試飲
少し、少な目になってしまいました
朝もまだ早い時間。公人たちが止まっている宿の廊下に扉をノックする音が響く。
コンコン。
「咲本さん。起きてる?」
何故、公人が朝早くから清華を訪ねているかだが、無論、昨日作った回復薬を試飲してもらう約束をしていたからだ。一応、公人が飲んで大丈夫だったのでやはり清華の試飲することについて断ろうかと考えたが、やはり公人は自分以外にも本当に効くのか、データが欲しかった。だからこうして朝早く清華の部屋を訪ねたわけだが、しばらくしても返事は返って来なかった。
咲本さんまだ寝てるのかな?
出直そうと思い自分の部屋に帰ろうとした所で斜め後ろにある階段から清華が上がって来た。
「あれ、橘くん?こんな朝早くにどうしたの?」
「あ、咲本さん。実は回復薬作ってみたんだけど、試飲頼めるかな?」
「え、できたの!?橘くんおめでとう!」
「うん。ありがとう咲本さん。」
「それでそれで!どこにあるの!」
「僕の部屋に置いてあるからこれから部屋に来てくれないかな?都合が悪かったらまた後でもいいけど」
「うん!分かった!今からでも大丈夫だよ!」
公人は、なら行こうか、と言い自分の部屋に清華を連れ帰る形で戻っていった。
「これなんだけど。」
そう言って公人は例の昨日作った回復薬が入った小瓶を清華の目の前に出した。
清華は差し出された小瓶を受け取り、まじまじと中の溶液を見る。
「見た目は栄養ドリンクみたいな色してるね。」
「うん。でも味は栄養ドリンクっていうよりかはフルーツジュースに近かったよ」
「え、橘くんもう飲んじゃったの!?」
「え、昨日のうちにね。」
「なんで一人で飲んじゃうのー」
一人で飲んでしまったことが気に入らなかったのか清華は頬を膨らませてプンすかと怒る。
「咲本さんだって、先に誰かが飲んでた方が安心するでしょ?」
「そ、それはそうだけど・・・私は橘くんと一緒に飲みたかったのに」
「え、今なんて?」
「な、なんでもない!」
清華はフンっと横を向いて拗ねてしまう。
うぅ、何故だ・・・。
「な、なんかよくわからないけど謝るよ。ごめん」
「・・・なら、お願い一つ聞いて」
「う、うん僕の出来る範囲内なら」
清華は公人の方に向き直り少し頬を赤くしながら
「次からは私と一緒に飲んで」
「え?」
「だ、だから次に試飲する機会とかがあったら私と一緒にちゃんと飲むのー!」
「そんなことでいいの?」
「大事なことだよ!」
「そ、そうなの?わ、わかったよなら次からはそうするよ」
そういうことでこの場が落ち着いたので話の話題が小瓶に戻る。
「じゃ、じゃあ飲んでみるね」
「う、うん」
小瓶の先にゆっくりと口を近づける。そして少し液体を口に含んだところで清華の顔がパァっと明るくなる。
「凄いよこれ!美味しい!」
絶賛し、残りの液体も一気に飲み干す。
「は~、美味しかった~。それになんだか体が軽くなった感じがするわ!」
「体調に異常はない?」
「うん!むしろ寝起きの気だるさも消えてスッキリしたくらい!これなら皆も絶賛すると思うよ!」
「それは良かった」
それを聞いた公人は肩を下ろす。
咲本さんにも効いたとするとちゃんと女性にも効くってことだよね。これなら使い物になりそうだな。
「咲本さん協力してくれてありがとう。朝早くからごめんね」
「ううん、大丈夫だよ。あ、でもそろそろ皆が起き出す時間じゃない?」
「え?あ、ホントだ結構時間たってる」
「なら、私は着替えとかあるから一度部屋に帰るね。また食堂で~。」
「うん、わかったよ」
清華は片手を振りながら公人の部屋から出て行った。
清華が部屋から出ていくのを見送ったところで公人も着替えなどの準備を始めることにした。
「よし、僕も準備するとするか。」