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幻精鏡界録  作者: 月夜瑠璃
第16章 追い求めた果てに─ Spirit Collapse ─
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第217話 烈烈たる剣乱舞(2)

 

 それから第三、第四試合と進んでいき……次がとうとう第五試合、オスクの出番となった。

 フィールドに投影されている情報によれば、オスクの対戦相手は3人組の妖精らしい。一般的に妖精より精霊の方が能力も高いし、体格でも勝っているけれど、1対3という人数差、さらに今回が初出場でオスクの戦闘力を知らない観客達はほとんどがオスクが負けると見ているようだ。そのため勝敗予想のコインの配当率……オッズもオスク側が12.8倍と跳ね上がっている。

 賭けたコインが100枚と少額でも的中すれば1280枚に増える……この手のことについて疎い私でも、この数字がかなり高いことはすぐにわかった。


「次がオスクさんの番なんだよね。オスクさんって、どんな風に戦うのかなぁ」


「闇の魔法と、大剣を使うんだ。魔法は攻撃以外にも暗闇で視界を奪う他にも、障壁を作ったり、標的の動きを完全に押さえ込んだりとか、その場に応じて色々できる。まあ、とにかくトリッキーな奴だな」


「魔法の使い方を参考にするのは難しいかもしれないけど、武器の扱いはアレウスにも良い勉強になるんじゃないかな。昨日見せてくれた剣って両手剣だったよね?」


 ルーザが説明してくれた後に私がそう尋ねると、アレウスはすぐさまうなずいた。

 アルマドゥラ帝国の皇帝が継承していくものにして、それに宿る皇族の血筋である妖精だけがその力を最大限に引き出せるという、特別な剣。前代皇帝、つまりはアレウスの父親に教わる筈だったという力の繋ぎ方もまだわからないままだけど、小さな積み重ねがきっかけになるかもしれない。誰かの上手いと思う戦法を見て吸収していくのも立派な経験だ。


「両手剣っつーと、やっぱ片手剣よりは重いよな。どういう振り方なら剣に振り回されないだとか、どんな足腰の構え方で体勢を維持してるのかとか、良い姿勢ってのがわかるんじゃねぇか?」


「あっ、うん。剣が大きいから、ぼくかまえるだけで精いっぱいなんだ。大きくふろうとすると、ぼくの方が飛んでっちゃいそうになるの」


「それについては体格の問題もあるかもしれませんね。でも、いつか使いこなせるよう、明確なイメージを描くためにもオスクさんの戦い方は良い刺激になると思いますよ」


「うー……うん。早くおっきくなりたいなぁ」


 フリードから「体格」と聞いてアレウスは不満そうに頬をぷぅと風船のように膨らませる。

 いくらたくさん勉強して、鍛錬に励んでも身体そのものについては月日の経過に任せるしかないからな……こればっかりは我慢してもらうしかない。まあ、アレウスもこれから成長期が来るだろうし、もう少しの辛抱だ。


『続きまして、第五試合へと移ります! 第五試合の出場者は今回が初のエントリー、オスク選手だー!』


 実況担当のその紹介と共に、今まで待機していたであろうオスクがフィールド上に姿を現した。観客達も、その大多数がオスクが勝つと思っていないにしても、初めての出場者だということもあってかオスクがどんな人物なのかと、興味深そうな視線を向けていた。

 こういった場があんまり得意ではないオスク本人は、歓声も相まってうんざりした表情を浮かべていたけれど。

 それからしばらくしない内に、オスクの対戦相手である3人組の妖精達もアリーナの中に入場してきた。


「なーんだ。相手が精霊って聞いてビビッちまってたけど、あのヘリオスってヤツより細いし、全然弱そうじゃん」


「こっちは3人いるしよ。勝ちは決まりだな」


 なんて、3人組はオスクのことをジロジロと眺めた後に、まだ試合が始まってすらいないのに自分達の勝利を確信している様子だ。

 油断しているにも程がある態度と発言。対戦相手といえど初対面にもかかわらず失礼極まりないし、見た目で判断して全て理解した気でいる時点で浅はかとしか言いようがない。


「……第一試合に出てたヤツらとはまた別の意味で低俗な連中だな。あいつらの実力も大方想像がつく」


「う、うん。オスクがあの3人をおもちゃにしないといいけど」


 ルーザも私も、あんな相手にオスクが負けるだなんて微塵も思っていない。昔よりは力を失ってしまっているようだけど、オスクだって大精霊。普通の妖精に遅れを取る筈がない。逆にオスクがあの3人を色んな意味で振り回したりしないか、そっちの方が心配だ。


「やーれやれ。見た目で決めつけるとか、随分とまあ短絡的なことで。それも年齢と外見が合致しない精霊相手にさ。恥ずかしくないわけ?」


「へん。お前がもし強かったとしてもこっちは3人掛かりなんだ。お前に勝ち目があるわけねーだろ!」


「ふーん。じゃあお前らが僕に一発でも当てられたらお前らの勝ちってことにしてもいいけど? こっちだってさっさとこんなとこオサラバしたいんでね」


「言ったな? 3秒で終わらせてやるから覚悟しやがれ!」


 なんて、オスクがそういった提案をするものだから、3人組はさらに調子に乗ってしまったようだ。こっちから見ればいくら実力差が明白だとはいえ流石にそれは……と思ってルーザと顔を見合わせるけど、できる確証が無いなら最初からそんな話は持ちかけないか、と2人でため息をつく。

 もしかしたら、まだ見てないからとはいえ自分が負けると思っている大勢の観客達への仕返しと、どこかで成り行きを見守っているであろうヘリオスさんへのアピールなのかもしれない。……いつも相手をおちょくって笑い飛ばしているオスクのことだ。早く終わらせたいというのも本音なんだろうけど、観客達の予想を大きく裏切って場を引っ掻き回したい悪戯心もあるからに違いない。

 なるべく穏便に済めばいいんだけど。そう思っていたら、いよいよ試合が始まった。

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