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幻精鏡界録  作者: 月夜瑠璃
第16章 追い求めた果てに─ Spirit Collapse ─
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第215話 定めた標的へ(1)

 

 それからダーツゲームができる場所へと移動した私達。そこにズラリと並んでいるダーツボードは妖精の体格に合わせたものと、精霊の体格に合わせたものの2種類の高さが用意されていて。フユキがもらってきたパンフレットによく息抜きに利用されていると記載されていた通り、今ゲームを楽しんでいる利用客も他のゲームと比べてリラックスしているのが見て取れる。

 これでビギナーランクを獲得するためにコインを5000枚稼がなくてはならないのだけど……ゲームを始める前に、ルールをちゃんと確認しておきたいな。ゲームの進め方もそうだけど、比較的簡単そうなルールの存在だとかも。指定の枚数を稼ぐだけなら、時間が多少かかってしまっても確実なものを選びたい。


「フユキ、そのパンフレットにルールの説明も書いてあったりする?」


「もちろん。ええと、小冊子によると規則は大きく3つに分かれているようだね。得点を積み重ねる『カウントアップ』、持ち点を減らして丁度0点にする『01(ゼロワン)』、自分の陣地を獲得した後に点を稼いで競う『クリケット』。クリケット以外の2つは自分一人でやるのも良し、ゼロワンは2人で挑戦するのも良し。それぞれ店員と競うことも可能のようだ」


「へー。ダーツって点を減らしてくルールもあるんだな。普通、ゲームつったら点を取り合っていくもんなのにさ」


「狙った数字にダーツを当てる、っていうゲームだからこそ成立するルールなんだろうね。それで、コインが得られる枚数が一番多いのがクリケットで、その次がゼロワンなのか。店員と競うと勝てた時はコインの枚数がさらに多くなるみたいだけど……」


 どんなルールがあるのかがわかったところで、詳細を知るためにフユキが手にしているパンフレットを一緒に見せてもらう。

 ……成る程。定番のルールがゼロワンで、クリケットは3回ヒットさせた箇所を自分の陣地にできて、そこへまたヒットさせることで初めて得点になるのか。ゲームで使用するボードの箇所も決められている上に、そういった性質上、同じ場所に連続で当てる技術が必要になってくる。

 得点を重ねるか、相手の妨害を優先するか。心理戦のような駆け引きが楽しめるルールではあるのだろうけど、パンフレットにも書かれている通り、クリケットは慣れてきてから挑戦した方がいいルールのようだ。初心者の私は避けておくべきだろうな。


「ゼロワンが定番のルールっていっても、初めてでピッタリ0点を狙うっていうのはちょっと難しいんじゃないかしら? カウントアップなら枚数こそ少なくなっちゃうけど、400点も取れば50枚はもらえるみたいだし、練習するにはもってこいね。それに、アワードを獲得すればもらえる枚数にボーナスも加算されていくらしいわ」


「えとえと……そのアワードとは何なのでしょう?」


「1ラウンド3本ずつダーツを投げるんだが、その1ラウンドごとに獲得した点数、ダーツボードに刺さった位置が特定の条件を満たした時に得られるその名通り表彰みたいなものらしい。本来は演出の一種のようだが、ここでは取るごとに報酬も膨らむってわけだな」


「ふーん。それを狙っていけば数十回やる必要も無くなるってことか。ま、それも慣れればの話だろうけどさ。結局最後はやる本人が決めることだけど、どうすんの?」


「うん。素直にカウントアップにしておく。それと、店員と競うのも今回はパスかな」


 一通りルールを確認したところで投げかけられたオスクの言葉に、私は迷うことなくそう返した。

 何回もゲームを繰り返すことになるけど、堅実にコインの枚数を重ねていけるものが一番だ。集中力は……まあ疲れてきたら休憩を挟めばなんとかなるだろう。何事も挑戦だ、とにかくやってみよう。


 ダーツゲームをするにはどのルールでもコイン100枚を支払う必要があるようだ。カウントアップで400点を獲得しても50枚のマイナスになってしまうけど、稼ぐために来たわけではないし、それにランクを獲得するための条件はゲームで得たコインの合計枚数だから問題無しだ。

 やるなら早く済ませてしまおうと、私は受付の店員に一人でカウントアップのルールをすることを伝えた後、コインを支払ってダーツの矢を受け取った。


「ルージュさんがゲームをするのは……この一番隅のボードですね。この位置だと他の利用客と接触も避けられますし、ラッキーでしたね」


「うーん。周りでゲームしてるほかのお客さん、けっこう近くで投げてるなって思ったけど、正面からだと遠く見えるなぁ」


「確かに……」


 こういった的当てのゲームには当然というべきか、ボードとの間に取る距離にも決まりがあった。ダーツの場合、それは2メートル半未満と言ったところ。

 一番隅にあるボードを使用することになった分、ここに来るまでゲームを楽しんでいる多くの利用客の様子が私達の目に入ってきていた。アレウスの言う通り、そこから見ている分には割と近距離から投げているように思えたのだけど、いざボードの前に立ってみるとそれなりに距離があるように感じる。

 目の前に佇む、放射状に線が伸びていて、その区切られた枠内が赤と黒、白の三色のみで彩られているダーツボード。それなりにサイズもあるから、矢を当てられないことはないと思うけど……。


「……っと、そうだ。初めてだからボードの見方も全然わかってないんだった」


「うーんとね。得点は外側に書いてある数字の通りなんだけど、真ん中がブル、50点。外側の輪っかみたいな枠はダブルっていって、得点が2倍になるんだって。それで、ブルとダブルの間にある内側の輪っかの枠がトリプル、得点が3倍になる場所みたいだよ」


「あ、成る程。ダブルとかトリプルを狙うことで高得点を狙っていく訳なのか。400点って聞くと大分大きな数字に思えたけど、それを聞くと充分手が届きそうな範囲に思えてくるね」


 私がそうふとこぼすと、エメラがすかさずフユキの手元のパンフレットを覗き込んで解説してくれて、その説明でドラクも納得がいったようにうなずく。

 コインをもらえる最低ラインらしい400点を取ることさえギリギリになってしまうかと思ってたけど、それならばそう難しくないのかもしれない。こういった要素もアワードを獲得するに関わってきそうだけど、それは高得点を狙えるようになってからかな。


「ん? んじゃ、ど真ん中よりその丁度真上にある20点のトリプルを狙えばいいんじゃねえか? だって一気に60点取れるっつーことだろ?」


「と、思うだろ? でもよく見てごらん。得点が3倍になるだけあって、枠の面積もかなり小さいからね。そこをわざわざ狙いにいくなら、中央に矢を当てる方が遥かに成功しやすい。周りの様子を窺って見ても、中央を狙っている客の方が圧倒的に多いようだよ」


「あっ……そ、そうか。確かに点が高いからって飛びつくのは危ねーよなぁ」


「ん、表彰の中に3回とも中央に当てることで獲得できる『はっととりっく』……でいいのかな、そういったものもあるようだ。これで20枚は追加でもらえるらしい。難易度も低めのようだから、中央に当てられるようになってきたら狙ってみるのもいいかもしれないよ」


「う、うん。とりあえずやるだけやってみるね」


 みんなの説明のおかげで、大体のルールがわかってきた。最後にフユキからそうアドバイスをもらいながら、私は早速矢を一本手に取って構える。

 ……ヘリオスさんへの挑戦権を得るために。貫いて見せると、私は標的に矢の先端を真っ直ぐ向けた。

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