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幻精鏡界録  作者: 月夜瑠璃
第14章 マリオネットは糸切れてーMechanical Dystopiaー
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第184話 並んで、耐えて、乗り越えて(1)

 

「当たれっ!」


 敵が攻撃を仕掛けてくる前に、私は銃から光弾を撃ち出す。今まさに手にした武器を振り下ろそうとしていたアンドロイド達は、迫ってくる光弾を見て咄嗟とっさに防御の構えを取った。

 与えられたダメージは微量だろうけど、これこそが私の狙いだ。銃は近距離戦には向かないけど、相手の射程外から牽制けんせいできるのが強みだ。こうして敵の動きを止められたところに、


「『カタストロフィ』!」


「『カオスレクイエム』!」


 ルーザが鎌から衝撃波を、オスクが斬撃を放ってアンドロイド達をまとめて吹っ飛ばす。機能停止までには至らず、すぐ体勢を立て直されてしまったけれど、決して少なくないダメージを与えられた筈。


「まだまだいくぜ! 『エルフレイム』!」


「『ヘイルザッシュ』!」


「『スカーレットレイ』!」


「『エレクシュトローム』!」


 そこへ間髪入れずにみんなもアンドロイドに向かって魔法を浴びせて、追い討ちをかける。受け身を取る暇も与えられず、それらをモロに食らったアンドロイド達は大きく仰反った。


 ……やっぱりこうしてみんなと一緒に戦えるのは心強い。さっきまでいつもの半分の人数で立ち向かうことを強いられていたために、その有り難みを余計に実感する。

 3人というギリギリの状況とは違って、戦力が多いのは冷静に思考を巡らせる余裕も生まれてくる。狭い空間で、敵もそれなりの数がいる状況ではあるけど、みんなと連携していけば突破できないことはない筈……!


「排除。敵は、殲滅せんめつ


「ぐっ……!」


 けれど、敵もやられっぱなしのままではなかった。散々魔法を浴びせられたことから距離を保つのは不利だと判断したのか、一気に間合いを詰めて斬りかかってくる。なんとか攻撃を受け止めるけれど、その力の強いこと。とんでもない重圧をかけられて、弾き返すこともままならずにジリジリと後退していく。

 やっぱり、敵も本気になっている。さっきまでとは重みが違い過ぎる……!


「どけっ!」


 その時、そんな私を見兼ねてか、ルーザが私に攻撃を浴びせようとしているアンドロイドに向かって鎌を振り下ろす。流石のアンドロイドもそれを正面から受けてはマズいと思ったのか咄嗟に飛び退き、それによって私も重圧から解放される。

 敵に隙ができた、今の内に……!


「はあっ!」


 アンドロイドを引き離すべく、その腹部に蹴りを入れる。元々飛び退こうとしていたアンドロイドは、それによってさらに後ろへと吹き飛ばされた。


「ふう、なんとかしのいだか」


「う、うん。ありがとう、ルーザ」


「このくらいどうってことねえよ。とにかく、ヤツらをイオの元まで辿り着かせないことだけに集中するぞ!」


「分かってる!」


 イオは今、アーチを起動させるために必死になって機械を守っているというセキュリティを破ろうとしてくれている。説明を聞く限りでは一瞬でも気を抜けば修復されてしまうようだし、イオの集中を途切れさせることがないように、敵からの攻撃をイオに届くことを何としてでも阻止しなければならない。

 ……こうしている間にもアンドロイド達は私達を殲滅するべく、真っ直ぐ向かってくる。直接攻撃はもちろんのこと、飛び道具も全て食い止めなければ。そう思いながら銃を構え直すと、一番正面にいたアンドロイドの身体が突如としてカッと輝く。


「えっ────」


「……っ! 『カオス・アポカリプス』!」


 それを見たオスクが、即座に闇の障壁を目の前に生み出す。その次の瞬間、


 ────ドカン!

 ……派手な音を立てて、障壁の向こう側が一瞬にして閃光と爆炎に包まれる。その光景を呆然と眺めていると、さっきまでそこにいた筈のアンドロイドは姿を消していた。あるのは歪な形の金属片と、アンドロイドが手にしていた武器だけ。

 一体、何が起きたというのか。アンドロイドはどこに消えてしまったというのか。床に散らばる金属片がその答えを指し示していることはわかっていても、それを事実と受け入れたくはなかった。だって、こんな……こんなことって。


「ね、ねえ。さっきのアンドロイド、爆発したように見えたんだけど……」


「見間違い、じゃないです。僕もしっかり見てました……はっきり、見えてしまいました。アンドロイドが、自ら爆発して」


 みんなも、後方に下がっていたエメラもしっかり見えていたようだ。私達に突っ込んできたアンドロイドが自身を爆発させたこと────敵を殲滅するのに、自爆という手段を選択したことを。

 オスクの素早い判断のおかげで爆発に巻き込まれることは避けられたけど、今までアンドロイド達はこんな行動は取ったりしなかった。いくら私達という侵入者を排除するためとはいえ、自分を犠牲にする方法なんて使わなかった。

 だけど、今は使うようになった……それは恐らく、製作者であるギデオンの命令によって。


「ざっけんなよ、こんなのあんまりだろ! いくら先に進ませたくないからって、自分を犠牲にしていい筈がねえ‼︎」


「イア……」


「ええ、いくらなんでも酷過ぎるわ……。敵だけど、こんな目にっていいなんて思わない。アンドロイドはそのために造られたんじゃないのに」


 アンドロイドへのあんまりな仕打ちにカーミラさんも、特にイアが憤慨ふんがいしていた。

 私もそれは同じ気持ちだ。日記によれば、アンドロイドだって元々兵器として造られたわけじゃなかった。ギデオンが友人として製作したものの筈だった。それなのに今は命令一つで壊れるまで使い潰され、ちょっとでも破損したり、たった一回失敗したりするだけで即廃棄。挙げ句の果てには私達を止めるために自爆までさせるなんて。こんなの……哀れとか不憫ふびんという言葉ではもう片付けられることではなくなっていた。

 そして、こんなことになってしまった元凶である『滅び』がなによりも許せない。


 ……なんとしてでもギデオンを止めなければならない。これ以上住民を苦しめないためにも、友人だった筈のアンドロイドをこんな目に遭わせないようにするためにも。自らをおとしめるようなことは、もう終わりにさせなければ。


「やってやる……!」


 頰を叩き、気合いを入れ直す。

 ここで膝を付くことなんてしたくない。必ず持ち堪えて、ギデオンの元へと急がないと。

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