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幻精鏡界録  作者: 月夜瑠璃
第13章 順風満帆スケープゴートーBreak Personaー
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第157話 カジュアル・デイタイム(1)

 

 旧校舎でフランさんと別れた次の日、私はカーミラさんの補助付きでウィリアムに旧校舎の噂の真相を伝えに言った。言葉で説明するだけでは信憑性に欠けるからと、私達と現場に行って自分の目で直接確認してもらうのも一緒に。


 そうして、旧校舎の入り口で私の呼びかけの声によってすぐに姿を現してくれたフランさんにウィリアムは腰を抜かしそうになっていたけれど、おかげで効果はてきめんだったようだ。フランさんが学校の生徒達に危害を加えるつもりが一切ないことをその目で見極めてくれて、真実を突き止めたことにウィリアムは頭を下げて感謝の言葉を述べてくれた。

 もちろん、その後に約束であった署名の手伝いも生徒会が全面協力することも約束してくれて。これでようやく、廃校にさせないための計画が一歩動き出せた。


 そして、その日の放課後。私達はルーザの家にお邪魔して、テーブルを囲んで座りながらとあることに励んでいた。


「……と、そのページの内容はこの方法で解けるんですが、分かりましたか?」


「わりぃ、後半部分がさっぱりだ……。もう一回説明頼んでいいか?」


「ふふ、もちろんですよ。焦ることはありません、イア君のペースで確実に解けるようにしていきましょう」


「お、おう。よっしゃ、さっさと終わらせて本とオサラバしてやら!」


 優しく笑いながら、イアの頼みを快く聞き入れるフリード。イアは頰を叩いて気持ちを切り替え、目の前に置いてある魔法書と向き直る。

 イアは現在、フリードに頼んで勉強している真っ最中。冬休み前のテスト返却時に、フリードといつかやろうと約束していた勉強会。

 勉強は嫌いなイアだけど、前回のテスト結果で先生や両親にこってり絞られたこともあってなんとかしなくてはという気持ちが少なからずあるのだろう。嫌いながらも、今度こそは良い成績を取ろうとやる気を出して頑張っている。


 そして、この勉強会には私も一緒に参加している。私も城にこもっていたことと、プラエステンティアでのいざこざがあって下の学年で習う知識が足りなくて、筆記試験の成績が伸びないのをいい加減なんとかしなくちゃと思ってフリードにお願いしたんだ。

 卒業まであと僅かという今。王族として恥じないように、せめて最後の試験くらいは良い成績を残したいと思って。


「ルージュさんも。何かお困りでしたら遠慮なく言ってくださいね。僕に出来ることなら喜んで協力しますから」


「うん、ありがとう。イアと違って途方もない量だけど……」


「要点だけに絞ればそう多くはないと思いますよ。一つずつ確実に潰していきましょう」


 自信がない私にも、フリードは優しい励ましの言葉をかけてくれた。

 でも前回の試験範囲と、次の試験の予習のみのイアに対して、私の分は疎かにしていた3年分というとてつもないもの。そんな私の前に積み上がっているのは、エメラに借りた3年分の魔法書。もちろん、どれもそこそこに厚いもので……これを三ヶ月以内という短期間で全て片付けるというのは誰が見ても無謀と言うこと間違いなし。頑張るつもりではあるけど、始める前から心が折れそうだ。


「全て覚える必要はないですよ。僕もこれら全てを覚えているかと聞かれると自信ないですし。重要な項目のみだけなら、ルージュさんなら充分間に合います」


「そう、かな」


「お前の元の知識量と記憶力なら問題ないだろ。肩の力抜けよ」


「う、うん。じゃあフリード、お願いします」


「はい。ではまずは……」


 様子を見に来てくれたルーザに鼓舞してもらった後に、フリードは魔法書の最初のページを開いて早速そこの解説を始めてくれた。

 署名のことも大事だけど、勉強も頑張らなくちゃ。今日一日では無理でも、なんとか最後の試験までに間に合わせようと私は背中をしゃんと伸ばす。


「にしてもよぉ、なんで影の世界(こっち)でやるんだ? さみーし、エメラのカフェでもよくね?」


「寒い方が身体に程よくストレスかかって集中出来るんだよ。ルージュはともかく、お前の場合寝落ちするだろ、絶対」


「んなこと言われても、さみーものはさみーんだよ」


 その最中、イアが不意にそんなことをぼやく。

 確かに、みんなで集まるのは大抵私の屋敷かエメラのカフェだ。このルーザの家もたまに集合場所とすることもあるけど、今は冬真っ只中のシャドーラルでは寒すぎるという理由で光の世界に来る方が多い。

 でも、勉強するなら集中出来る環境が良い。常夏といっても暑すぎない温暖な気候で過ごしやすいミラーアイランドはうとうとしやすいという欠点がある。ルーザの言う通り、寒い方が身体に少々負荷が掛かるおかげでここの方が頭が冴えてくるのだけど。


「体力だけはあるんだからこの程度根性で乗り切れよ。暖炉に火は入れたんだし、文句言うな」


「なるべく早くに終わらせられるようなペースにしますよ。イア君に負担をかけないよう僕も努力するので、一緒に頑張りましょう!」


「うへぇ、優しさが天と地の差だぜ……」


「な ん か 言 っ た か?」


「ナンデモゴザイマセン」


 ルーザにジロリと圧力がある眼差しで睨まれ、イアは慌てて目を逸らす。

 まあでも、言い方は少しキツいところがあるけど、ルーザもこうして勉強に最適な環境を整えてくれているのだから優しいんじゃないかなとは思うのだけど。


「シュヴェルにもコーヒーを用意させた。眠気覚ましならこっちの方がいいだろ?」


「はい。ルヴェルザ様の命を受け、腕によりをかけて淹れて参りました。皆様が勉学に励まれる際の息抜きになればと」


「あ、ありがとうございます、シュヴェルさん」


「お礼には及びません。皆様が各々の目標のためにひたむきに努力されるその姿勢、感服致しました。ご不便がありましたらお申し付けください。このシュヴェルツェ、皆様の努力が実を結ばれるまで主人と共に皆様をお支えいたします」


 シュヴェルさんも、急に押しかけてしまったというのに嫌な顔一つせず、私達のサポートをすると言ってくれた。主人であるルーザはもちろん、私達にまで気配りを欠かさないシュヴェルさんの仕事ぶりには頭が下がる。

 シュヴェルさんの好意を無駄にしないためにも頑張らなければ、と改めて決意を固めながら、用意してもらったコーヒーを早速いただこうと目の前に置かれているティーカップを手元に寄せる。ルーザみたいにブラックでいけるわけじゃないから、口元に運ぶ前に砂糖とミルクを少々投入するのも忘れずに。


「……ん、美味しい」


 私は紅茶ばかりであまりコーヒーは飲まないために良し悪しが曖昧なのだけど、シュヴェルさんが淹れたこのコーヒーは極上なのだとすぐに分かる。ルーザがお気に入りというのも納得だ。

 コーヒーのおかげで、頭もすっきりした気がする。今の内に進めてしまおうと、私達は目の前の課題と向き合った。

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