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幻精鏡界録  作者: 月夜瑠璃
第3章 夢幻の邂逅
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第26話 泡沫の洗礼(3)

 

 全員、武器を構えて臨戦態勢をとるとオーブランもやる気になったようで、一層強く羽ばたく。

 その拍子に羽に纏っていた水が辺りに飛び散り、水溜りを形成する。なんの意味があるかはわからないが、とりあえず触れてはいけないような気がする。

 オーブランは巨体だが、空を飛んでいるせいで距離感が掴みにくい。鎌での斬撃を当てるのはやりにくいだろう。今回は主に魔法で攻めるしかなさそうだ。


「『ディザスター』!」


 鎌から黒い衝撃波を放つ。オーブランは飛び回っているが、当てることが出来た。

 攻撃が当たったことでオーブランは怒り、オレに飛びかかってくる。


「……っ‼︎」


 オーブランの攻撃をなんとかかわす。そいつはクチバシが主な武器のようだが、意外と翼が厄介だ。広げているせいで、この開けている場所でも半分以上を覆ってしまう。

 これじゃあいざという時に退路を絶たれる可能性だってある。逃げ場が無くなれば苦戦は必至だし……それだけはなんとか避けたい。


「さあーて、僕もぼちぼちやるか。『カオス・アポカリプス』!」


 オスクはオーブランの周囲を闇で覆って攻撃した。

 オーブランは視界を奪われたらしく、焦って翼をバタつかせている。

 これはチャンスとフリードとイアも攻撃を加えようとする。


「イア君、僕らも!」


「おう! ……どわあっ⁉︎」


 ところが、イアが足元にあった水溜りに気付かないまま駆け出したせいで見事に足を突っ込んだらしく、派手にすっ転んだ。

 イアはすぐ立ち上がろうとするが、何故だか体勢を戻せない。


「だ、大丈夫ですか、イア君?」


「な、なんだよこれ! 水溜りがやけに深いぜ⁉︎」


 どうやらイアは深さに足をとられているらしい。

 オレも言われるままに見てみると、足であればすっぽりいきそうなくらいの深さがある。だが、ここも元々は平地だったはずだが……。


「ふーん、どうやらあいつの水で深くなる魔力があるみたいだな。厄介ってのはこういうことか」


 オスクは水溜りに大剣を突っ込み、まじまじと観察している。戦闘中にそんなことしてる場合じゃないし、あんなことしたら余計深くなるだろ……。


 とにかく、これは確かに厄介だ。水溜りの一つ一つは小さいのだが、オーブランが羽ばたく度には一つ、また一つと増えていく。このままじゃ、足場が全て奪われかねない。

 何かいい方法は……。


「悩むこと無くない? 魔力とはいえ、水には変わらないぞ」


「……! そうか、フリード!」


 オレが叫ぶとフリードも目的がわかってくれたらしく、すぐに構えた。


「『アイシクルホワイト』!」


 フリードは冷気を空に向かって放つ。

 冷気はたちまち雪として結晶化し、辺り一帯に降り注ぐ。水溜りは冷気の塊である雪が触れたことによって表面がたちまち凍りつき、やがて氷で完全に閉ざされた。


「よっしゃ、これで普通に動けるぜ!」


「でも一時的です……急がないと割れてしまいます」


 なら方法は一つ。割れる前にカタをつければいいだけだ。

 ようやくオーブランも視界が晴れたようで再びくちばしで攻撃を仕掛けてくる。オレらはそれをかわしつつ、魔法を放った。


「ちぇっ、こいつやっぱり火は効かないな」


「すみません、僕も氷は……。性質は同じなので有効打になりませんね」


「得意不得意は仕方ない。オレとオスクであいつを落とす」


「ハイハイ、最初からそのつもりで来たんだし。さっさとやってやるまでさ」


 オレとオスクは前線に出て武器を構え直し、オーブランを証明から迎え撃つ体勢に入る。

 イアとフリードは魔法の相性が悪いからオレとオスクの援護にまわった。オーブランは飛び回っているせいでなかなか攻撃が当たりにくいが、じわじわと体力を削れている。


 オーブランも飛びっぱなしで疲れたらしく、地表に降り立って突進しようとしてきた!


「おっと、危ねえ!」


「ち、地上でも問題ないんですね」


 オーブランの身体が大きくて、ここでオレらが動ける場所がほとんど奪われてしまう。それだけこいつも追い詰められていることの証拠だが、力押しされてしまいそうだ。

 オーブランは突進を何度も仕掛けてきて、あまりにも間髪入れずにやるものだから何度か当たってしまう。これじゃ、あいつの思う壺だ。

 なんとか深手を負わせないと……!


 そんな時、オーブランが自分で仕掛けた水溜りの上を通り、重みで氷が砕け散った!

 元々デカイ図体のオーブランに、自分で生み出した水溜りといえどこれはたまらない。足を盛大に水溜り取られて、バサバサともがいている。


「ははっ! あいつも案外ドジだな!」


「チャンスだぜ! なんとか動きを止められないか?」


「任せてください!」


 フリードは冷気をオーブランの足元に放って水溜りごと凍らせた。

 氷に足を取られたオーブランはなんとか拘束から逃れようとするが、フリードの魔法は確実に動きを抑え込んでくれた。身動きが取れないその状態は最早格好の的だ。


「やるぞ、オスク!」


「言われなくてもわかってるっての!」


 オーブランが逃げ出さないうちにオレとオスクは距離をつめ、ここぞとばかりにそれぞれの得物を大きく振り上げる。


「『カタストロフィ』!」


「『ブラッドアビス』!」


 オレはより強い衝撃波を、オスクは赤黒い閃光をオーブランに叩き込む。その二つの魔法は動けないでいるオーブランに直撃し、爆発を起こした……!

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