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幻精鏡界録  作者: 月夜瑠璃
第14章 マリオネットは糸切れてーMechanical Dystopiaー
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第166話 精霊王の依頼(2)

 

「では、早速始めよう。話し合いを早々に終わらせ、渡航のための準備に時間を多く割くべきだろう」


「そうですね」


 シャドーラル王城でベアトリクスさんとアルヴィスさんの2人と再会した翌日、私達は約束通りルーザの家でこれからの作戦会議を開始しようとしているところだった。

 近未来都市・カルディアは今までと違って大精霊に会うために行くのではない、『滅び』に侵されている可能性を確かめるために向かおうとしている。前にシノノメ公国に行った時も『滅び』のことを解決するためではあったけど、あそこにはカグヤさんやイブキ、モミジさんなどの味方がいた。でも、初めて向かうカルディアにはそんな味方なんて当然いない……基本的にはここにいるみんなで何とかするしかないんだ。


 シュヴェルさんに用意してもらった席に着き、私は今日集まっている顔ぶれを改めて確認する。

 ルーザやオスクといったいつものメンバーはもちろん、レオンとロウェンさんに、ベアトリクスさんとアルヴィスさんもこの家に来ている。私を含めて12人……決して少なくない人数と共に戦えることが分かり、まだ出発すらしていないけれど何とかなるかもしれないという勇気が湧いてくる。


「……よし!」


 深呼吸して気合いを入れ直し、話し合いに集中する。何とかなるかもしれないじゃ駄目、何とかしなくちゃいけないのだから。そのためにも、今ここで入念に作戦を考えて準備を整えなければ。

 まずはカルディアに行くためのルートを決めてしまおうと、影の世界の地図を広げる。


「カルディアは……ここだな。シャドーラルから見て南西ににあるこの小島だ。まあ、近いって距離じゃねえが」


「結構小さめの島にある都市なんですね」


「うむ。国に足る領地としてはギリギリだ。それが国と認められることを遅らせている一つの原因でもある。私は構わぬのだが、国によっては規模が小さいことを理由に国と承認したくないと申す王もいてな」


「今その話は別にいいっしょ。その辺りの事情なんて僕らには知ったことじゃないし」


「そうであるな。失礼した」


「えっと、光の世界でカルディアに当たる場所は……」


 ベアトリクスさんがオスクに詫びる横で、話し合いついでにカルディアと繋がっている場所も確認しておこうと、私は影の世界の地図の隣に光の世界の地図を広げる。二つの地図を見比べながら島を探していき……やがてそれは見つかった。


「……この小島だね。方角と地形も合致してるし、間違いない」


「あら? その島、名前が書かれてないじゃない」


「確か、ここの島って無人島だったっけ?」


「うん。土地も少ないし、土壌の質もあまり良くない上に周囲の海域では魚もあまり獲れないから、どの国も保有したがらないって姉さんに聞いたことがある」


「成る程。名前が付いてないのはそういうことね」


「開発を急ぎここ最近の発展が著しいカルディアと、手付かずの無人島……か。ふん、確かに今まで繋がっていることが分かっている国々の特徴とも符合する」


 カーミラさんがエメラと私の説明に納得する横で、レオンも今までの経験と照らし合わせて頷く。

 今まで見てきた二つの世界で繋がっている国……ミラーアイランド王国とシャドーラル王国。シノノメ公国とアンブラ公国。両方とも気候も文化も真逆だったけれど、地形や住人の人柄など確かに二つの世界が繋がっている証を私達はこの目で見てきた。今回は片方が無人島だから、今までの経験とは差異がある可能性も充分にあるけれど。


「でも、無人島ならカルディアがもし『滅び』の影響を受けていたとしても、カルディアとリンクしている場所の住人の被害を心配する必要もないんじゃないかい?」


「だな。で、肝心のどうやってカルディアに行くかだが……他国との交流は止めてたって話だよな。どうするんだ?」


「あ、ロウェンさん。王家から船を手配していただくことってできないんでしょうか?」


「それはもちろん考えたよ。でも、他国の遣いがカルディアで足取りを消してる事実がある以上、父上もそれは難しいと仰っていた。悔しいけど、シャドーラルもそこまで武力がある国ではないから……父上の名前を出しても、大した圧力にはならないと」


「うう、そうですか……」


「チッ、だがどうすんだ? シャドーラルでそれじゃあ、他の国でも同じ状況だろ」


 ロウェンさんにそう告げられてフリードは肩を落とし、ルーザも頭を抱える。

 でも、ルーザの言う通りだ。他国との交流を絶っている今のカルディアでは、一般妖精が乗る船を受け入れてくれるか怪しい。他国の遣いがカルディアで足取りを消している今、ロウェンさんが手配してくれた船でも安全に都市まで辿り着けるかどうか。最悪、私達まで都市から出られなくなってしまうかもしれない。

 何か他に方法は……。


「陛下、我らの船であれば」


「うむ、そうだな。シャドーラルの漁港から、私とアルヴィスが此処に渡航するに当たって使用した船に乗るのだ。あれには我がフェリアス王家を示す紋章も刻まれている。それに加えて、到着した際には私の名前を出せば問題あるまい」


「つまり、ルジェリア殿らを陛下の遣いとしてカルディアに潜入させるのです。陛下は風の大精霊として遠方でも名高い御方。現在、他国との交流を絶っているカルディアでも、陛下の名前は無視することは困難かと」


「えっ、いいんですか? そんな国の大事な船を……」


「なに、元々は我らが貴女らに依頼したことだ。この程度の助力は惜しまん」


「なら……言葉に甘えます」


 どのみち他の手も思いつかない。でも、アルヴィスさんが提示してくれた作戦が成功する確率が高いのは確か。フェリアス王国の精霊王として、風の大精霊としても名が知れているベアトリクスさんが後ろ盾となってくれれば、問答無用で追い返されることもないだろうし、子供の私達でもカルディアに舐められずに済むかもしれない。ここは素直にベアトリクスさんとアルヴィスさんの好意を受け取っておこう。

 少々手間取ったけど、これでカルディアに行くためのルートも決まった。あとは……私達の装備のことについて、だ。

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