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幻精鏡界録  作者: 月夜瑠璃
第15章 暁星秀麗シンデレラ─ Unembellished Princess─
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第199話 12時の鐘の音が鳴り響くまでに(1)

 

 続いて、4種目目・飛行術部門。チーム対抗で空中に浮いているオーブを、障害物を避けつつ集めていき、より多くのオーブを獲得できた学校が勝利となるこの競技。

 さっきの彫像部門で敗北したことからか、プラエステンティアも油断禁物だと危機感を覚えたようで、競技開始直後にオーブを1つゲットして先制点を決めてから、次々とオーブを奪い去っていった。その間、飛行術担当のクラスメート達の足止めも抜かりなくしていて、クラスメート達にオーブを獲得する暇も与えないなど、クラスメート達は目に見えて苦戦する。


 でも、クラスメート達もやられっぱなしでは終わらなかった。その内の一人がなんとか隙をついてオーブを1つゲットしてから、他のメンバーもそれに背中を押されたようでどんどん連続でオーブを獲得していく。

 さっきの彫像部門で勝利していたことも、メンバーの士気を上げることに繋がったのだろう。プラエステンティアに再び得点を譲ることになる時があっても、クラスメートは諦めずに名門の生徒達に負けじと食らいついていき、とうとう同点にまで追い付く。

 あと一つで逆転できる……! と、思ったところでタイムアップ。結果は引き分け。両者共にポイントを獲得しないまま、飛行術の競技は終わりを迎えることとなった。


「惜っしい〜! あとちょっとで勝てたんだけどなぁ……」


「でもエメラ、プラエステンティア相手に同点にまで持ち込んだんだもの。勝てはしなかったけど、充分すごいよ」


「ああ。見応えはあったんだし、こっちもポイントは取れなかったが、奴らに受け渡すこともなかったんだから、成果としては上々だろ」


 ルーザの言う通り、白熱した戦いにみんな盛り上がっていたし、今だって待機場所に戻ってきたメンバーを全員が担当である6人の健闘をたたえている。点差を詰めるまでにはいかなかったけれど、みんなこの結果に満足しているようだ。


「でも、今が1対2なので……最終的に勝利するには、次の護身術で少なくとも4勝しなくてはならないんですよね。ほぼ負けることが許されない厳しい状況には変わりありませんが……」


「要は全勝すりゃあいい話だろ? ルージュなら大丈夫だって!」


「う、うん」


「そう簡単にいくのかなぁ。アレ見てみなって」


 イアが励ましてくれる横で口を挟んできたオスクに言われるまま、オスクが指差した方向……プラエステンティアの生徒の待機場所へと目をやると、生徒全員が輪になって話し合っている光景が目に飛び込んでくる。

 そして、その輪の中心にはベルメールの姿が。そのまま様子を伺ってみると、そのすぐ傍にいる取り巻き達と男子生徒────恐らく、護身術に参加する生徒だろう────に対して、何やらベルメールが指示を出しているようだった。ただ、その様子は遠目から見ていても指示を出すというよりは、逆らうことは許さないと言わんばかりに強く命令しているのがよく分かる。


「あの空気からして、絶対何か企んでるだろうね。大方、どんな手を使ってでも叩き潰せとかって命令してるんじゃないかい?」


「そんなところっしょ。今は勝ち越していても、あっちが負ける可能性だって充分にあるわけだし。それこそ反則スレスレってか、ルール破ってでも勝ちに来ようとするんじゃないの?」


「うん……ベルメールの性格を考えれば、全然不思議なことじゃない。それに、貧乏貴族だって馬鹿にしてる私が出場することを知ったら余計にそうだと思う」


「だ、大丈夫だよね? ルージュが負けたりなんてしないよね?」


「もちろん。最初から負けるつもりなんて無いもの」


 それを聞いて不安がるエメラに私は微笑んで見せる。

 絶対にとは言いきれないけれど、何をされようが打ち勝てるように、今日まで鍛錬を重ねて作戦を練りに練ってきたんだ。いくら名門学校の生徒だからって、今までの命さえも天秤てんびんにかけるような戦いの方がよっぽど怖かった。その成果をぶつけるだけだと思えば、自然と肩の力も抜けてくる。


「あの程度の輩なんぞ、軽く一捻り出来ないようであればヴォイドを滅することなど到底叶わんぞ。くれぐれも僕を失望させてくれるなよ、ルージュ」


「もう、応援くらい素直にしなさいよ。そんなんじゃただでさえ先越されてるっていうのに、告白してもフラれちゃうわよ?」


「う、うるさい! こんな時に何故私情を挟まねばならんのだ!」


「……文句言ってる割に内容については否定しないのね。まあでも、頑張ってねルージュ。直接手助けは出来ないにしても、戦っているのはルージュ一人じゃないってことを忘れないで」


「うん。ありがとうレオン、カーミラさん。心配してくれて」


「フン……」


「オレもレオンに同意だな。……必ず、勝ってこいよ。それで胸を張って自分はクリスタの妹だって宣言して、因縁にケリを付けてこい。さもないとオレが鎌でこの場を地獄絵図にしかねないぜ?」


「き、肝に銘じておきます……」


 最後にルーザのそんな激励なのか脅しなのかよく分からない言葉をもらいながら、私はいよいよ校庭中央へと向かった。最初は参加メンバー全員が集まってルール説明を受けなくてはならないから、出場予定のルーザとオスクにレオン、それと欠員補充として影の世界の学校から助っ人を頼んでいた男妖精と共に整列する。

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