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親孝行

作者: よしぼう

死の直面、動揺、見知らぬ体験…初めての経験に、親への想いと感情の動き。ほんとの親孝行って何なのか。

つい先日、親父が亡くなりました。76歳でした。昔ではハイカラの駆け落ちをしておふくろと一緒ななった親父…。

ひとり息子の俺は、人並みに可愛いがれ何不自由なく育てられました。

喪主を初めて経験し、改めて人の死に対する厳かなものを垣間見た気がします。

不思議と、涙は出て来ず…悲しみとか寂しさとかじゃなく、なにかしらポカンと穴が空いた様な。

病室の親父を見舞いに行く度に、笑顔で迎えてくれる事に、その時ばかりは死に対する恐怖からか、涙がこみ上げてきました。

末期癌の親父に、かける言葉を苦心惨憺でたわいのない事を話す俺がいつもいました。

生き延びる力と

体を蝕む力とが

日に日に戦い続けてた半年間…。

手を握り締めて最後を迎えたあの日。ふぅっと息を吐いて永眠に…。笑顔にも見える安らかな顔に、お疲れ様とひとこと。

わかってはいるけど、いざその時が来ると、どうしようもない脱力感におそわれてしまう。

さぁ、これからが最後の親孝行…そう思いながら、顔の化粧や服の着替え…まだ温かい。

我が家に帰って、好きだった缶コーヒーを2本買って乾杯。

今にも話し出しそうな表情に、一瞬見つめ続けてしまう。

あんなに喋りにくかった親父、ケンカばかりで、近くにいるのが嫌だった親父…。

病室の笑顔の親父が思い出させる。恐い親父じゃなく、優しい親父。どこか威厳の無くなった親父。それが妙に寂しかったのを覚えてる。

今なら何でも聞けるのに…今なら何でも言うのに。

庭にある趣味の盆栽…後は誰が面倒見るのか。言わずもがな、俺も盆栽が好きである。

幼い頃から、親父の背中を見て育ったせいか、親父のやる事に興味深々だった。

今想えば、工業高校に進学したのも…親父の工場に見学をしに行った事が要因だった気がする。

火葬場での、呆気ない焼き跡の姿…血も涙もない程にきれいに…。

お骨を箸で骨壺に入れる。親父の形見というより機械的なもの。

魂はいずこへ…そんな想いも消されてしまった。

遺影が飾られたこの部屋に、今日も缶コーヒー2本用意して…今からまたあの日の事をひとつひとつ話してく。

俺が生きてる間は、こうして何度でも話をしよう。

俺の親孝行は…ずっとずっと生き続けるから。

いつかは、自分の親も永眠する時が来ます。わかってはいても、いざ直面するとなると寂しいものです。出来事のそのままを執筆しただけですが、なにかの役に立てればと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 私も同じでした寂しいものです。
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