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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
聖女転生編
17/159

16 魔族

昨日は投稿を忘れていました。すみません。

わたしが転生する前。

わたしはひとりの魔族と知り合いだった。

非常に一般的な言い方をすれば、数少ないわたしの友人だった。

友の名はルーデルフェルト、名前の前半部分が好きじゃないから後半部分で呼んでほしい、なんて言っていた。

わたしはフェルって呼んでいた。どこにでもいる普通の女の子だった。

そう、魔族なんて大仰に呼ばれてるけど、人間よりちょっと内包魔力が高くて、ちょっと身体能力が高いだけの普通のヒト達だ。

ルーデルフェルトは本当に普通の子で、趣味はお菓子作りと手芸という非常に女子力の高い、笑うと女性のわたしでさえノックアウトされる様な可愛い子だった。

ふとしたきっかけから仲良くなり、わたしはよく彼女の家に遊びに行っていた。

基本魔導の研究のためにあちこちと放浪癖のあるわたしだが、彼女の家には定期的に寄っていた気がする。

そのくらいわたしと彼女は気があった。

……彼女はごく普通の女の子だったが、彼女の家は普通じゃなかったけどね。

彼女の父は魔王だった。


魔王といっても、そんなに襟を正す必要はない。

魔族達の暮らす国の王様、だから魔王だ。

わたしの知る魔王は子煩悩で、所謂親バカ、いやバカ親だった。

娘のルーデルフェルトをこれでもかと溺愛しており、その友人であるわたしに嫉妬するくらいに馬鹿だった。

あるとき、「娘を賭けて決闘だ!」などという極め付けに馬鹿なことをほざいたのでコテンパンにのしてあげた。

その後は普通に仲良くなった。

魔族の寿命は人間よりはるかに長く、それ故に出生率が低いために魔族の親は親バカになる率が高いとか言ってたな。

半分いい訳だった様な気もするけどね。

付き合ってみれば普通にどこにでもいる気のいいおっちゃんだった。


だからこそ、信じられなかった。

魔王が魔族を率いて人間に宣戦布告?

あのおっちゃんが!?

あり得ない。


「カタリナ様、その魔族の宣戦布告の話、もう少し詳しくお願いします。」

「そうは言っても、妾が知ってることなどもう無いぞ。戦のことは軍が管理しておるし、その軍は基本政敵の手中じゃからの。」


つまり、国軍にツテを作らなければ情報は手に入らないってことか。

直接魔族領に吶喊してみてもいいけど、何度も訪れていたハズの魔族の城に【空間扉】を開く事がどうにもできない。

【空間扉】は一度訪れたことのある場所に瞬時に移動できる空間魔法レベル7の便利スキルだけど、イメージを明確に確立しなければ空間をつなげる事ができない。

異動先に大きな変化があればイメージが崩れるので、スキルが発動しないというなかなかに条件の厳しいスキルだ。

この条件の所為で各地にあるはずのわたしの工房に道が開けないのだ。

わたしの知る工房のイメージと数千年経った現実の工房に差異があるのは明白だ。

転生前から2000年以上経ってるし、城そのものがない可能性もある。

そもそも魔族領自体、わたしの知ってる版図と同じとは限らないしね。


「一度行ってみる必要があるなぁ。」


工房もそうだけど、各地に実際に足を運んで現状を把握する必要がある。

魔族の寿命は平均で3000〜5000歳くらいあったはずだ。

幅があるのは内包魔力によって大幅に変動するからだが、ルーデルフェルトも魔王も内包魔力は相当に高い。

一般の魔族よりもさらに長生きだろう。

まだ亡くなるような年齢ではないはず。

特にルーデルフェルトはわたしと付き合っていた期間はまだ200歳にも満たない若輩だったはずだ。


「どこに行く気じゃ?」

「魔族領にですかね。まぁ、今すぐの話じゃありません。何より情報が不足してますので、まずはやるべきことをひとつひとつ潰して行こうと思います。

差し当たってはランズロウト伯爵の件を終えてからですね。」

「其方が言うと冗談に聞こえぬ。」

「冗談を言ったつもりはないのですが……」


今の魔族が人間と対立してること自体はどうでもいいし、仮にわたしと敵対するなら全て潰すだけだけど、ルーデルフェルトはわたしの友だ。

友人の安否はどうしたって気になる。親父さんの方はまぁついでに気にかけてやってもいい。


「まぁ、何をするにしろ先ずは目の前の案件です。カタリナ様、率直にお聞きしますが、単純にランズロウト伯爵を排除することは是ですか? 非ですか?」

「非じゃな。なんだかんだ言ってあの男が居なくなることは他に与える影響が大き過ぎる。」

「壊れた歯車でも取り除いてしまったら全体が止まってしまうと言うことですか。」


ランズロウト領は存在が大き過ぎる。

伯爵の不正を暴いて取り潰し、と言う話にでもなれば大きな混乱は避けられない。


「ならば代わりの歯車は用意できないですか。」

「代わりの歯車か……ランズロウト伯爵には息子が二人おるが、使えるかのう。」


伯爵を内々に処理して、次代の伯爵をエルヴェレストに取り込む事ができれば理想的ではある。


「ご子息お二人の為人が知りたいところですね。」

「会おうと思えば会えるとは思うが、妾が会うと色々面倒な噂が立つやも知れぬのう。」


確かにランズロウト伯の子が幾つなのかは知らないが、公爵家の姫が他の未婚の貴族の息子に個人的に会ったことが知れたらあまり面白くない噂が立つのは明白だ。

特にカタリナはこれから貴族院に上がる、つまり社交界デヴューするようなものだから、結婚話も出てくるだろうしね。


「まぁなんとかしますよ。わたしが個人的に会ってみても良いでしょうしね。」

※スキル講座

【空間扉】空間魔法レベル7

みんな大好き移動魔法。

移動先の景色を明確に思い浮かべなければならない上、イメージと現実に齟齬がある場合発動すらしないので、実際には使い勝手は非常に悪い。

例えば自然災害などで移動先のイメージが崩れると発動しないので、移動先の風景が変わらない様に対策を施すなどの対処が必要となったりする。

イメージさえ正確ならダンジョンだろうが問題なく跳べるが、対抗魔法も存在するので万全な魔法ではない。

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