さま。」


【魔界の炎】を全て吸収したわたしは、静かに悪魔を見据え、挑発するように微笑む。

今やわたしのMPは満タンだ。

それどころか、上限を超えてプールしているような状態だ。

そう、大賢者だったころに匹敵する魔力量が、わたしの中に揺蕩っているのが分かる。

今ならば、かつて最強と謳われたころのわたしにほんの少し戻れるかもしれない。


「馬鹿な! 【魔界の炎】が食われただと……小娘! 貴様一体何者だぁッ!」

「今更な質問だけど答えてあげる。」


本当に今更な質問だ。

悪魔である自分とガチでやり合える存在が、ただの人族であるはずがないだろうに。


「わたしはイルミナ。かつて大賢者と謳われた古の魔法使いの成れの果てよ。」


わたしはこの悪魔を倒す。

その為の魔法スキルを発動する。

わたしがかつて大賢者だった時、切り札としていた攻撃魔法スキル。

それは、【マギアブラスター】のような投射型の魔法ではない。

投射型は使いやすいが、避けられれば終わりだ。

とくに【マギアブラスター】は周囲の魔力を食い尽くすので、後が続かない。

もっとも【マギアブラスター】の速射力と投射速度を避ける相手というのもそう多くはないんだけどね。

あれは周辺魔力を食いながら飛んでいくから自分で溜める必要はないし、投射時からどんどん加速していくという特徴があるので、本当に避けるのが難しい、投射型攻撃魔法としては最高峰といって良いスペックは持っているのだが。


「ぬうっ、これはなんだ!?」


投射型なら、この炎の悪魔は避けてしまうかもしれない。

ならば範囲型の魔法ならばと普通は思うだろう。

だが、範囲型の攻撃魔法は往々にして火力に難がある。

本来魔力を収束することで大火力を構築するのが攻撃魔法スキルの骨子である。

つまり、範囲を広げれば、その分火力を構築する魔力が薄くなり、決定力に欠ける。

ならばどうするか。

範囲型のカバー力と投射型の魔力収縮量を両立させればいい。


「うご……けぬ……」


だが、それにはさらに強大な魔力、即ちMPが必要になるのだが、今のわたし(イルミナ)では本来はこの魔法スキルを使うことができない。

【魔界の炎】を新たに構築したスキルで吸収した今だからこそ、現状(いま)の限界を超えてMPが溢れている。

この魔法を使うのに必要なのは膨大な魔力、ただそれだけなのだがそれを身一つで実現するのはまだまだ先だ。

わたしはもうかつての大賢者ではない。

言うなればこの魔法はかつてのわたしからの借り物だ。

だが、なればこそ、今はこの魔法を使う。


「小娘……何を……」


悪魔の周囲を魔力の奔流が取り囲む。

この魔法は広範囲から対象に魔力を渦巻くようにを収束させ、その動きを奪う。

そして収束した魔力は拘束した対象を呑み込み、その存在を屠る。

真古代語魔法レベル10スキル【バニシングアウト】。

わたしが知る上で、最高峰の範囲収束型攻撃魔法スキル。

収束した魔力の奔流が悪魔の身体を、その存在ごとちょうど雑巾を絞るように捻じ切る。


「ぐああぁぁぁあぁっ……」


ただの魔力ダメージだけではない。

この魔法は概念をも捻じ切る。

本来肉体を持たない悪魔には覿面の効果を発揮するだろう。

渦巻く魔力はそのまま昇華し、悪魔の存在自体を打ち据えた。

狂奔した魔力が去ると、そこには存在概念自体があやふやになった悪魔の絞りカスが辛うじて残っているだけだった。


「こんな……馬鹿な……」

「呆れた、まだ存在してるんだ。存在するっていう概念そのものを攻撃する魔法なのに。」


この結果だけでも、この悪魔がどれだけ規格外の存在かがわかる。

正直、イルミナとしては勝ち目はなかったと思う。

大賢者(フィオレンティーナ)から力を借りることができたからこその、限定的な勝利だった。


「……だ。」

「ん?」

「嫌だ……オレは消えたくない……」


そう言われてもね。

悪魔の身体はわたしの【バニシングアウト】の影響で崩壊を続けており、既にその存在を保てなくなっていた。


「助けてくれ……なんでも……するから……」


今、なんでもするって言ったな。

今崩壊を続けるこの悪魔を生き永らえさせる方法が、わたしにはひとつだけある。

簡単なことだ、使い魔の契約を結んで、わたしの魔力で存在を維持してやれば良い。


「助けてやってもいい。」

「たのむ……助けてくれるなら……」

「いいでしょう。わたしと主従契約を結ぼう。内容はかなり一方的なものになるけど、構わないでしょ。」

「構わない、存在できるならば……」


悪魔との契約といえば聞こえは悪いが、実質はこちらが契約上位の存在だ。

【バニシングアウト】の影響で肉体がほぼ消えかけている悪魔だが、まだ受肉した肉が完全に消えたわけではないので、その残りをかき集めて希薄になっている存在を固着させる。

そして【従属契約】の交わす。

契約内容はわたしへの絶対服従、否応は無い。

飲めなければ、消滅が待っているだけだ。

【従属契約】は魔法ではない。

主となる術者と従となる魔物を魂で結ぶ契約で、契約を承認するのはこの世界の理、つまりは神だ。

一度交わされた契約はどちらかが消滅するまで消えることはないらしい。

従属契約はお互いの承諾があれば、その場で発動し、発動する時のみスキルとして発現するので、スキル欄にも載らない非常に珍しいスキルだ。


「あなたにわたしから名を授けます。契約を承認するならばその名を受け入れなさい。」

「心得た。」

「では、今よりあなたは「シエラ」と名乗りなさい。」

「受け入れよう、オレは今よりシエラと名乗ろう。」


わたしから魔力が一部抜けていく感覚がある。

悪魔だったその存在が、わたしの魔力と融合して一つの形を成す。

そこに現れたのは……ひとりの女の子。

とても可愛らしい、見た目4〜5歳くらいの。

……というかあなた、女の子だったの!?

※スキル講座

【魔法スキル作成】ユニークスキル

アルテマスキル【魔導の極み】に付随して得られるスキルその1

本来は神へと至った者に授けられる世界創造のスキルの一つで、決められたルールの中ではあるが、自在に新たな魔法スキルを創造することができるスキル

ユニークスキルなので、仮にもう一人別の誰かが【魔導の極み】を得ても【魔法スキル作成】を得ることは無い。


【スキルアブソーブ】エクステンドスキル

イルミナが【魔法スキル作成】で創造した全く新しいスキル。

放出系の攻性魔法スキルならば種類属性を問わず吸収し、MPに変換してしまうスキル。

効果範囲はスキルレベル依存だが、仮に最大レベルでもそこまで広くはない。

吸収変換したMPは上限を超えてプールされ、一時的に技量を超えた大魔法の使用も可能になる。


ブクマと評価、ありがとうございます。

じわじわ増えてて嬉しい限りです。

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