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幻精鏡界録  作者: 月夜瑠璃
第3章 夢幻の邂逅
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第19話 彼方への探求(2)

 

 やがて授業も終わり、放課後。帰る前に予定通り、私は先生に『滅び』について聞いてみることにする。

 エメラとイアにもやることを説明してついてきてもらうことにした。私一人じゃ、とても昨日のこと全てを説明するなんて無理だ。人数を揃えた方が確実だろう。


 帰りのホームルームが終わった直後に、早速先生を捕まえて3人で昨日のことを手分けして説明する。

 2人が大分興奮した様子で話したものだから、結構ごちゃごちゃになって、先生も頭にハテナマークを浮かべてはいたけれど、大まかな趣旨は伝わったようだ。


「えーと……理解に時間がかかったが要点はわかった。だけどまさかそんなことをしていたとはなぁ。影の世界に行っていたことも驚きだけど」


「え? 先生、影の世界のこと知ってたの?」


「子供の頃に、ひいお祖父さんが話してくれたんだ。けど、あんまりいい思い出じゃないさ。ダイヤモンドミラーには絶対触れてはならん、ってキツく言われてたんだ」


「へえ、そうなのか」


「逆に興味が湧いちゃって、鏡を棒で突っついてたんだよ。それがバレた後は、こっぴどく叱られてさ。その時もらったたんこぶは3日くらい腫れが治らなかった」


「あはは……。先生にもそんな時期があったのね」


 先生が言うには、影の世界のことこそぼんやりと認識していたものの、家族からの教えがあって行くことまではできなかったようだ。

 やっぱり、姉さんが前に言っていた通り、禁止されたことで通ってはいけないっていう風習が根付いてしまったみたいだ。鏡を通ることの禁止が解かれたのは私と姉さんの父親の代の時。先生はまだ若いから、先生が子供の頃にだって禁止令はとっくに解かれていたというのに。


「まあとにかくだ。その『滅び』っていうのはさっぱり知らないんだ」


「そっか〜……」


「すまないな、力になれなくて」


「いえ、気にしないでください。そもそも知っている方が珍しいみたいなので」


「そうか。あと、今の話だと影の世界で友達もできたんだな」


「はい。3……えと、4人かな?」


 オスクに友達って認識はなさそうだけど、一応は入れておいた方がいいよね? そう思って自分を納得させる。

 その流れで私達がルーザ達のことを説明すると、先生も嬉しそうに笑った。


「その子達にも学校に遊びに来て欲しいな。きっと他のみんなも異世界から来た子達には興味あるだろうし、元々ここは人数も多くないからな。もう通っても構わないなら、周りにもそれを伝えていかなくちゃな」


「うんうん、それがいいよね!」


 エメラも先生の言葉に賛同の声を上げる。

 確かに、まだルーザにも中までは案内してなかった。以前に私達が知っている場所はあらかた案内したものの、学校は休日だからと施錠してあったから。忍び込むというのも気が引けるし……先生が許可を出してくれるのなら、今度は中も見せてあげよう。


 そう思いながら私達はとりあえず先生との話はここまでにして、学校を後にした。『滅び』に関しては進展が無かったけれど、落ち込むのはまだ早い。次に向かうつもりの情報源が手元にあるのだからがっかりする必要はないから。

 その次というのは王城……正確には姉さんのこと。城にはこの国で一番の情報量を祠と言ってもいい。そうなれば可能性としては現在では一番高いから、少しでも進展があるかもしれないと期待も高まる。

 ……と、期待して行ったはいいけど、私が浅はかだったのか早速出鼻を挫かれてしまった。


「え、姉さんがいない?」


「は、はい。用事があるとはおっしゃっていだんですが、それから姿をお見かけしてなくて……!」


 そう慌てながら説明してくれたのは、親衛隊の一員である白い男妖精のエルトさん。昔から私の話し相手になってくれていて、自分の意思で私の臣下も受け持ってくれた妖精だ。


「まったくもう……。今日はしっかり連絡してきたのに」


「どういたしましょうか……、陛下の行き先も伺っていないので追いかけようがありませんし」


「あ、大丈夫です。姉さんの行き先なんて予想付きますから」


 どうせまた、こっそりお忍びで出かけたに違いない。姉さんはたまにそうやって、息抜きと称して護衛も付けずに勝手に一人で王都に出かけたりしているんだ。そういうところは昔から全然変わらないな……なんて、私は頭を抱えながらやれやれと肩をすくめる。

 とりあえず、こうしてずっと待ってても姉さんは戻ってこないだろう。私達は姉さんが遠くに行かない今の内に3人で王都を目指し、それらしき妖精を探す。


「こんな広い王都で見つかんのか?」


「うーん、姉さんが行きそうなのは雑貨屋とかだと思うんだけど……」


「ねえ、ルージュ。あの妖精とかじゃない?」


「あっ……!」


 エメラが指差した先に、姉さんと思しき妖精が一人。

 いつも着ているドレス姿ではなく、水色の丈の長いワンピースを着て変装はしているけど、長い付き合いの私には一発でわかる。

 姉さんはこっちの気も知らずに、雑貨屋の前で楽しそうに品物を見ていた。私達は姉さんが店から離れたのを見計らって近づく。


「随分楽しそうですね、ね・ え・さ・ん?」


「えっ⁉︎ ……あ、あらルージュ。き、奇遇ですね、御機嫌よう……」


 姉さんは私達を視界に捉えた途端、表情を強張らせてぎこちない挨拶をする。冷や汗をダラダラと垂らし、目線をそらしてあからさまに動揺しながら。

 そして言い逃れできないことを悟ったのか次の瞬間、背を向けて逃げ出そうとした。


「逃がすか! 『ラヴィッチ』!」


 咄嗟に姉さんに向かって拘束魔法を放って魔力の縄でぐるぐる巻きにした。

 本来は悪者を捕まえるための魔法だけど、かまうもんか。私は姉さんを縛り付けた姉さんをそのまま引きずって城に戻った。


「ちょ、ちょっとルージュ。皆さんの前でこんな(はずかし)めはあんまりじゃないですか⁉︎」


「知らない。自分が悪いんだから、せめて晒し者になって反省しなよ!」


 姉さんがズルズルと引きずられている光景から、周りの妖精達は呆気にとられたり、じろじろと見たりしているけど私は御構い無しに進んだ。


「容赦ねぇなー、あいつ……」


「あれじゃどっちが歳上かわからないね……」


 イアとエメラはそんな会話を交えつつ、苦笑いして周りの目を気にしながら私達の後を追った。

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