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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
聖女転生編
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幕間 – ある青年の悩み

今回は短めです

トーガ・ランズロウトは憂いていた。

この春に無事貴族院を卒業し、故郷であるランズロウト領に帰ってきた。

貴族院での生活はトーガにある改革をもたらしていた。


トーガ・ランズロウトは貴族院に入るまでは父であるオリバー・ランズロウトの生き写しの様な少年だった。

仕方のないことではある。

子は親を見て育つ。少年が手本とすべき父の姿がアレなのだ。

トーガ少年は傲慢が服を着て歩いている様な父を手本として、傲慢に育った。

だが、彼は幸運にもその環境を是正する機会に恵まれた。

それが貴族院である。


王国の貴族子弟ないし王族は爵位の高低、領地の有無に関わらず全て王立貴族院にて学ぶことが義務付けられている。

貴族院では武術や魔法などの実技的な技術スキルの他に戦術、戦略といった軍戦座学、国の歴史、国外の歴史、算術や語学などを学ぶが、その中で王侯貴族としての在り方を教わる。

いわゆるノブレスオブリージュというものだ。ここで、トーガ少年のいままでの生き方は完膚なきまでに打ちのめされる。

また、友人にも恵まれた。

貴族院では身分の上下は基本的に考慮されない。

建前上、院内は爵位の高低を介せず、平等に学生として扱われる。

これは爵位の低い教官でも王族や上級貴族をきちんと評価できるように王自らが決めた規定であり、貴族院発足以降変わらない不文律となっている。

もちろん、そうはいっても身分の差は厳然としてあるが、名目上は院内での上下関係はいいとこ年齢による先輩後輩が主であり、爵位による差で評価が変わることはないとされている。

となれば同級生同士で交流する機会がどうしても増えるし、親の派閥の壁を超えて仲が良くなることもある。

トーガはとあるグループと仲良くなった。それは父が属するモートディラウト公爵家の派閥ではなく、父とは政敵であるエルヴェレスト公爵家の派閥でもなかった。

トーガが知己を得たのは誰を隠そう、この国の王子であった。

パルマス王国第二王子、エルディラン・ド・パルマセウス。

エルディランはパルマス王国の第二王子ではあるが第一王妃の子であり、兄王子のガストーニュが正式な王妃の子ではないこともあり、貴族院卒業後は正式に太子に立てられるだろうと目されていた。つまりは次代の国王である。

エルディランとその仲間たちと交わることでトーガは自分が如何に矮小な感性で生きて来たかを思い知る。

それは父が如何に貴族として恥ずかしい生き方をしているか、己が如何に恥ずかしい生き方をしているかの証左であった。


貴族院は数えで13の歳の春に入学し、5年を経て18の歳の春に卒業する。

その間に貴族としての必要な知識と技術を学ぶのだが、そこは多感な少年少女である。

同期生や先輩後輩と交流を図り、コネクションを広げるのも貴族として必要なことである。

人によっては在学中に婚約を決めるものまでいる。

流石に貴族同士の婚約が、当人たちの意思だけで決定されることは稀ではあるが。

トーガはエルディランやその仲間たちと活発に交流し、一領主としてだけでなく、国として一貴族がどのようにすればいいかを考えるようになった。

まして、ランズロウトは王国の辺境であっても他が無視できないほどの大領だ。

父のように目先の利益に囚われ、私腹を肥やすことに精を出していてはいけない。

それは最も恥ずべきことで、貴族の本来の在り方からはもっとも対極に位置するものだと、貴族院に在学していた5年間で学んだのだ。

そして卒業し、王子や仲間たちと別れ、実家に戻って来てみれば変わらぬ父と、父に毒されたままの弟、賄賂を送って恥ともしない豪商たち。

このままではいけない、とトーガは真剣に領地の未来を憂う。

帰郷してから数ヶ月、トーガは父であるランズロウト伯爵に再三行いを改めるように進言した。

しかしランズロウト伯爵はその進言を歯牙にもかけず、むしろトーガを疎ましく思い始めていた。

このままではトーガを廃嫡にし、次男であるアーヘルを跡取りにしかねない勢いだった。


その日もトーガは父の就寝前に私室を訪れ、最早何度となく言い聞かせた貴族の在り方を父に説いたが、結果は思わしくなく、怒鳴り散らされ追い出されたところだった。

このままではいけない、そうは思っても彼にはそれを改革する力など無かったのである。

着地点は見えているのに、そこに辿り着くまでがなんと難しいことか

もっと構成力が欲しい

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