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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
聖女転生編
30/159

25 ドラゴンと悪魔の戦い

わたしが魔族の男を問い詰める一方で、低級悪魔と化したランズロウト伯爵と真の姿に戻ったカルナの戦いは激化していた。


低級悪魔は光線を放った後のクールタイムが終わったのか、それとも視界に巨大な敵の姿を確認したからなのか、おもむろに動き出す。

視力などの感覚器官が残っているのかは甚だ不明ではあるが。

そして、恐らく正面であろう例の光線を放った面を、その鈍重そうな見た目からは想像もできない速度でカルナに向ける。


対するカルナはまず遠距離からの単発ブレスを放つ。

ドラゴンのブレスは物理攻撃でも魔法攻撃でもない。

敢えて言うならドラゴンブレスという属性の攻撃といえる。

ドラゴンの攻撃方法はブレスと鋭い牙、爪、そして尻尾攻撃が主だ。

単発ブレスで牽制射撃の後に、一回転して尻尾の唐竹を打ち込む。

通常、生物は直上からの攻撃に弱い。

それは視界が真上に向かないからだが……低級悪魔はその尻尾攻撃をなんなく躱す。

というか、躱し方がキモチワルイ。

低級悪魔は無数の脚を生やして、それをちょこまかと動かし、身体全体をスライドさせるようにして攻撃を躱していた。

脚のひとつひとつがなまっちょろい人族の脚で、それが無数に生えている姿は見た目にくるものがある。


「あれはちょっと、無いんじゃないかの。」

「非常に嫌悪感を抱かせる動きですな、アレは……」


カタリナとトーガが呑気に感想を述べている。

割と一大事なんだけどね。

カルナは着地と同時に更に身体を一回転させ、今度は横薙ぎの尻尾攻撃を繰り出す。

なんか執拗に尻尾で攻撃すると思ったら、あれを直接引っ掻いたり噛み付いたりしたくないのか。

気持ちはわかる。

だってキモチワルイし。


「あー、あれに噛み付くのは嫌ですよね。」

「そうじゃなぁ、妾だったらごめんこうむりたいかのぅ。」


ホントに君たち呑気だな。

とくにトーガ、あれ君の親父さんだってことわかってるのか。

カルナと悪魔の戦いは割と一進一退の攻防に見えるが、実際はカルナの圧勝だろう。

カルナの尻尾攻撃は確実に悪魔にダメージを与えているように見える。

低級悪魔の【封魔の結界】は効果範囲内の魔力結合を阻害するスキルだ。

このスキルがある以上、この戦いにおいてはわたしは役立たずなのだが、このスキルは自身の魔法スキルも封じてしまう諸刃の剣なので、スキル上いくつかの魔法スキルを持つ低級悪魔も魔法は使ってこない。

純粋な肉弾戦だ。

となればSTRとVIT、あとはAGIのステータス値の勝負になる。

VIT値では若干後塵を拝すが、その他のステータスは圧倒的にカルナの方が上だ。

負ける要素は無いだろう。

あの魔力砲……【魔の咆哮】のスキル、あれならばカルナにも通じるだろうが、あのスキルは一定の溜めが必要らしくカルナは繰り出す隙を与えない。

【魔の咆哮】は魔法スキルでは無いようなので、【封魔の結界】の効果が及ばないようなのだが、詳しいことはわからんね。

恐らく悪魔種固有のスキルだろうし、わたしには関係ないかな。

使えないスキルを研究してもしょうがないので、対策さえ講じておけば問題ないだろう。


「そろそろ決まりそうじゃな。」

「凄いですね、ドラゴンとは。あれだけの戦いを繰り広げながら周囲への被害も考慮しています。」

「それはドラゴンが凄いのではなく、彼女が特別凄いのじゃろう。」

「なるほど。」


実際、カルナと悪魔の戦いは巨体同士の格闘戦なので周囲への被害が馬鹿にならないはずなのだが、カルナは上手く立ち回り被害を最小限に食い止めている。

城の一部と城壁、堀、城塞外周部の街に被害はあるが、逆に言えば街を切り裂き、燃え上がらせるような攻撃スキルを持つ相手にその程度の被害で済んでいるとも言える。

あの子、あんな繊細な気配りが出来るようになってたんだなぁ。

あとでちゃんと褒めてあげよう。


「おっ、今の一撃は致命撃じゃないですかね。」

「うむ、あっぱれじゃ。」


カルナが放った効果範囲小、火力大のブレスが低級悪魔に決まる。

ドラゴンブレスってあんな器用な使い方できるんだなー。

わたしが今まで屠ったドラゴンはただ力任せにぶっ放す奴らばかりだったのに、あの子のブレスバリエーション多すぎるだろう。


『マスター、対象沈黙したようです。』


カルナが【伝言】で伝えてくる。

ドラゴンは声帯が人とは違うから、ドラゴン形態では人語を話せない。

あの形態での会話は専ら【伝言】を使う。

そして【伝言】が使えると言うことは、【封魔の結界】の効果が及ばなくなっている証拠だ。


?……そういえば結界内でドラゴンの魔力操作は問題ないのかな。

ドラゴンがその巨体を魔力で支えていることは周知の事実なのだが。

あとでカルナに確認したところ、阻害はされていたが、行動力を奪うほどの効果はなかったとのこと。

単純にスキルの阻害効果以上の出力で気合いで魔力運用していたらしい。

さすがはドラゴン、最強の幻獣の呼び声は伊達じゃない。

……てことはわたしも頑張って魔力運用すれば結界内でも魔法スキル使えるのではなかろうか。

内包魔力的にはカルナよりわたしの方が上なのだし。

……しんどそうだからやめとこ。


「あんたら凄えな。実験段階とはいえ悪魔を倒しちまうとはな。人族も侮れねぇなぁ。」


ポツリと魔族の男が呟くが、悪魔を倒したのは竜種のカルナであり、それを使役するのは人族ではなく魔法使いのわたしなのだが……まぁそんなこと言ってもしょうがないので黙っておこう。

沈黙したとはいえ、悪魔はまだそこに存在する。

あれの処分どうしようか。


「カタリナ様、トーガ様、あれはどうされますか?」


ここは主の判断を仰ごう。

特にトーガにとってはあんなんでも父親なのだし。


「完全に消滅させてくれて構わぬ。最早ヒトには戻れぬだろうし、あれが父だとバレるとランズロウト領に良くない話となる。取り潰しだけは避けねばならんのでな。」


流石お貴族様、シビアだね。

まぁそう言われると思っていたので、わたしはカルナに伝える。


「カルナ、聞いてた?」

『かしこまりました。それでは。』


カルナが再度ブレスを撃つ。

効果範囲小、火力大のカルナのブレスが悪魔と化したランズロウト伯爵を焼き尽くす……筈だった。

突然、カルナの巨体が吹き飛んだ。

吹き飛ばされたカルナは城の城壁にぶつかり、瓦礫に埋まる。


「カルナ!」


わたしの叫び声の後ろで、さらなる事態の急変が始まっていた。

最近投稿時間がまちまちでごめんなさい

一応、お昼か、夜20時くらいか、どちらかを目処に投稿しています。

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