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ゲームオタクの異世界最弱譚  作者: メヌエット
2/13

最弱のクラスメイト

 光が消え、視界が元の色を取り戻した。

 まず、全員がいるのを確認してから周りを見渡すと、草原が広がっていて、少し離れたところに、街も見えた。

 どうやら僕たちのチームのスタート地点は街の郊外らしい。

「良かった。町が見えるってことは、いきなり飢え死にしたり野宿ってことはなさそうだ。」

「でも、橘くん。私たちこの世界のお金持ってないよ?」

「あ。ホントだ。」

 そうだった、ここは異世界だった。僕たちが持ってる通貨は使えないな・・・。

 5人でこの問題について考えようとした時、

「ボスっ。」

 僕たちの目の前に布の袋が落ちてきた。

 ・・・。なんだあの袋・・・。めちゃくちゃ罠臭いな・・・。

 紙を配布するみたいなことを言っていたが、明らかに紙が入っている感じではない。

「なんだこれ?」

 そう言いながら、岩本が呑気に袋の中身を確かめようとする。

「い、岩本くんうかつにさわっちゃ・・・。」

「うわぁぁ!」

「岩本くん!」

「大丈夫か岩本!」

 僕と神代くんは慌てて岩本くんに駆け寄った。

 だが、岩本くんには特に外傷もなく無事だった。

「なんだよ、岩本。無事じゃないか。」

「わ、悪い。袋を開けたらお金っぽいものが入ってたから、つい驚いちまってな。」

「え!お金が入ってたの!?」

「あぁ。ほら、お前らも見て見ろよ。」

 そう言って、岩本くんは僕と神代くんに袋の中身を見せてきた。

「おー、そんなに多くはないけどホントに入ってるな。」

「でも、あるだけありがたいよ。あ、これが神様の言ってた餞別なのかな?」

 そんな僕らのやり取りを少し離れたところで見ていた、咲本さんと鈴谷さんも、

「ねぇ!私たちにも見せて見せて!」

 っと言いながら、小走りでこちらに近づいいてきた。

 鈴谷さんが中身を見て、「これなら少しはもちそうだな」っと感想を漏らし、横で咲本さんが「そうだね。」っと相槌をうっていると、

「ボスっ。」

 また、僕らの横に布の袋が落ちてきた。

 みんなの視線が袋に集まる。

 とりあえず、袋を回収して袋の上から手触りで中を確かめる。どうやら、中は紙らしい。

 これが、あいつが言っていた紙なのだと思い、袋の口を開ける。

 すると、中には、羊皮紙が5枚と手紙が入っていた。5枚という数字から1人1枚ずつと解釈し、全員に紙を配る。

 そして、残った手紙だが、これは神代くんが開封して中身を確かめた。

 中にはこう書かれた便箋が1枚入っているだけだった。


 この羊皮紙はステータスペーパー。

 キーワード、「オープン」で起動し、「クローズ」で終了。


 書かれていたのはたったこの2行だけだった。

 そうかこの紙はステータスペーパーというのか。でもキーワードってどういうことなんだろ。

「取り合えず、この紙の名前はわかったけど、このキーワードってのは何だ?」

「紙に向かって言えばいいんじゃないのかな?あの神様も紙に聞けってたしか言ってたと思うし。」

「なるほど、清華の言い分も一理あるな。」

「神代は、咲本さんの言い分には基本的に賛成なんだろ?」

「い、岩本お前なに言ってんだ!」

 岩本が神代に茶々を入れたが、当の咲本は、ん?みたいな態度で現場のことがあまり理解できていないようだ。

 咲本さん、僕に話しかけてくる時の周りの空気に気づかないくらいだし、やっぱり鈍感なんだな・・・。

「2人とも落ち着け、そんなしょうもないことは後でしろ。今はこの紙の方が大事だ。」

 2人とも鈴谷に叱られ、とても申し訳なさそうな顔をしながらじゃれるのをやめた。

 なんだか今、このチームのリーダーが垣間見えた気が・・・。

「少し話が脱線したけど、とりあえずやってみようよ。」

「それもそうだな。」

 という事で、各自で自分のステータスを確認することになった。

 「「「「「オープン!」」」」」

 全員がそう言った瞬間に何も書いてなかったはずの羊皮紙に文字が浮かび始めた。

 文字が完全に浮かびあがった羊皮紙にはそれぞれ次のように書かれていた。


-----------------------


 名前 神代優斗


 天職 勇者


 レベル 1


 STR 200


 DEX 200


 VIT 200


 INT 200


 AGI 200


 MND 200


 スキル

 ・全属性耐性 ・物理耐性 ・状態異常耐性 ・属性攻撃強化 ・縮地 ・剣術 ・剛腕 ・金剛体 ・魔力変換 ・詠唱短縮 ・体術 ・言語理解


-----------------------


 名前 岩本竜司


 天職 戦士


 レベル 1


 STR 300


 DEX 50


 VIT 250


 INT 20


 AGI 100


 MND 20

 

 スキル

 ・剛腕 ・金剛体 ・物理耐性 ・体術 ・剣術 ・言語理解


-----------------------


 名前 鈴谷凛


 天職 剣客


 レベル 1


 STR 100


 DEX 250


 VIT 150


 INT 50


 AGI 250


 MND 50


 スキル

 ・物理耐性 ・剣術 ・武芸百般 ・縮地 ・体術 ・言語理解


-----------------------


 名前 咲本清華


 天職 賢者


 レベル 1

 

 STR 20


 DEX 100


 VIT 50


 INT 250


 AGI 50


 MND 300


 スキル

 ・全属性耐性 ・魔力変換 ・詠唱短縮 ・魔力吸収 ・魔法強化 ・言語理解


-----------------------



・・・ん?

「ゆ、勇者ってあの勇者か。」

「お~、神代は無難に勇者か。」

「まぁ、確かに勇者っぽいといえばそうなのかもしれんな。」

「えー、神代くんってそんなに勇者っぽい?」

・・・・・・ん?

「清華の言う通りだぞ、なんで俺が勇者なんだよ・・・。」

「まあ、そういうなよ。俺だって戦士なんて不本意なんだぜ。」

「「「いや、それはない(よ)(な)」

・・・・・・・・・ん?

「そういえば、凛ちゃんもぴったりの天職だね。」

「ん?まぁ、確かにな。実家も道場を営んでるしな。咲本は・・・。いや、何でもない・・・。」

「凛ちゃん!?今、絶対似合わないって思ったでしょ!」

「い、いやそんなことないぞ?」

「清華はなんだか魔法を使いそうなイメージだから賢者なんじゃないのか?」

「あー、なるほどな。」

「なるほど・・・。一理あるな。」

「うぅ・・・。皆が私をいじめる・・・。そういえば、橘くんは?」

「た、大したことなかったよ。」

 僕はステータスペーパーを後ろに隠し、出来の悪い愛想笑いを作った。

「橘くん・・・。そんなに露骨に嫌がらなくても・・・。」

「そうだぞ、橘。恥ずかしい気持ちもあるかもしれんが、これは同じチームとして知っておかないといけないことだ。さあ!早く見せるんだ!」

「そうだぞ、俺の勇者より恥ずかしい天職なんて早々ないんだから、早く出すんだ。」

「神代の言う通りだ!俺だってこんなに似合わない天職で恥ずかしい思いをしたんだぞ!」

「「「いや、だからそれはない(ぞ)(って)」」」

 岩本が今日2度目の猛反論をくらって、「何故だ・・・。」っと呟き、地面にうずくまる。

「まぁ、岩本は置いとくとして・・・。何故、橘はそこまで嫌がるのだ?」

「べ、別に理由はないよ。ただ、ちょっとね・・・。」

「なら、問題ないだろう。さぁ、早く見せるのだ。」

「うぅ・・・。わ、わかったよ・・・。」

 渋々、公人は凛にステータスペーパーを渡す。

「どれどれ・・・ん?」

「どうしたの、凛ちゃん?」

「い、いや何でもない。どうやら気付かないうちに疲労が溜まっていたようだ・・・。少し、幻覚が見えてな。・・・。」

「えぇ!?大丈夫!?」

「多分、鈴谷さんは大丈夫だと思うよ・・・。」

「え、何で分かるの?」

「おかしいのは鈴谷さんじゃなくて、僕のステータスペーパーだからだよ・・・。」

「た、橘・・・。あれは本当なのか・・・。」

「う、うん。」

 そう答えると、鈴谷さんは、

「い、色々な意味で、すまん橘!」

っと言って、土下座をしてきた。

「い、いいよ!気にしてないから!」

 僕は頭を下げてきた鈴谷さんに手を振りながら、頭を上げて欲しいと全力でお願いする。

「なになに!?橘くんのステータスペーパーに一体なにがあったの!?凛ちゃんだけ知ってるなんてずるいよ!」

「そうだぞ、俺たちにも教えろよ。」

「だが、しかしこれは・・・。」

 凛はそう言って公人の方に目線を向けてくる。どうやら公人の判断が欲しいらしい。

「鈴谷さん、もういいよ・・・皆に見せて。」

「い、いいのか?」

 僕の答えを聞いて、もう一度、確認をするかのように聞いてきた。

「うん、いいよ。このままじゃ埒があかないし。」

 凛はそれを聞いてようやく手につかんだままだった、公人のステータスペーパーを皆に見せた。

「もう!なんでそんなにかく・す・・かな・・・ん?」

「まったくだ、一体なににそんなに動揺して・・るん・・・ん?」

 優斗と清華の目が点になる。そして、もう一呼吸おいてからもう一度しっかりと見る。

「「・・・は?」」

「あ、俺にも見せてくれよ!」

 地面にうずくまっていた竜司もステータスペーパーを見ようと、優斗の右側から覗き込むように見る。

「・・・なんだこのステータス?」

 恐らく、皆が同じことを思ったのだろう。4人とも見てはいけないものを見てしまったかのような、気まずい空気に包まれる。

 その僕のステータスペーパーだが、これだ。


-----------------------


 名前 橘公人


 天職 錬金術師


 レベル 1


 STR 20


 DEX 20


 VIT 20


 INT 20


 AGI 20


 MND 20


 スキル

 ・錬金術 ・言語理解


-----------------------


 そう、僕はさっきからみんなのステータスペーパーを見て、凄すぎじゃね?っとか思っていたわけではない。むしろ皆と僕のを見比べて、僕のカスすぎじゃね?っと思っていたのだ。

「ま、まぁ、所詮ステータスだよ!レベルが上がれば上がるんだから、気にしないでよ!ただ、初期値が低いだけで大器晩成なのかもしれないし!」

「そ、そうだな!橘の言う通りだ!」

「そうだよ!きっと後でグングン伸びてくるよ!」

「清華の言う通りだ!」

「す、スキルも錬金術持ってるのは橘だけだしな!」

 この空気をなんとかしようと公人は無理に明るく振舞うが・・・。

 こんなステータスと天職で僕は生き残っていけるのかな・・・。

 公人はそんなことを思うばかりだった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

少し、前回の終わり部分を弄ったので、あれ?っと思うところがあるかもしれません・・・。軽く読み直して頂けると幸いです。

誤字、脱字があれば教えてもらえると嬉しいです!

次回の投稿は日曜日の18時を予定しています。

これからもよろしくお願いします。

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