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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
聖女転生編
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幕間 − ノーマン・ボーマ

やばい、やばい、やばい、やばい。

何だあれは。

何であんなのがこの街にいる。

何であんなのが俺を付け狙う。

あれはヒトが相対してはいけないモノだ。

伝説に語られる魔物の最たるモノ、あれはドラゴンだ。



ノーマンが領主の城の地下の根城にしている空間にそれは突如として顕れた。

ランズロウト伯爵が捕らえろ、と望んだあの女……カルナヴァルである。

何故最初に見た時に気がつかなかったのか。

それはノーマンが彼女を最初に認識したとき、距離が離れていた所為もある。

姿形はヒト種だったが、魔物使いのノーマンにはそれがヒト種でないことは直ぐにわかった。

ヒト種には竜人族と呼ばれる竜種の末裔と呼ばれる種族がいるが、ノーマンはカルナヴァルがそれでないことは即座に理解した。

魔物使いには魔物をある程度見極める【翠眼】というスキルがある。

効果距離は然程長くはないが、対象の魔物のレベルやステータス、簡単なスキルを見破るスキルで、要は対魔物限定の【鑑定】だ。

【翠眼】で「観る」ことができるモノは基本魔物だけ。

ヒト種は「観る」ことができない。

ノーマンは魔物使いとしては優秀な方との自負がある。

【翠眼】のスキルレベルは4、これは魔物使いの中でも一握りしか持ってないトップクラスのスキルレベルで、大体の魔物のステータスやスキルを確認できる。

イルミナ的に言えばスキルレベル4は一般的な常識範囲のスキルレベルだが、この時代の常識ではスキルレベル4というのは達人の域である。

実際このスキルで覗き見できない魔物にノーマンは遭ったことがなかった。

そう、過去形だ。

ノーマンの【翠眼】では彼女を観ることは出来い。

【翠眼】は単純に対魔物限定の鑑定スキルなのだが、その成功判定にはスキルレベルとステータス差、抵抗スキルが関係する。

スキルレベルに関して言えば、カルナヴァルに【鑑定防御】が無いので問題なく通るのだが、圧倒的にステータスに差がある。

結果ノーマンに開示されたカルナヴァルの情報……レベル25のオニキスドラゴン。

ドラゴンなぞ現在に生きる者にとっては伝説上の怪物だ。

古い文献にはドラゴンと対峙し、叩き伏せ、使い魔とした賢者などもいたとあるがノーマンは信じていない。

ヒト種にドラゴンがどうにかできるわけがない、というのが当たり前の結論だ。

そもそもドラゴンは現在では存在が確認できない程に個体数が少ない。

その幻ともいえる魔物の王、圧倒的な魔力と威圧感、暴力的なまでの存在感、ヒト種のフリをしていても、隠しきれないモノがノーマンに近づいていく。



逃げおおせたのは偶々だ。

俺が魔物を捕まえる時にやる、魔物の魔力制御を狂わせるスキル【魔力狂流】を瞬間に試していた。

いや、試したんじゃなく、反射的に使ってしまっただけだ。

結果的にはそれが功を奏し、僅か一瞬だけだがドラゴンの意識を逸らすことができたらしい。

俺はかつて魔王様から賜った転移アイテムを起動し、その場から逃げおおせた。

これは一回きりの使い切りアイテムで、対となるポイント指定アイテムを予め設置して置き、その場所に跳ぶ。

かつて魔王様が古の賢者の作りし迷宮から命からがら持ち帰ったアイテムの1つで、俺の献身を認めて下賜していただいた宝重だ。

そんな宝重を使ってまで逃げた先は、この街で俺が拠点としている魔物の見世物屋。

ここに3年ほど居を構え、徐々にこの街の領主に取り入り、漸く信頼を得るところまで漕ぎ着けたのだが、もうそれも終わりだ。

あんなバケモノ、相手にできるわけがない。

だがやつは必ず俺を追ってくるだろう。

もうこの街には居られない。

しかしこのまま逃げられるとは思えない。

くそっ、転移ポイントを魔族領の俺の拠点に指定しておけばこんなことにはならなかったのに……


こうなれば最後の手を使うしかない。

俺は以前から仕込んでいたあるアイテムを起動させる。

そのアイテムも魔王様からいただいたものだが、宝重というわけではない。

魔王様からいただいたアイテムの名前は「悪魔の種子」。

動物に植え付けることで、悪魔を降ろすと言われている魔族の切り札だ。

それを使えば、街はに間違いなく大混乱を引き起こせるハズ。

その間隙を縫ってなんとか逃げることができれば……



「ええい、トーガのやつは何処へいったのだ。」


何もかもが上手くいかない。

貴族院から戻ってきた息子が事あるごとに反発し、それが癪に触る。

こうなればいっそ、とノーマンに息子を始末してもらうことを依頼した。

だが、暗殺の成功を確認したとの報を最後にノーマンと連絡が取れない。

そして、死んでいるはずのトーガもまた、その姿を忽然と消した。


「一体どうなっておるのだ!」


叫びはするが、答える者は居ない。

ただ怯える側女が伯の部屋から逃げていくだけだ。

そして、その次の瞬間に事は起こった。

最初は背中が、そして腹が、腕が足がと次々と肥大化していく。

もともと肥満体だった伯爵の身体はみるみるうちに巨大化し、城の壁や屋根を突き破っていく。

表現しきれない奇怪な声が耳に障る音となって周囲に谺する。

そして身体の巨大化が治ったとき、そこには醜悪な「ナニカ」がいた。

※スキル講座

【翠眼】特殊鑑定スキル

魔物使い専用の対魔物用鑑定スキル。

ヒト種には使えない。

対象が限定されている分、【能力鑑定】と同レベルだとしても読み取れる情報量は多め。

ただし効果範囲は短く、目の前くらいにいないと鑑定できない。

また、【能力鑑定】と違い、成功判定にステータス差が関係する。


【魔物狂流】クラス限定特殊スキル

魔物使い専用の魔物の魔力制御を一時的に狂わせるスキル。

魔物はサイズに関わらず、体内に魔石を有し、大なり小なり魔力に頼って動いているため、体内の魔力の流れを狂わされると一時的に混乱に陥る。

種や同種でも個体差はあるものの、その間隙に捕縛や思考制御のスキルで捕まえるのが魔物使いのやり方になる。



ちなみにノーマンが使った転移アイテムは有効距離があるため、魔族領に転移ポイントを指定していたとしても遠すぎて発動しません。

彼はカルナに目を付けられた時点で詰んでいるんです。


PVとブクマありがとうございます。

日々ちょっとずつ増えていて、凄く励みになります。

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