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小さな賢者の魔導学  作者: 五泉 昌
聖女転生編
11/159

11 お父さんは心配性

さて、裏山から麓の村に降りてくるとあたりが騒然としていた。

村の人たちがざわざわと何やら集まって話をしている。

何事かと思っていたら、父がわたしを見つけてホッとした顔をしていた。


「イルミナ、良かった。無事だったか。」

「お父さん? 無事ってどういう事?」

「いや、村の裏山からとてつもなく大きな魔力を感じたから、気になってお前を探したんだよ。」

そしたら母さんがお前が裏山に行ったって聞いてな。【伝言】しても繋がらないし、これから向かうところだったんだ。」


……あっ。

しまった、村の人たちは【魔力感知】持ってるんだった。

その中には特に感知に特化して鋭い人もいるし、お父さんもかなり感知力が高い。

お父さんは警備隊の隊長という立場なので、周囲の索敵に力を注いでいるのだ。

スキルは使い続ければ伸びる。

お父さんの【魔力感知】と【気配感知】は突出して成長していた。

その高いスキルレベルで、いきなり村の裏山から尋常じゃ無い量の魔力を感じたら、大騒ぎにもなるよねぇ。たぶん魔力の圧が強すぎて【伝言】程度の魔法スキルでは魔力が通らなかったんだな。

【伝言】スキルの弱点で、周囲の魔力濃度次第ではがスキル効果が阻害されることがある。

言葉に雑音が入ったり、まったく通じなくなってしまうこともある。

まぁ、使い手の力量次第なんだけどね。

カルナは今は人型だから抑えてるけど、本来の姿での内包魔力ランクはSランクを超えるハズ。

最強種たるドラゴンの、さらに上位種なんだからね。

まぁ、村の人たちならバラしても問題ないか。


「えーっと、お父さんごめんなさい。この騒ぎわたしの所為だわ。」

「ん? どういうことだ?」


その疑問に、わたしは後ろに控えていたカルナを紹介する。


「紹介するね。わたしと従属契約した魔物で、オニキスドラゴンのカルナヴァル。」

「……は?」


わたしの言葉に、父だけでなくその場にいた村の人たちは全員が呆然とする。


「ただいま紹介に預かりました、オニキスドラゴンのカルナヴァルと申します。

故あってフィオ……イルミナ殿の従者となりました。カルナと呼んでください。以後、お見知り置きを。」

「!?」


村の人たちからはとりあえず言葉は返ってこない。

まぁ、突然ツノと尻尾付けた美少女がやってきて、「わたしはドラゴンです。よろしくね」とか言われても対応に困るよねぇ。


「あーっと、そのカルナヴァルさん?」

「はい、マスターのお父上とお見受けしました。我のことはどうぞ、カルナとお呼びください。」

「は、はは……お父上……」


むっ、なんか鼻の下伸ばしてるぞ。

そこで気づいた。

カルナの格好が素肌にボロマント一枚だったのだ。

もともと裸のワケだし、あまり気にしてなかった。


「ちょっとお父さん、いやらしい目でカルナを見ない! お母さんに言いつけるよ!」

「な、何を言ってるんだイルミナ! お父さんがそんな目で見るわけないだろう!」

「どうかなー、カルナ超絶美少女だし、エロい身体付きしてるもんなー、わたしなんか比べ物にならないくらい。」

「何を馬鹿なことを。イルミナはとても可愛いぞ、なんてったって俺とリラの娘なんだからな!」


この人は人前で何を言ってるんだ!

周囲からは変な笑い声が聞こえてくるし!

もう!


「良いお父上ですね、マスター。」

「ん、まぁね。かなり親バカだけどね。」

「ふふっ」


うわぁ、この子なんて魅力的に微笑うんだろう。

女性にわたしでもドキッとする微笑みだ。

見渡せば周りの男衆が全員骨抜きになっているし。


「と、とりあえずカルナは服をなんとかしないと。お母さんの服なら着られるかな。」

「あ、あぁ。とりあえず家に行くか。イルミナ、後で事情を説明してもらうぞ。」

「もちろん。」


カルナは思った通り、母の服がぴったりだった。

うちの母もボンキュッボンでスタイルいいからなぁ。

……羨ましくなんかないやい。


「それで、改めてどういうことなんだ?」

「裏山デ遊ンデタラ、どらごんガ襲ッテキタノデブチノメシテ従エサセマシタ。」


うん、すごく棒読み。

どうやらわたしに演技の才能はないらしい。

でも大筋は間違いじゃないんだよなコレ。

昔、デマヴマ山っていうドラゴンの集落のある山に必要な魔法触媒を採りに行ったとき、ドラゴンに絡まれてぶちのめしたのがカルナとの馴れ初めだし、大体合ってるよね。

そういや、デマヴマ山にはわたしの工房のひとつがあったはずなんだけど、どうなっているだろう?


「はぁ、今更イルミナが何をしようと驚かないつもりではいたんだが、まさかドラゴンとは……」


ちなみにカルナがドラゴンであることは問題なく受け入れられた。

着替えるときにお母さんが手伝ったんだけど、ツノと尻尾が間違いなく本物なのを確認してもらったしね。


「カルナは人に危害を加えるような子じゃないから安心してだいじょうぶだよ。」


今はね。昔はヤンチャしてたけど。


「あぁ、いや、お父さんもそこいらは心配してない。お前が大丈夫だというなら大丈夫なんだろ。」


いや、お父さんわたしのこと信頼しすぎ。

ふつうは色々懸念するでしょ。

特にドラゴンといえば伝説の魔物とも、幻獣の王とも呼ばれる世界の最強種の一角だ。

忌避する方が当たり前で、それを娘のひとことで問題ないとするのは流石に危機管理的にどうなんだろう。

まぁ、わたし的には有難いし、そんだけ信頼してくれて感謝ものではある。

まぁ実際にドラゴン形態のカルナを見て同じことが言えるかは別だけど。

あれは大きい分、威圧感あるしな。

ふとチラチラした視線を感じる。

主にカルナに向けられたその視線の出所は誰でもない、フレッドだ。


「何をコソコソしてんのよ。ちゃんとこっちきて挨拶しなさい。」


わたしはフレッドに挨拶を促す。

これからわたしと行動を共にするんだから、家族みたいなものになるわけだし。


「え、あ、うん。」

「マスター、こちらの少年は?」

「ん、弟のフレデリック。フレッドって呼んであげて。色々仕込んでるから、カルナも暇な時は遊んであげて。」

「それはそれは。初めまして、弟君。イルミナ殿の従属魔でオニキスドラゴンのカルナヴァルです。どうぞカルナとお呼びください。」

「え、あ、うん、よろしくお願いします。」


なんで真っ赤なのこの子。変な子ねぇ。


「それで、イルミナは何をさせるためにカルナさんと従属契約をしたんだ?」

「主に助手だね。あとは移動手段。」

「移動手段?」

「あっ、そうだ。お父さん、わたし明日からちょっと領都まで行ってくるから。」


わたしはカルナを喚び出した元々の理由を思い出した。


「領都? なんで。」

「領主に話つけてくる。」

「話?」

「うん、不当にこの村を詰問した理由と、その精神的苦痛をに伴う謝罪を聞いてくる。」

「なっ……!」


そうそう、もともとの理由はこれだった。

カルナを喚び出したのは思いつきだったけど、旧知に逢えるのは悪くなかったね。


「ちょ、ちょっとまて。お父さん何か聞き間違いとかしたかな?」

「聞き間違いとかじゃなくて、現実的な話だよ。

大体あんなこと言われてわたしが黙ってるわけないじゃない。そもそも不当に魔法の情報を秘匿してそれを権力の道具にしてる様な今の貴族って必要ないんだよね。

この村に限って言えば農耕や狩猟で自給自足も成り立っているし、外敵からの索敵防衛も問題ないもん。領地として貴族様に守ってもらう必要もないよね。

第一ちゃんと租税も納めているのに、どういう意図でこの村に難癖付けに来たのかハッキリさせないとわたし嫌なのよ。

だから明日ちょっと領主に話をしてくるよ。」


将来的にはこの辺境の近辺の村を統合して、魔法を周知させて、完全に貴族領から独立させてもいい。

防衛力ならゴーレムでもなんでも造ればいいし。

ゴーレムはいいぞ、コアを魔力循環式にすれば半永久的に稼働するし、餌の心配もない。

力も強いし、設計次第では戦闘用、工作用、農耕用などに特化させることもできるし。


「領都って、馬車で丸一日掛かるぞ。歩いたら大人の足でも4〜5日は掛かる。お前の足では何日かかるかわからんぞ。」

「大丈夫だよ、カルナに乗っていくから。領都まで半日も掛からないよ。」

「それで移動手段か……」

「大丈夫だって。村に悪いようには絶対にしないから。」

「もう、何を言っても無駄か……危険はないのか? 本当に大丈夫なんだな!?」

「もう、心配性だなぁお父さんは。」


まぁ、最悪どんな手を講じてでも村は守る。

転生して家族に触れ合って、わたしにとって村はもう掛け替えのない場所になってしまったのだから。


※スキル講座

【魔力感知】感知スキル

世界の魔力を感知するスキル(まんまですね)

自分の内包魔力のみならず、対峙する相手の内包魔力や周辺に漂う空間魔力もスキルレベル次第で感知できる。

内包魔力は強さの指針になるので、対象との力の差を測るのに便利なスキルでもある。


【気配感知】感知スキル

周辺の生物や魔物の気配を察知するスキル。

この世界の生き物は全て大なり小なり魔力を有しており、その魔力を大雑把に察知するスキルです。

索敵スキルとして優秀で、スキルレベル次第で感知範囲が広がります。

ちなみに魔力が一定以上に強い生物を魔物と呼び、往々にして体内に魔石を有していますが、人型の魔物だけは魔石を持っていません。

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