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幻精鏡界録  作者: 月夜瑠璃
第6章 和と東雲の前奏曲
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第61話 千年越しの新難題(2)


「────『御石の鉢』」


 ルーザの攻撃が当たる直前、カグヤさんは衝撃波に向かって手をかざす。

 すると……鋼のような障壁がカグヤさんの周りを覆い、衝撃波がカグヤさんに被弾する前に散ってしまった。


「弾かれた……⁉︎」


「玉藻の時になさった連携ですね。良いとは思いますが、わたくしには通じません」


 その戦法をまるで知っていたというようなカグヤさんの口ぶりと、攻撃を受け流されてしまったことに驚く。

 その場にはいなかった、カグヤさんが見ていない戦法の筈なのに。なのにどうして見切られてしまっているの……⁉︎


「チッ、あの化け狐とやり合った時にあんたの声が聞こえてきたのを忘れてた……」


 ルーザの言葉に私はハッとする。

 そうか……! 私達が気づいていなかっただけで、あの時玉藻前を通じて、カグヤさんはあの戦いを見ていたんだ。だから玉藻前が必要以上に暴れないよう、止めることも出来た……。

 だからその時に玉藻前に仕掛けた戦法はカグヤさんには筒抜けなんだ。


「ふーん、これを見越してやったわけ? あんたも随分な性格じゃん」


「滅相もありません。確かに、卑怯と思える行為でしょう。ですが、貴方方の戦術はこれだけではない筈です」


 ……要するに、それ以外の戦法で突破してみせろということか。

 カグヤさんはあらゆる手段を使え、と言った。様々な手数を出し切ってこそ、この戦いの意味があるということだろう。


「上等じゃねえか。意地でもその月から引き剥がしてやる!」


「その意気です。さあ、貴方方の力をもっと見せてください」


 カグヤさんは冷静だ。長く生きているから自分の感情を上手くコントロール出来る方法を、充分すぎるくらいによく知っている。これだと、かなりの意表を突かないかぎり動揺させることは難しい。

 動揺したり、怒ったりすると集中が乱れて注意力が散漫になるけれど……カグヤさんに対しては期待出来なさそうだ。ルーザの言う通り力押しか、手数で攻める他ないだろう。


 カグヤさんから挑発されたルーザはいうが早いか蒼く澄んだオーブを頭上に放り投げる。

 するとオーブが光を放ち……次の瞬間には水を纏った白い怪鳥、オーブランが羽音と共にこの空間に現れた。


「癒しの名を冠する鳥ですか。その者をどう使うのですか?」


「さあな。その場で突っ立って見ていろ!」


 ルーザはそういうとオーブランの背に飛び乗る。そのままカグヤさんの周囲をぐるぐると飛び回る。

 オーブランが纏う水が羽ばたく度に飛び散って、カグヤさんを水の檻で閉じ込めるように周囲を覆っていく。……その水が星と月の光を反射して、キラキラと輝きながら形成していくその光景。綺麗なのは確かだけど、目がチカチカしそうだ。

 カグヤさんも何をするのか、とルーザをまだ追おうとしているけれどそれは叶わない。オーブランのスピードはかなりのもので、瞬きをすればすぐにでも視界から外れてしまう。


「ここだっ……!」


 水が限界まで撒き散らされた時、ルーザはオーブランから飛び降りる。そして、カグヤさんに斬撃を喰らわせようと鎌を振り上げて真正面から斬りかかる!


「無駄です!」


 でもその攻撃は見切られていた。斬りかかろうとするルーザの攻撃を、カグヤさんは杖で叩きつけることによって相殺されてしまった。


 ────が。杖がルーザに当たった瞬間、ルーザの像がぐにゃりと歪み、雫となって掻き消されてしまった。カグヤさんが叩きつけたのは大きな水の塊だった。つまりそのルーザは虚像……。


「なっ……これは⁉︎」


「どこ見てんだ? オレはこっちだ!」


 その水の塊があった場所の後ろから、ルーザは水を潜り抜けて鎌を大きく振り下ろす。ザシュッ! と鋭い音を響かせ、ルーザの斬撃が見事にカグヤさんを捉えていた。


「くっ……!」


 斬撃をもろに喰らったカグヤさんは仰け反り、満月の前から距離を離される。

 初めてカグヤさんに攻撃が通った。体勢を崩した今がチャンス、一気に畳みかけよう!


「『ルミナスレイ』!」


「『カオス・アポカリプス』!」


 私とオスクで体勢を戻す時間を与えない内に魔法を撃ち込む。連続で攻撃を受けたカグヤさんも、流石に少し動揺の色を表情に見せた。


「……二段構えとは考えましたね。流石に対応しきれませんでした」


「あんたに正面からは通じそうにないからな。ゼロ距離じゃ、防御も追いつかないだろ?」


「流石です。連携も見事でした」


 カグヤさんはそう言っている間に体勢を戻した。そして、また満月の浮かぶところに戻ろうとする。


「おっと、休憩は取らせないからな!」


「……っ!」


 元の場所に戻ろうとするカグヤさんの道は、突如振り下ろされた大きな刃によって塞がれる。

 その斬撃を放った相手……オスクは、得意げにニヤッと挑発的な笑みをカグヤさんに向けていた。


「お前の力の源があの月ってことはわかってるから。戻られる前に片付けないとな?」


「……流石、鋭いですね。貴方は昔から粗を探す隙もない……相変わらず、歳月の差を思わせません」


「こっちだって五百は超えてるんだ。千年くらいでそう変わる?」


「さあ、どうでしょう。それはここで証明してください!」


 カグヤさんは再び魔法陣を展開し、オスクに向かって容赦無く光弾を放つ。オスクはそれを物ともせずに確実にかわしていき、大剣を振るって攻撃していった。

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