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幻精鏡界録  作者: 月夜瑠璃
第8章 起点に立つ刻-Restart-
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第88話 新たなものか、古きものか(1)

 

 あれから二日。オレらはまた、冬休みまで残り少ない学校へと登校していた。

 夢の世界への決戦までの、束の間の休息。授業を受けて、仲間と他愛ない言葉を交わし、家に帰って勉強やら休憩やらと……そんな変哲のない日常。封印の儀では色々あったが、その時の痕も疲れもすっかり取り払われていた。


 ルージュも大分身体の調子が戻ってきたようで、実技の授業でも問題なく動けているし、身体をほぐすためでもあるのかオレの家の前で剣の素振りもよくするようになった。これなら近いうちに夢の世界に乗り込めそうだ。


「ふいぃ〜、やっと終わったぜ」


 伸びをして、ずっと椅子に座っていたことでこっている身体をほぐすイア。今は今日の授業は終わり、これから放課後という時間。ルージュ、エメラ、イアも大分影の学校に慣れた様子だ。

 それとフリードとドラクを加えて、おまけにオスクも付いて来ている。騒動前の日常に戻り、少しの間だが普通の生活に戻れている実感が湧く。


「やっぱり道具が揃ってるとわかりやすいね! 向こうにもこれくらいあったらな〜」


 なんて、エメラは光の世界の学校と比べると、まだこちらに羨む要素があるらしいが。

 確かに、オンボロな上に道具だって必要最低限。教材も満足に揃ってないし、教師も教えるのに苦労するとぼやいていたのをオレも聞いたことがあった。


「ねえねえ、ルージュ。あの学校、本当に建て直しとかできないのかな? 少なくともせめて道具は増やすとか……」


「姉さんもそうしたいけど、生徒数が揃ってないから難しいって。それに、この状態だと来年には廃校になっちゃうかもしれないっていうし……」


「は、廃校⁉︎」


「そ、それは酷くないかい? せっかく二つの世界の交流の場になっているのに……!」


 廃校になる可能性がある、と聞いてエメラはもちろん、ドラクも即反応。

 それも当然だ。二つの世界の学生が交流を持ち始めた最初の学校、いわば起点だ。それが潰れてしまっては証がなくなってしまう。


「おい、まさかまた貴族が……」


「ううん、今回は貴族は関係なくて」


「じゃあどうして……」


 最も考えられる可能性を挙げたが、ルージュはすぐさま首を横に振る。ならばどういう理由なのかと、フリードが漏らした疑問にルージュは悲しみに顔を歪めながら答えた。


「生徒数だよ。少人数を売りにしてはいるけど、最近ではさらに減少傾向だから、来年も集まらないと畳むしかないって」


「そ、そんなぁ……」


「人数が少ないから運営資金も満足に集められないし、古い学校だからその維持費だけで結構持っていかれるしで、国でも今後の運営が難しいって、姉さんが」


「そう、か」


 ルージュの言葉に納得せざるを得なかった。あんな、お世辞にも綺麗とは言えない学校だ。色々ガタが来ているだろうし、何より見栄えも良くない。

 中に入ってからではないとあの学校の良さはわからないし、外部からの印象は決して良いと言えないものだろう。他にも綺麗で設備が整った学校なんて数えきれない程ある。あの学校を選ぶメリットの方が少ないのかもしれない。


「だったら、なんか宣伝になるようなことを一発ぶちかませばいいだけじゃん。中の印象が良くなれば外も綺麗にできるっしょ?」


「いや、それはそうだが……その機会がないだろ」


 オスクのいうことは最もだが、その機会なんてそうそうやってこない。しかも、そもそも維持費すら確保できないのに宣伝用の資金を用意するなんて夢のまた夢だ。ビラを作るのだってそれなりにかかるし、実力を発表しようにもその場を用意するのもオレらのような生徒じゃ無理な話だ。

 全員、どうしたものかとうーん……と唸ってしまった。


「ロウェンに影の世界でも宣伝してもらう、って手もあるかもしれねえけどよ」


「でもさ、今は忙しいんでしょ? 流石に悪いよ」


 そう。今はロウェンも年の変わり目ということもあって、王族の執務が色々回ってきているらしい。

 だから今後はオレらに着いて行くのも難しくなるそうで。そんな中でさらに仕事を増やすのは、流石に引け目を感じるというものだ。


「廃校の件も気になるますが、今はどうにもできそうにないですし……こちらの元々の目的を果たしませんか?」


「ん、そうだな」


 フリードにそう言われ、考えごとにふけっていたオレらは我にかえる。今日はルージュ達も学校の内装を大分覚えたところだし、学校の課外活動……まあ部活なるものをルージュ達に紹介する予定があった。

 当然といったら失礼だろうが、ルージュ達の学校には部活すらも存在してなかった。最高学年であるオレらにこれから入部というのは無理だが、教師達の許可も取って見学や体験をしてもらうつもりだったんだ。

 それに、部活を見学するとなると学校の様々な場所を回れる。この前案内しそびれた施設も見せられることになるし、一石二鳥だ。


「部活か〜、やったことないから楽しみー!」


「おう。なんか良いのがあるといいな」


 なんて、エメラとイアは早速胸を躍らせている。ルージュも二人程ではないが、表情がほころんで楽しそうにしている。オレらは早速、教室を出て活動している生徒達の様子を見に行くことに。

 ……もう一つ、オレにはオスクがトラブルを起こさないための見張り役というオマケ付きで。

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